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ダークウェブでなくても…10代ポルノ映像「チャットアプリ」で堂々と取引

登録:2019-11-02 09:19 修正:2019-11-02 12:29
十代女性人権センター、購入者を装ってみると… 
センター側が「映像を買いたい」メッセージ送ると 
「100本あたり1万5千ウォン」映像が送られ 
IP追跡が難しい「ダークウェブ」でなくても 
ランダムチャットであまりにも簡単に取引

  「男性同士と信じて、中高生の映像363本。全部で5万5千ウォンでどうですか」

 3月、10代の女の子たちの性売買被害を監視しようとして、あるランダムチャットアプリを探っていた「十代女性人権センター」(センター)の“レーダー”に彼らの活動が感知された。センターはこれまで毎日チャットアプリやSNSをモニタリングし、疑惑のある掲示物をキャプチャーして、警察と放送通信審議委員会(放審委)に申告してきた。だが、両機関からは特に反応がなかった。センター側が今回ばかりは直接乗り出すことにしたのはそのためだ。購入者を装って、直接映像を受け取ることにした。

 センター側がランダムチャットアプリを通じて映像を買いたいとメッセージを送ると、販売者はすぐに「映像は363本だが、100本当たり1万5千ウォンでも売る」、「入金されればすぐに送る」という返事を送ってきた。販売者は「映像が追加されたら書き込むので時々チェックして下されば」と、「顧客サービス」用の挨拶まで忘れなかった。映像1本で150ウォン。5万5千ウォンを送金し映像を購入すると、一目で見ても10代の少女であったり、制服を着た生徒のポルノ動画がセンターの電子メールに送られてきた。十代女性人権センターは、動画の販売者をソウル永登浦(ヨンドゥンポ)警察署に児童・青少年の性保護に関する法律違反の疑いで告発した。警察はセンターの告発後、販売者の身柄を起訴意見付きで送検し、映像を所持した人々に対して捜査を拡大している。

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ダークウェブでなくても簡単に手に入るポルノ映像

 「ダークウェブ(IPアドレスの追跡が難しいインターネット空間)ですか? 10代のポルノ映像はそこまで行く必要もありません。あきれた現実です」

 先月30日、十代女性人権センターのチョ・ジンギョン代表は、ハンギョレとの通話でため息をつきながら言った。最近、ダークウェブ最大の児童・青少年ポルノ映像サイト「ウェルカム・トゥ・ビデオ」の映像流布に数百人の韓国人が関与していたことが明らかになり、波紋が広がった。しかし、何度も暗号を入力しなければアクセスできない「ダークウェブ」まで行かなくても、韓国社会では児童・青少年ポルノ映像がランダムチャットアプリなどで堂々とシェアされている。特に、このようなランダムチャットアプリは児童・青少年の映像や写真などの性的搾取が行われる1次被害の空間であると同時に、これを再配布する2次被害の空間でもある。

 児童・青少年に対してオンライン空間で加えられる「イメージに基づく性的搾取」は、それ自体が性犯罪とされるのが趨勢だ。モニターの向こうの児童・青少年に対する性暴力や性売買につながらなくても、「露出映像を送ってくれ」と言ってこれを所持すれば、それ自体が児童・青少年に対する犯罪になる。昨年9月の最高裁判所(大法院)の判例によれば、被害者の女性青少年に露出映像を撮って送らせ、個人的に所持していた男性が、2年6カ月の懲役刑を受けた。最高裁は「被告人が直接児童・青少年の面前で撮影行為をしなかったとしても、児童・青少年を利用したわいせつ物を作ることを企画し、他人に撮影行為させたり、作る過程で具体的な指示をした」として、児童青少年法違反とみなした。

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性犯罪続くも…なまぬるい警察・放審委

 そのうえランダムチャットアプリでの性的搾取は、オフラインでの性犯罪にもつながりやすいにもかかわらず、警察や放送審議委員会などの関係機関の対応は依然としてなまぬるかったというのが活動家らの指摘だ。

 十代女性人権センター側の説明を聞くと、去年4月に問題の「363本の中高生映像」を警察に通報した当時、警察はセンター側に「映像一つ一つがなぜ中高生に見えるのか」を書いて告発することを求めたという。販売者が「中学生・高校生映像」と記したタイトルをキャプチャーし映像資料を提出したにもかかわらず、分別の責任を告発人に転嫁したのだ。このためセンター側は「肉眼で見る時、発育状態や制服などあまりにも明確に児童・青少年が登場する映像(63個)だけを選んで申告」するしかなかった。

