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[ルポ]「先生、セックスって何ですか?」未来の教師性教育フェスティバル

登録:2019-11-09 05:20 修正:2019-11-09 07:39
教師団体「アウトボックス」が開いた性教育フェスティバル「性教育、全体利用可」
小学生に「敏感さ」教える小学校教師の団体「アウトボックス」が、ソウル教育大学で同大の学生に性教育を行っている//ハンギョレ新聞社

 「先生、セックスってどうやるんですか? 服着てするんですか? 脱いでするんですか?」「う~ん…。着てすることもあるし、着ないですることもあるよ」。「着たままでどうやるの?」「着ないでするのと同じだよ。」「着ないでどうやるの?」「うーん…。そのうち分かるよ」。

慌てず、質問の意図把握から

 「(質問が)リアルすぎる」。ソウル教育大学初等教育科の学生ファン・ジウォンさん(21)は「答えに困る」質問の集中砲火を浴び、ため息をつくように言った。当たり障りのない答えするやいなや、次の質問。「先生、性欲は男の方が強いんじゃないんですか?」「夢精したら背が伸びないんですか?」 未来の先生たちは当惑した表情を浮かべている。

 11月1日午後、ソウル瑞草区(ソチョグ)にあるソウル教育大学のサヒャン広場で「性教育、全体利用可」と題する性教育フェスティバルが開かれた。小学校の教師らが未来の教師である教育大生を対象に行った行事だ。開いたのは、子どもたちの性別の固定観念を破りジェンダー感受性を育てようという小学校教師らが集う「初等ジェンダー教育研究会アウトボックス」だ。2016年、京畿道高陽市(コヤンシ)の小学校教師5人が読書会として始めたこの会は、2017年に小学生たちのジェンダー感受性を考える「アウトボックス」に発展した。現在はソウルや京畿道の小学校に勤務する「2~30代の教師」15人が参加している。この日アウトボックスの教師たちは3年間にわたって考えてきたこととノウハウを未来の教師、現職教師、性教育講師などと分かち合った。

 未来の教師たちを困らせた質問は、実際に小学校の性教育の時間に子どもたちに聞かれた内容だ。「セックスって何ですか?」「突然授業中に勃起しちゃったらどうする?」「包茎手術って絶対しなきゃいけないんですか?」「私たちもセックスしていいんですか?」などの。未来の教師たちを戸惑わせる生徒役を演じたソン・ミンジュ教諭が言った。「まず質問の意図を把握しよう。例えば『セックスって何ですか』という質問の意図は実に様々。弟や妹が欲しいんだけど、友達から『妹がほしいなら、ママとパパがセックスしなくちゃ』と言われたから知りたいのかもしれないし、先生をからかいたくて聞いてるのかもしれない。あるいは、どこかで『SEX』という言葉を聞いてきて質問してるのかも」。隣にいたA先生が付け加える。「客観的でリアルな答えをすれば、からかって聞いてきたのだとしても真剣に受け止めてくれると思う」。

 アウトボックスの教師たちは質問に対する「正解はない」という。ただし、自分たちが学習し、考え抜いてきた答えを共有してきた。例えば「セックスって何ですか?」という質問には「『セックス』とは、韓国語で性的関係のことです。愛する人同士が交感する行動」と答えたり、「どうしてそんなにカリカリしてるんですか? 生理ですか?」という言葉には、「生理だからカリカリしてるのかというのは、相手の気持ちを尊重していない言い方です。『カリカリするようなことでもないのに、どうしてカリカリするのか』ということでしょう。友達がイライラして嫌なら『イライラしないでゆっくり言ってくれよ』って言ってみましょう」と答えるといった具合だ。

 「困る」質問をされたソウル教育大の学生ホ・ドヨンさん(24)は「学生たちにされる可能性のある質問だと思ったら、当惑した。(実際の現場でされる質問は)公教育で学んだこととは違っていた」と述べた。初等教育科のクム・ソミンさん(21)も「教育大学の教科課程に性教育の授業はない。小学生を教えるので、教育大学の学生にも性教育が必要だと思う」と語った。

関係と境界の尊重を含む教育

 ソウル教育大学で「性教育フェスティバル」が開かれたのは意味深長だ。今年初めソウル教育大学では、卒業生や現役学生が在学時に女子新入生の容姿を品定めしたいわゆる「資料集」を共有し、グループチャットルームで女子学生に対するセクハラをした事実が公開され、ソウル市教育庁が現職教師や任用予定者14人を懲戒処分にしている。教育大生らのセクハラ問題はソウル教育大学だけで起きたものではなかった。今年だけでも京仁教育大学、清州教育大学、大邱教育大学などでも、ソウル教育大学と類似する問題が起きている。しかし正義党のヨ・ヨングク議員室によると、全国の10教育大学と韓国教員大学を合わせた計11の教育大学のうち、セクハラ・性暴力予防教育を単独科目として開設しているのは春川教育大学が唯一だった。

 この行事を企画したキム・スジン教諭(29)は企画意図を次のように述べた。「グループチャット事件があったからソウル教育大学で行事を企画したわけではないが、教育大学の学生たちに性教育をする必要があると考え、当初は小学生とその親を対象に教育プログラムを企画していたのだが、対象を変えた。教師である私たちも学校で性平等教育や性教育を受けられず、考える暇もなかったからだ」。

 アウトボックスが性教育を行う際に重点を置くのは「包括的な性教育」だ。生殖器の説明に限定せず、性別による関係や「境界の尊重」(他人の境界をむやみに超えないこと)までの広い範囲を“敏感に”教える。現場で会う子供たちには、学校や家庭で接する大人たちの何気ない固定観念がそのまま刷り込まれる。「体育の時間に女子にサッカーをさせたら、初めだという子が多かった。これまで男子はサッカー、女子はドッヂボールというように分けてきたのだ」(キム教諭)。

まず学校で不快だと言う

 小学校で頻繁に起きるセクハラもアウトボックスの教師たちの悩みの種だ。ソウルのある小学校に勤務するシウォン教諭(25)は、担任するクラスの子供の言葉のせいで非常に悩んでいる。「ある生徒が教科の先生の事務室に行って『僕、勃起しちゃったんですけど、どうすればいいですか?』と言った。女性の先生をからかおうとしたのだ。新しい単語を知っているという英雄心理から、子供たちは性的な冗談を言ったりする。子どもたちが性的好奇心を持つのは自然なことだが、男性だからといって性的冗談を言っていいわけではなく、相手に性的羞恥心を与えたら、それはセクハラだと教えている。女子生徒には『拒絶』と 『不快感』を表現するよう指導している」。

 アウトボックスは学校現場での性平等教育にも「敏感」だ。キム教諭は無意識にしていた「男女別整列」を廃止した。男女に分けるだけでも、子どもたちがグループを作り、お互いを別の集団と認識し、固定観念が大きくなるという考えからだった。性別の固定観念は教師たちにもあったということを悟った。連絡帳にサインしてもらってこいという時、「お母さんにもらってこい」と言うとか、保護者の連絡先をもらうと、電話帳に「○○のお母さん」と保存するなどだ。子育ては母親の役割という性別の固定観念だったのだ。

 「そこまで敏感になるべきなのか」という反応もあるが、3年間活動する間に応援が増えた。他の地域で勤務する教師がアウトボックスの運営するブログにメッセージで参加意思を表明してきたりもする。「差別があることを認識するのは難しいが、もう気づいたのだから、子どもたちには差別経験をなるべくさせないようにすべきではないか」。

文・写真=チャン・スギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/916335.html韓国語原文入力:2019-11-08 16:32
訳D.K

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