政府は東海(トンヘ)の北方限界線(NLL)近隣で海軍に捕えられた後、北で同僚の船員16人を殺害して逃亡したと自白した20代の北朝鮮の漁師2人を追放したと、7日発表した。北朝鮮の人を追放したという政府の公式発表は今回が初めて。
イ・サンミン統一部報道官は、「政府は2日、東海の北方限界線近隣の海上で捕えた北朝鮮住民2人を、今日(7日)午後3時10分に板門店を通じて北朝鮮に追放した」と発表した。
イ・サンミン報道官は、「(関係機関の)合同調査実施の結果、彼らは20代男性であり、東海上で操業中のイカ釣り船で同僚の船員16人を殺害して逃走したことが把握された」と明らかにした。イ報道官は、「政府は、彼らが殺人など重大な非政治的犯罪で保護対象ではなく、韓国社会に編入した場合に国民の生命と安全を脅かし、凶悪犯罪者として国際法上難民と認めることができないと判断し、政府部署の協議の結果により追放を決めた」と語った。統一部当局者は、「北朝鮮離脱住民法は、国際刑事犯罪や殺人など重犯罪者などは保護対象と認めない」と説明した。
統一部当局者は、「政府は5日、開城南北共同連絡事務所を通じて北に彼らを送還するという意思を伝え、北は6日、引き受けの意向を伝えてきた」と話した。5日は政府が開城共同連絡事務所を通じて「金剛山(クムガンサン)共同点検団訪朝」計画を通知した日である。
政府は、捕えた2人が乗っていたイカ釣り木船(17トン級)は、8日に東海の北方限界線上で北に引き渡す計画だと明らかにした。
政府と国会側の説明を総合すると、彼らは8月15日、咸鏡北道金策(キムチェク)港を出航してロシア海域などの海を通り、2カ月半の間イカを漁っていた。その過程で船長に継続的で苛酷な行為をされ、報復を共謀して鈍器で船長を殺害し、犯行を隠そうと同僚の船員15人も勤務交代を名目に2人ずつ順に呼び出して殺害して、遺体を全て海に沈めたという。イカを売って慈江道に逃亡しようと金策港に行き、共犯の3人中1人が北朝鮮当局に捕まると、残り2人が東海の南側へ逃走した。
統一部の当局者は「陳述以外に殺害の証拠はあるのか」との取材陣の質問に「彼らの陳述と船の状況が一致する」として「犯罪行為に疑問の余地はない」と述べた。
チョン・ギョンドゥ国防部長官は、国会国防委員会に出席し「10月31日から作戦が進められ、11月2日夜明けに海軍特戦要員が(木船に)入って制圧した」と明らかにした。キム・ヨンチョル統一部長官は、国会外交統一委員会に出て、「彼らは海軍に制圧された後、帰順の意志を表明したが、一貫性がなく信頼することができないと判断して追放した」として「彼らは海軍と遭遇した後、2日間逃走して、警告射撃後にも逃走を試みた」と明らかにした。
犯罪者追放は国際的には犯罪者引渡し条約などを根拠とするが、政府が北側の人を追放した先例も関連した法律明文規定もなく、南北間には明文合意もない。そのため政府の追放措置については議論が起こり得る。ただし北は、1996年に鴨緑江を泳いで越北した小説家のキム・ハギ氏を含む多数の越北韓国人を、追放形式で南側に返した前例がある。統一部当局者は「関連規定の補完が必要だ」と話した。