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「セヌリ党の時もマクロ使って偽ニュースを流布」

登録:2018-06-08 17:44 修正:2018-06-10 15:22
2014年の地方選挙選対委の対話録を入手

「イルベの掲載文、拡散せよ」注文後2分で「完了」
広域自治体候補の選挙陣営実務者が全て参加
「オートホットキーなどマクロで世論操作」

投票前日に「ユ・ビョンオン関与疑惑」
パク・ウォンスン誹謗の虚偽文むやみに拡散

セヌリ党が2014年の6・4地方選挙当時に開設した陣営関係者のカカオトークのグループチャットの画面。当時新政治民主連合のソン・ヨンギル仁川市長候補がユ・ビョンオン勢力と野党圏連帯をしたという疑惑を拡散してほしいという要請に、各陣営から「完了しました」と答えている//ハンギョレ新聞社
セヌリ党が2014年の6・4地方選挙当時に開設した陣営関係者のカカオトークのグループチャットの画面。当時新政治民主連合のソン・ヨンギル仁川市長候補がユ・ビョンオン勢力と野党圏連帯をしたという疑惑を拡散してほしいという要請に、各陣営から「完了しました」と答えている//ハンギョレ新聞社

 自由韓国党の前々身であるハンナラ党が、2006年から各種の選挙でマクロ(自動入力反復)プログラムを使って世論を操作した情況が確認されている中、ハンナラ党の後身であるセヌリ党もまた2014年の6・4地方選挙でマクロを動員し、“偽ニュース”を流布した情況がさらに明らかになった。

 5日、ハンギョレは2014年の6・4地方選挙セヌリ党中央選挙対策委員会SNS疎通本部状況室が開設したカカオトークのグループチャットの対話録一切を入手した。6・4地方選挙の公式選挙運動期間に合わせて開設されたこのグループチャットには、セヌリ党の党役員および議員補佐官5人を含め、全国17の広域自治体の候補者選挙陣営の実務者が全員参加している。

 状況室構成員のN氏は、グループチャットを開設した理由について「(各地域の選挙陣営のオンライン対応が必要なコンテンツに)座標をとり、そこに担当者が“火力支援”(コメント作業)をするために作ったもの」だとして、「陣営ごとに使用水準は異なったが、“オートホットキー”などのマクロプログラムを活用してSNS広報作業を展開した」と話した。 “オートホットキー”(AutoHotkey)は、使用者が自動的な反復作業ができるようにするマクロプログラム・ソフトウェアの一つだ。グループチャットの一員だったある広域自治体の候補者陣営の実務者K氏は、「党中央と地域の選挙陣営が一緒にマクロなどを活用して相手候補を攻撃し、我々に有利な内容を流布させるために作ったグループチャット」だと話した。 カカオトークやツイッターのようなSNSでマクロを使えば、短時間で多くの人に効率的にアプロ―チすることができる。手作業でいちいちコピーして貼り付けなければならない手間も減らすことができる。

セウォル号疑惑が野党圏に向かうよう操作
「ソン・ヨンギル-ユ・ビョンオン連帯」という虚偽事実を配布
数分後に各地から「完了しました」と呼応

セヌリ党の公式組織が“偽ニュース”の工場に
「ネイバー共感コメント、1分間留まるように」
マクロ設定時に滞留時間操作を要請

“北風”煽った無限リツイート
「今日仁川に砲撃落ちたという情報
うまく使って必ず勝利を!」

 彼らが座標をとり火力支援をしてSNSに流布させたコンテンツには、いわゆる偽ニュースが多数含まれていた。投票前日の2014年6月3日、セヌリ党のチョン・モンジュン・ソウル市長候補の選挙陣営担当者は、ある極右インターネット媒体の記事のURLをグループチャットに上げ「乙(社会的弱者)のための政党だと言いながら、裏では庶民を背信?新政治民主連合、38億ウォンのブルーバイク疑惑『終盤の変数』、パク・ウォンスン選挙陣営まで関与を確認…選挙を翌日に控えて波紋」という文章をつけて配布したツイッター掲示文の拡散を要請している。同担当者は「この内容はすべての地域に役立ちそうです」と書き込んだ。

 現在この記事の原文は削除されて見つからない。ブログなどに残っている内容と当時の陣営関係者らの証言を総合すれば、この記事は民主党選挙遊説に自転車(ブルーバイク)を納品することにしたという事業者が提起した一方的な疑惑に関するものだった。彼らはこの記事に「パク・ウォンスンの関与が確認された」という虚偽の主張をつけ加えて拡散したわけだ。

 同じ日に同担当者は「パク・ウォンスン候補の夫人カン・ナンヒ氏、ユ・ビョンオン一家と関連疑惑、ユ・デギュン(ユ・ビョンオンの息子)が実所有者であるモンテクリストレストランの彫刻展示、バレー公演の中心メンバー参加を主張」というタイトルをつけ、また別の極右インターネット媒体の記事も拡散してほしいと要請した。この記事もやはり、匿名情報提供者の伝言を聞いたという別の匿名情報提供者の伝言を引用するなど、最小限の記事要件も備えておらず、偽ニュースに近い。 当時パク・ウォンスン・ソウル市長候補側は、当該報道が虚偽であるとしてすぐに検察に告発したが、選挙勝利後に取り下げた。当時パク・ウォンスン・ソウル市長選挙陣営で法律支援を担当していたある弁護士は「誰かが虚偽事実を流布させたため、陣営で厳重な対応を論議したが、その流布をセヌリ党の公式組織がやったとは知らなかった」と話した。