 チョ・ジンギョン代表は「サイバー警察庁に性売買が疑われる業者などを申告しても、捜査が遅々として進まないのが日常茶飯事だった」とし、「ダークウェブ事件が起きなかったら警戒心を全く持たなかっただろう」と皮肉った。これについて警察関係者は、「第一線の警察署の場合、ランダムチャットアプリを通じた映像の流布以外にも申告される事件自体が多いため、通報や告発が寄せられたものを中心に捜査を進めるしかない」と現場の困難さを訴えた。

 ランダムチャットアプリに対する制裁権限を持つ放審委も消極的なのは同じだ。有害コンテンツ掲示者に対するアカウントの停止を勧告するのが、現在のところ放審委がランダムチャットアプリサービス業者に下せる最善の制裁だと説明する。放審委関係者は、「私たちも自主モニタリングをしている。しかし違法情報であることが確認されれば制裁措置を取れるが、掲示物だけを見て一般成人間の出会いを提案する文なのか、児童・青少年の性的搾取の問題のある文なのか、把握するのは難しい」と説明した。

韓国女性団体連合のメンバーらが2018年8月、ソウル西大門区警察庁前で警察の偏った捜査を糾弾する緊急記者会見を行っている。彼らは違法撮影物を流布・ほう助したウェブハードは処罰しなかった警察が、インターネットコミュニティー「ウォマド」の運営者にわいせつ物流布ほう助容疑を適用したのは偏っているとし、謝罪を要求した/聯合ニュース

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映像の中の被害者なのに「犯罪加担者」に

 ポルノ映像の被害者になった青少年たちは、二重の被害に苦しむ。性売買や性暴力など性的搾取による心理的な傷だけでなく、「対外露出」に対する激しい恐怖と屈辱が伴うが、法は彼らを「犯罪加担者」に分類している。

 慶尚大学法学研究所のキム・ドゥサン研究員の「児童・青少年を利用したわいせつ物の合理的な規制と被害児童保護に関する研究」に書かれた米国側の児童ポルノ映像被害者研究資料(2018)によると、被害者の74%は「恥ずかしさと屈辱を感じて本人自ら有罪だと考える」と答えた。54%は「映像を見た人が、自ら喜んで撮影に参加したと思うだろう」と心配している。しかし、現実的に警察や福祉機関に報告され助けられたケースは23%に過ぎなかった。

 さらに、韓国国内ではほとんどの10代ポルノ映像被害者たちは「犯罪加担者」とされる。現行の児童・青少年の性保護に関する法律(児童青少年法)は、「自発性」を基準に性売買に関与した児童・青少年を犯罪の被害者と行為者に分類する。非自発的な被害者を「被害児童・青少年」に、自発性が少しでもあったなら性売買に加担した「対象児童・青少年」に分ける。オンライン空間での犯行もこの分類基準から自由ではない。「民主社会のための弁護士会」のシン・スギョン弁護士は、「ランダムチャットアプリでの映像被害者も自分の意思で露出したのか、暴行と脅迫で強要されたのかに還元され、またもや自発性が争点になるしかない」と懸念を示した。

 「児童青少年法」が被害者の供述を遮り、捜査の障害になっているという指摘も出ている。女性と児童・青少年のための社会団体「タックティーン明日」のイ・ヒョンスク代表は、「被害事実を話すと自分も処罰されるのではないかと心配し、子どもたちがちゃんと供述できないケースが多い。青少年を保護する義務が成人にあることを明確にする基準が法律に設けられるべきだが、今の児童青少年法はそうではない」と批判した。

 ひとたび対象児童・青少年に分類されれば、受けた傷は治しがたい。加害者のように少年法上「保護処分」を受け、「社会奉仕」命令や性暴力予防教育などを履修することになる。女性家族部傘下のデジタル性犯罪被害者支援センターのように、デジタル性犯罪被害者のための機関があるが、主に被害者と認められた人たちにしぼって支援する。十代女性人権センターのチョ・ジンギョン代表は、「被害青少年は、人々に知られることを恐れて家の外にも出られないほどなので、支援が切実に求められる。『なぜ私が性暴力の加害者教育を受けなきゃならないの』と問うた被害青少年の声に、社会が耳を傾けるべきだ」と語った。

キム・ミンジェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/915397.html韓国語原文入力:2019-11-01 07:09
訳C.M