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裁判所、“拷問偽証”の保安司捜査官を法廷で拘束「何が過ちだったのか思い出して」

登録:2018-04-10 23:33 修正:2018-04-11 10:31
元保安司捜査官の誠意ない謝罪に
拷問被害者法廷で憤り

判事「拷問を謝罪するには多くの時間が必要
被告人は被害者が辛い過去を脱するための鍵
何を誤ったのか思い起こしてほしい」として
逃走と証拠隠滅の恐れから拘束令状執行

在日韓国人スパイでっち上げ事件の被害者であるユン・ジョンホン氏(左)とキム・ジョンサ氏が2日午後、ユン氏の再審裁判で「拷問はなかった」と偽証した疑いで起訴されたコ・ビョンチョン氏の裁判を傍聴した。 この日コ氏は異例にも裁判中に法廷で拘束された //ハンギョレ新聞社

 「罪名は偽証だが本質は偽証に限定することのできない事件です。 (拷問の事実を)思い出せないと言うには、覚えている人があまりにも多い。謝罪がなされるには、被告人に多くの時間が必要なようです。それは非常に苦しい過程だから、被告人は裁判の終わりまで自分を守らなければなりません。それで逃走の恐れや証拠隠滅の恐れがあると見て拘束令状を執行します。 被告人より被害者の方が何万倍も苦しい時間を過ごしたことと思います。思い起こして、被害者たちが何とかしてつらい過去から脱せられるように助けることのできる鍵を被告人が握っているのではないかと思います。話したいことがありますか」(イ・ソンウン判事)

 「私が全部誤っていました」(コ・ビョンチョン氏)

 「何を誤ったのかが重要です。その何かを思い起こしてほしいのです」

 「これまで事実をありのままに話せなかったし、被害者を不名誉にしたことも誤りで、全てが私の責任です」

 「被告人にとっても非常に苦しい時間です。もしや別の事を考えはしないかと心配になりました。この事件の最大の証拠は被告人でしょう。 (拘束令状を)執行して下さい」

 2日午後5時7分、元国軍保安司令部(現国軍機務司令部)所属の捜査官コ・ビョンチョン氏(79)が法廷で拘束された。去年12月13日、偽証の疑いで起訴されてから110日目、2010年12月16日に在日韓国人スパイでっち上げ事件の被害者であるユン・ジョンホン氏(65)の再審裁判に出て「拷問しなかった」と証言してから7年3カ月、1984年韓国に留学に来た大学生ユン氏にスパイの自白を強要した拷問から34年だ。判事が裁判を受けていた被告人を法廷で拘束するのは非常に異例な事だ。

 ソウル中央地裁刑事19単独のイ・ソンウン判事は、この日午後4時から偽証容疑で起訴されたコ氏の三回目の裁判を開いた。裁判はもともとコ氏の被告人尋問、最終陳述、検察の宣告意見で進められる予定だった。コ氏を偽証の疑いで告訴したユン・ジョンホン氏だけでなく、コ氏の拷問の被害者キム・ジョンサ氏、チェ・ヤンジュン氏も法廷を訪れた。前回の裁判でコ氏が「謝罪する」と明らかにしたからだ。 しかし、コ氏は真の謝罪の機会を三回も逃し、被害者たちの数十年間積もっていた鬱憤を避けることはできなかった。

 コ氏は被告人尋問で「この事件の犯行を皆認めるか」という検事の質問に「認めます」と答えた。 検事が「ユン・ジョンホン氏、イ・ジョンス氏に対する拷問がなかったと述べた理由は何か」と引き続き尋ねるとコ氏は「実務捜査官に過ぎない私が(まるで組織を代表するかのように)個人的に言うわけにはいかなかったし、私に向けられる非難の目も恐ろしかったです。すべての方々にお詫び申し上げます」と言った。 しかしコ氏は「なぜ拷問したのか当事者に話すことはできません」と言って拷問の理由については沈黙した。 コ氏は2010年12月16日、ユン氏の再審事件に証人として出席し、「殴打や脅迫など苛酷行為をした事実はありませんね?」「イ・ジョンス氏にも拷問、苛酷行為をして調査しましたね?」といった検事と弁護人の質問に「そんな事実はない」と答え、後に偽証容疑で起訴された。