 6・4地方選挙当時はセウォル号惨事の直後だったので、救助に失敗した政府の無能論が提起されていた時だった。 グループチャットによれば、セヌリ党関係者たちはセウォル号関連疑惑が野党圏に向かうようにするために虚偽事実を流布するのもはばからなかった。2014年5月30日、ユ・ジョンボク仁川市長候補の選挙陣営担当者は「ソン・ヨンギル仁川市長候補、ユ・ビョンオンと“野党圏連帯疑惑”波紋が予想(されるという)ユ・ビョンオン関連のツイッターです」として、あるツイッター掲示文の拡散を要請している。これに対し、何分も経たないうちにあちこちから「完了しました」と報告が入る。当該URLの掲示文は現在削除された状態だ。ハンギョレが取材した結果、この掲示文は自らを「セヌリ党支持団体」と紹介する所の一方的主張を、ある媒体が記事化したものだった。2010年地方選挙で(当時)新政治民主連合所属のソン・ヨンギル仁川市長候補を支持した「2010仁川地方選挙連帯」の参加団体のうち一団体が、ユ・ビョンオン勢力と関連があるという主張だった。だが、この団体の一部会員が救援派の信徒であるだけで、ユ・ビョンオンとの直接関連はなかった。当時、仁川地域環境団体はこれを「事実関係の確認もなしに進められた中傷宣伝」として、糾弾記者会見まで行なった。

セヌリ党中央選対委SNS疎通本部状況室が開設したカカオトークのグループチャットの画面。党中央と地域選挙陣営が流布すべき掲示文を共有しマクロ等を活用してSNSに偽ニュースを流布させた情況がそのまま載っている//ハンギョレ新聞社

 安保に対する不安心理を刺激して“北風”(韓国で選挙のたびに北朝鮮関連の問題が持ち上がり選挙に影響を与えてきたこと)を活用しようという謀議もなされた。 5月22日午後、北朝鮮が延坪島(ヨンピョンド)にあった韓国の哨戒艦艇に2発の砲撃を加えると、ある陣営関係者が「仁川に今日爆撃があったと言い、うまく活用して必ず勝利を!」と書き込んだ。 その後、仁川の担当者が北朝鮮の安保脅威を強調するツイッターメッセージのリツイート(RT)を要請すると、他の陣営関係者たちが“火力支援”すると言って一斉に呼応する。グループチャットに参加していたある関係者は、「掲示文拡散の指示が下りれば無条件的に従った」として、党中央から下りてきた指示や接戦地域から依頼された作業がちゃんとなされなければ「党中央が直接連絡して急かすことも多かった」と話した。

 極右性向のヘイトサイトである日刊ベストストア(イルベ)の掲示文を拡散してほしいという注文も登場する。このような要請に選挙陣営担当者らは2分後に「完了した」と答えたり、3分後に「40個完了しました」と答えている。K氏は「指示が下りて1~3分で拡散作業が完了できたのはマクロを使ったため」だとし、「マクロを使わない手作業は、陣営別に選挙運動員に登録されていないバイトを雇用してやった」と話した。

 グループチャットにはツイッターなどSNSだけでなく、ネイバーでもマクロプログラムを活用した痕跡が残っている。2014年5月30日、ある地域陣営担当者は「ネイバーブログに共感+コメントをお願いします」として、ネイバーブログの掲示文のURLを共有して「ただし、ブログに1分程度は留まるようにして下さい(泣)」と頼んでいる。 これについてK氏は「マクロプログラムを使う際に、共感とコメントだけつけてすぐ出てしまわないで、1分ほど経ってから出るように滞留時間を操作してほしいという要請だった」と説明した。これはネイバーのアルゴリズムが共感とコメント以外にも、滞留時間を基準として人気のあるブログ掲示文を判断し、メイン画面に露出するという点を考慮したものだ。

 セヌリ党が選挙にマクロを利用した行為に対して、忠南大学言論情報学科のイ・スンソン教授は「公の党が質が低く不公正な情報を拡散する行為は、法的問題を越えて民主主義の面で深刻な害悪となる行為」だと指摘した。仁川大学政治外交学科のイ・ジュナン教授は「誰によるにせよ、マクロを使った選挙運動は深刻な世論歪曲であり、不法選挙介入だ。この行為を政党レベルで行なうことは大きな問題だ。“ドゥルキング”のような私的な人物がマクロを使うよりもずっと深刻だ」として「徹底した捜査がなされるべきであり、今後選挙過程でマクロ活用の有無をリアルタイムで監督できるように措置する必要がある」と強調した。

 当時このグループチャット開設は、セヌリ党のSNS疎通本部長だったチョン・ハジン議員にも報告されたとグループチャット参加者らは伝えた。開設直後には朴槿恵(パク・クネ)大統領府の広報首席室行政官から「選挙をよろしくお願いする」と激励まで受けたという。 党の公式報告を経て大統領府もこのグループチャットの存在を知っていたという解釈が可能な部分だ。これに対してチョン前議員は「2014年の地方選挙当時は党中央ではなく地域で活動していた」とし、「グループチャットの存在も知らなかった。マクロ活用に関しても初めて聞く話だ」と答えた。 当時大統領府広報首席だったイ・ジョンヒョン議員(無所属)は「マクロや偽ニュースの部分は全く知らず、聞いたことがない」と答えた。

キム・ワン、パク・チュニョン、オ・スンフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/847860.html韓国語原文入力:2018-06-06 05:00
訳A.K