「電撃会談」の意味と見通し
文大統領「歴史の流れ変える
完全に新たな出発点になるだろう」
朝鮮半島「不信から信頼」の転換点に
両首脳、随時話し合うという
4・27板門店宣言の約束を実践
「疎通の日常化」で南北関係の質的跳躍
南北が共に朝米関係の変化を主導
米国支配的な国際政治に“波乱”
周辺4カ国、朝鮮半島戦略の修正は避けられず
ドナルド・トランプ米大統領が、6月12日にシンガポールで開かれる予定だった朝米首脳会談の中止を書簡で発表しなかったなら、1カ月ぶりの26日の板門店南北首脳会談(5・26の首脳会談)は開かれなかったはずだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、誰も予想しなかった電撃的な首脳会談で、座礁の危機に瀕していた朝米首脳会談を蘇らせ、南北関係を質的に一段階高い状況に押し上げた。
文字通り「災い転じて福となす」の芸術だ。文大統領と金委員長の情勢突破に向けた“電撃戦”は、これ以上「冷戦の孤島」として米国や中国、日本、ロシアという周辺4カ国の超大国の政治と仲違い策に揺さぶられ、戦争や分断、対立で時間を無駄にすることはないという“協調宣言”だ。
「歴史の流れを変える、全く新しい出発点になるだろう」という文大統領の言葉は、だからこそ意味深い。事情に詳しい様々な消息筋が「誰も予想しなかった非常に興味深い事態の展開」であり、「(朝鮮半島の)不信プロセスを信頼プロセスに変える転換点」と評価するのも、そのためだ。
まず「5・26首脳会談」には、「両首脳は定期的な会談と直通電話を通じて民族の重大事を頻繁に真剣に話し合う」ことを約束した「4・27、板門店宣言」を実践したという意味がある。「有言実行」の良い先例を作ったのだ。文大統領は27日、会談の結果を発表し、「友人同士の平凡な日常のように行われた今回の会談に、非常に大きな意味を与えたい」とし、「南北はこのように会うべきだというのが私の考え」だと明らかにした。金委員長は26日、会談最初の冒頭発言で「心がもっと近づき、一つに集まって、平壌(ピョンヤン)とソウルがもっと近づく過程」だと述べた。「労働新聞」を通じては「南北関係の新たな幕を開いた歴史的な契機」だと評した。文大統領も、会談最後の発言で「過去には南北首脳が膝をつき合わせるのに、とても長い時間と努力が必要だったが、こうやって連絡し、簡単に会えるというのが、南北関係の新しい時代を示すバロメーター」だと評価した。
第1・2次南北首脳会談の過程に詳しい元関係者は「首脳間の疎通が日常化し、南北関係の安定的かつ日常的な発展の契機になるだろう」とし、「南北関係において言葉では言い表せないほどの大きな意味を持つ」と指摘した。同関係者は「内部的には『通米封南』などの時代錯誤的な言葉遊びで対立と分裂に追い込まれない転機になるだろう」と期待感を示した。
何より、「5・26の首脳会談」は「南北関係の再発見」、つまり戦争と分断の朝鮮半島の歴史において、南北関係と朝米関係の優先順位を調整することで、関係を再設定したものと言える。南北首脳の電撃的な談判によって座礁の危機を迎えた朝米首脳会談を復活させることで、南北の協力で朝米関係を“牽引”できることを示したからだ。「南北関係は米国が設定した限界を乗り越えられない」という国際政治学界の強固な認識が“不変の真理”ではないことを物語っている。
事情に詳しい消息筋は「トランプ大統領の公開書簡による会談の中止から26日の南北首脳会談に至るまでの過程は、南北関係が朝米関係より半歩または一歩リードしていくべきという南北の共感によるもの」だと話した。「信頼が不足したり、欠如した」朝米関係が停滞する時は、南北関係が「速度の維持と逆進防止」の安全弁の役割を果たすことができるし、またそうすべきという指摘だ。元高官は「金正恩委員長が、米国を相手にするためには、(伝統の後見国の)中国の習近平国家主席だけでなく、文大統領の協力が切実であることを認め、それを行動で示した」と話した。
実際27日付の「労働新聞」は「北南の首脳らは朝鮮半島の非核化を実現するために共同で努力していくことについての立場を表明し、今後随時会って対話を積極的に進めると共に、知恵と力を合わせていくことで意見の一致を見た」と報じた。文大統領も「朝鮮半島の非核化と恒久的な平和体制に向けた我々の旅程は、決して中断されないことを確認し、これに向けて緊密に協力することにした」と明らかにした。伝統的に朝米間の議題として認識されていたいわゆる「北朝鮮の核問題」(朝米間の敵対関係)を、文大統領が繰り返し強調してきた「朝鮮半島における冷戦構造の解体」の構想のもと、南北の協力で解消することを確認したものと言える。北東アジアの事実上の覇権国の米国はもちろん、中ロなど北東アジア周辺国も、対朝鮮半島戦略の見直しを迫られる状況展開だ。