 コ氏の曖昧な返答が続くと、裁判を傍聴するために日本から車椅子でやって来たキム・ジョンサ氏が手をあげた。「裁判長、私は拷問で足がこのようになって車椅子に乗って歩かなければなりません。この人が起訴された後は夜もなかなか眠れません。この人は笑いながら21歳だった私に水拷問、電気拷問、エレベーター拷問、すべてしました。こんな機会はもうないと思って日本から来たんですが、謝罪する、反省していると信じることができません」 。キム氏は涙を流した。また別の在日韓国人スパイでっち上げ事件の被害者であるカン・ジョンゴン氏も席から立って「自分が欲する陳述を引き出すために拷問したという真実が無視されるから藁をもつかむ思いで偽証罪で訴えたわけですが、偽証より拷問の方がもっと大きな人権侵害です。拷問が今後永遠になくなるためには、この人は責任を負わなければなりません」と主張した。

 二人の話を聞いたイ判事は「お詫びというのは受ける人が望む方式でなされて初めて真のお詫びになります。被告人が本当に謝罪するのならば、聞く人にもその感じが伝わらなければなりません」と言って、拷問した当時を含めた具体的な謝罪を要求した。 これに対し証人席から被告人席に席を移したコ氏は最終陳述を始めた。「尊敬する裁判長、まずユン・ジョンホン氏にお詫びし、赦しを請います。 他の全ての方々にもお詫び申し上げます。 心より申し訳なく思い、許しを請います」。イ判事が「私に赦しを請うことはありません。被害者たちを見てお詫びをしなければ」と言うと、コ氏は傍聴席に向かって若干頭を下げて「申し訳ありません」と言った。

 しかしコ氏は次いでチャン・ギョンウク弁護士の浴びせた質問には、まともに答えなかった。 チャン弁護士はユン・ジョンホン氏の再審弁護人であり、コ氏に対する告訴代理人だった。

 「ユン・ジョンホン氏とイ・ジョンス氏に対する拷問を認めますか? 」(チャン弁護士)

 「認めます」 (コ氏)

 「他の人も拷問しましたか?」

 「私はしませんでした」

 「ユン・ジョンホン氏を拷問したエレベーター室を詳しく説明してみてください。どうやって拷問するんですか、その中で」

 「よく知りません」

 「よく知らないというなら、何を反省するのですか。 エレベーター拷問を認めますか?」

 「それを使う人もいます」

 「証人は使わなかったんですか?」

 「私はやりませんでした」

 「拷問した理由は何ですか?」

 「申し訳ありません。 私が至らなくてやりました」

 「誰の指示で拷問したのですか?」

 「…」

 とうとうユン・ジョンホン氏も席から立ち上がった。「前回もそうでしたが、私はこの人が見える空間にいると精神的に不安です。 あまりに恨めしくて…。 これは謝罪じゃありません。 曖昧な答え方でとにかくこの裁判を早く終わりにして、できれば軽い刑を受けようという本音が丸見えです。 チャン弁護士の質問は被害者が皆知りたいと思っている内容ですが、答えないのではなく答えられないのだと考えます」。判事の前でユン氏は慟哭した。 裁判を傍聴していた高齢のスパイでっち上げ事件の被害者と家族も一緒に涙を流した。 ユン氏の言葉をじっと聞いていたイ判事は5分の休廷後、コ氏の拘束令状を発行した。

 裁判が終わった後、ソウル中央地裁西館501号の外に出たキム・ジョンサ氏はユン・ジョンホン氏の手を握った。キム氏は「拷問加害者が謝罪するのは歴史上初めてだというので日本から来てみたけれど、謝罪しなかったじゃないか…」と言って依然として怒りを抑えることができなかった。 ユン氏も涙で充血した目をぬぐって「わずかながら慰めになりはしたけれど… 次にまた何と言うか分かりませんね」と言った。

文・写真キム・ミンギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/838769.html韓国語原文入力::2018-04-02 18:17
訳A.K

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