ヤン・スンテ最高裁判所長の時、裁判所の行政処が大統領府の要求でウォン・セフン元国家情報院長の2審の裁判部の意中を把握し、大統領府に教えようとした状況が書かれた文書が公開された。司法府が国の綱紀を乱す重要な犯罪の裁判と関連して大統領府と緊密に協議し、裁判を連結点としてヤン前最高裁判所長が推進していた上告裁判所の設立と連携を試みた情況も明らかになった。司法の独立と裁判の公正性を損ねる重大な「憲法違反」事案なので、当時司法行政を総括したヤン・スンテ前最高裁判所長の責任論が激しくなっている。
キム・ミョンス最高裁長官の就任後、「司法府ブラックリスト」疑惑を究明するために構成された最高裁判所追加調査委員会(委員長ミン・ジュンギ・ソウル高裁部長判事)は22日、ヤン前最高裁判所長在任時期、行政処が大統領府が関心を持つ裁判の進行状況や司法改革を要求する判事たちの動向などを“査察”し、先制対応策まで書いた内部文書などを見つけたと発表した。昨年初め、「(行政処)企画調整室のパソコンを見ると、判事を秘密調査したファイルが出てくるが驚くな」と言ったイ・ギュジン元量刑委員会常任委員の発言で作成疑惑が触発された「司法府ブラックリスト」が、体系的な名簿の形ではないが多くの判事の秘密調査ファイルの形で実在していることが確認された。
特に行政処企画1審議官が使用したコンピューターから発見された「ウォン・セフン元国情院長判決に関連する各界の動向」という文書は、司法府の高官と大統領府の「不適切な癒着」を赤裸々に表わした。「コメント操作」などを通じたウォン元国情院長の大統領選介入疑惑事件は、当時朴槿恵(パク・クネ)政府の正当性を揺るがす重要問題であり、1審無罪、2審有罪で裁判所の判断が食い違った。2審の有罪判決の翌日である2015年2月10日に作成された同文書によると、大統領府は判決前「控訴棄却を期待し、行政処に見通しを問い合わせ」、行政処は「迂回的・間接的に裁判部の意中を把握しようと努力している」ことがわかった。判決宣告後にはウ・ビョンウ当時民政首席が「司法府に対する強い不満を示し、全員合議体に付託することを希望」し、行政処は対応策として「(上告審)記録の受付前にでも、特に法律上の誤りについて綿密に検討」する案を提示した。
さらに、文書には「上告審の判断が残っており、BH(大統領府)の国政掌握力が落ちている局面→発想を転換すれば、最高裁判所がイニシアチブを握る可能性も」などの内容が書かれていた。最高裁の判決とヤン前最高裁判所長が推進していた上告裁判所の設立を「取引」したという疑惑が提起される。実際に最高裁判所全員合議体(主審・ミン・イルヨン最高裁判官)は、最高裁判官13人の満場一致で2審判決から5カ月後の2015年7月、選挙介入を有罪とした原審を破棄し差し戻した。
追加調査委はまた、行政処がヤン前最高裁判所長の司法政策に批判的な判事の政治的性向、影響力、特定研究会所属の有無、家族関係まで把握していたと明らかにした。