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雇用保険 死角地帯 823万人…失業の恐怖に怯える

原文入力:2009-09-01午後09:02:04
[失業給付 100万人時代]雇用政策を変えよう②ぜい弱な雇用安全網
世帯主失職家庭 半数以上が貧困層転落
労働部では“失業給付受給率 44%”主張
非公式失業者数が多く、現実はより一層 劣悪

ファン・ボヨン記者

←働き口を失い失業給付を申請しようとする人々が去る3月、ソウル,九老洞,ソウル冠岳総合雇用支援センターで雇用保険受給資格認定申込書を職員に提出しようと長く並んでいる。 チョン・ヨンギル<ハンギョレ21>記者yongil@hani.co.kr

仁川,富平のGM大宇自動車組立部イ・某(48)氏に‘失職’の思い出は二度と思い出したくない‘悪夢’だ。去る2001年2月に整理解雇通知を受けた後、ただの一日も気楽な日がなかったためだ。妻と3人の子供の生計の責任を負わなければならない‘家長’という荷札はそのどの時より彼を強く締めつけた。

解雇当時、イ氏の支えは‘失業給付’を受けることができる雇用支援センターだけだった。だが月250万ウォンを稼いできた彼に与えられたお金はせいぜい90万ウォンほどだった。それすら6ヶ月後には切れた。40代に入った彼が6ヶ月以内に他所に就職することはやさしくなかったが、雇用支援センターでは受給期間が終了したとだけ言った。この時から子供たちを学院(塾)にやることも、家族で外食することもできない‘寂しい’生活が始まった。再就職に失敗したイ氏は結局創業を選択した。整理解雇者の再就職を助ける‘希望センター’にも行ってみたが、適当な仕事場を見つけることができなかったためだ。生活費を使って残った退職金に銀行からの借金を加え自宅周辺でチキン店を開いた。初期にはバイク配達に習熟していないために何回も応急室の世話にならなければならなかった。

何よりも毎月きちんと一定額を月給として得てきた彼に、一定しない収入は大きい負担になった。時間が過ぎるほどあきらめなければならないことも増えた。楽しみで吸っていたタバコの値段が2500ウォンに上がり禁煙を始めた。今が最も塾に通って勉強しなければならない子供たちに広告ビラの配布を手伝ってくれと言った時は、申し訳なさで首をうな垂れた。

2003年に全国を襲った‘鳥インフルエンザ’波動はあれこれの苦労をを水の泡にした。あっという間に売上は半分になり、店を閉めなければならない状況にまで至った。借金が増えマイナス通帳がいくつもできたのもこの頃だ。働き口を再び探し始めたが、やさしいことではなかった。普段から社長と顔見知りのシンク台工場でしばらく仕事をしたのと松島新都市建設現場で日雇い仕事をしたのが全てだった。

2ヶ所では月に100万ウォンを稼ぐことすらできなかった。新しく技術を習得しなければならない立場だったので底辺水準の賃金を甘受しなければならなかった。ついに上の子の大学入試を世話しなければならない妻までが求職活動に乗り出した。彼は「子供が実業系高等学校と専門大に行ったことが、パパが立派な職場を持つことができなかったためと感じ無念に思う時が多い」と打ち明けた。

2006年5月、復職してイ氏は胸をなで下ろした。失職期間5年3ヶ月の間に得たものは3000万ウォンの借金と‘何をしても良くならない’という喪失感だけだった。しばらく繁忙になった工場は、最近になってまた暇になった。景気不振で物量が減り、彼は最近は週に3日だけ工場に出て行く。2001年の整理解雇直前にも全く同じことを体験した。イ氏は「(再び失職すれば)もう腰が良くなく土方にも出て行けないのに…」として言葉尻を濁した。

過去に長期間の失職状態に置かれたイ氏の場合のように、失職は急激な所得減少につながり貧困層に転落する可能性を高めるが、これを社会的に保護し後押しする雇用安全網は非常にぜい弱な水準という指摘が絶えない。

1日、韓神大チョン・ビョンユ教授(経済学)が、働き口を失っても失業給付を受けることのできない雇用保険の死角地帯に放置された人々の規模を推算した結果によれば、何と823万人(今年1月基準)に達する。去る1995年に導入された雇用保険制度は直近18ヶ月間に180日以上保険料を納付した非自発的失業者を対象にしている。だが、こういう制度の恩恵から抜けおちた人々が少なくないのが現実だ。

←GM大宇自動車イ・某(48)氏の失職前後の所得減少推移(※クリックすればさらに大きく見ることができます)

まず雇用保険適用対象だが加入できない人々が196万人に達する。週15時間未満の勤労者など雇用保険適用除外対象者も165万人になる。ここに零細自営業者412万人と青年層など新規失業者4万人,失業給付需給要件をそろえられなかったり受給期間が終了した失業者46万人なども‘死角地帯’に属する。

昨年世帯主が失職した場合、52.9%の世帯が次の分期に貧困状態に転落した。それでも失職にあった賃金労働者10人中1人だけが失業給与を受け取っているという分析が出ている。2007年基準で全体の失職した賃金労働者の中で失業給付を受け取る比重は10.3%に止まった。韓国労働研究院が‘韓国労働パネル’資料を活用し分析した結果だ。イ・ビョンヒ韓国労働研究院研究委員は「雇用保険に加入していなかったり、加入していても難しい受給要件を満たすことができない場合が多いため」と説明した。例えば長期間求職活動をしていても自発的に離職した場合には受給資格がない。

最近労働部は今年前半期の失業者中で失業給付を受けた比率が43.6%に達し、雇用保険制度が社会安全網として定着していると自評した。しかし統計庁が集計する‘公式’失業者に捕捉されない失業者の数がはるかに多いという点を勘案すれば、まだ肯定的評価を下すのは早い。昨年の経済危機以後そのまま休んだり就職準備だけをしている‘非経済活動人口’が増加していることも自ら‘失業者’になることをあきらめた人々が多くなったという傍証だ。再就職が難しいうえに失業給付の受給も容易ではなく、積極的に求職活動を行わないということだ。

雇用保険の死角地帯に属した人々ほど長期失業状態に置かれるケースがさらに多い。全体雇用保険加入者の失職経験率は12.1%に比べ、雇用保険未加入者の失職経験率は28.3%,雇用保険適用除外者の失職経験率は47.4%に達する。チェ・ヨンギ京畿開発研究院首席研究委員は「経済危機が雇用危機を媒介として社会危機に転移するのは雇用安全網の死角地帯で失業者が主に発生するため」と話した。
ファン・ボヨン記者whynot@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/374375.html 訳J.S