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MBC新社長キム・ジャンギョム報道本部長 …「公営放送“先占”」との批判

登録:2017-02-27 22:12 修正:2017-02-28 07:45
放送文化振興会、反対無視して社長選任強行
キム・ジェチョル-アン・グァンハン体制の核心的人物として選任
「言論掌握防止法」可決されれば「時限付き」の可能性も
「MBCを極右勢力の堡塁にした」との批判
MBC(文化放送)の新任社長に選任されたキム・ジャンギョム報道本部長(中央)が 23日午後、ソウル汝矣島の放送文化振興会の事務室に入るところ=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 MBC(文化放送)の大株主である放送文化振興会(放文振)と正修奨学会が、キム・ジャンギョムMBC報道本部長を新しいMBC社長に選任した。弾劾局面で提起された「言論改革」要求と国会の「言論掌握防止法」(放送法改正案など)の論議を無視したまま結局新しい社長選任を強行し、「MBCを極少極右勢力の堡塁として“先占する”意図だ」との批判が出ている。

 放文振は23日午後臨時理事会を開き、社長候補者であるクォン・ジェホンMBC副社長、キム・ジャンギョムMBC報道本部長、ムン・チョルホ釜山MBC社長の3人の面接を実施した後、投票によりキム本部長を社長内定者に選んだ。キム内定者は続いて開かれた株主総会で社長として最終確定された。放文振の投票には与党推薦理事6人だけが参加した。一貫して社長選任手続きに反対してきた3人の野党推薦理事は、不参加あるいは「合法性はもちろん正当性を備えた社長を選ぶべきだ」として延期を要求したが受け入れられず退場した。

 キム・ジャンギョム社長は1987年MBCに記者として入社し、キム・ジェチョル元社長時代に政治部長を務めるなど報道局内の要職をあまねく歴任した。2013年には報道局長に、2015年には報道本部長に昇進する。キム・ジェチョル元社長時代から前任のアン・グァンハン社長の時までずっと報道責任者を務めたので、MBC報道の視聴率・信頼度下落の核心的主役という批判を受けてきた。報道局長だった 2014年のセウォル号惨事の際には編集会議でセウォル号の遺族について「ヤクザ」と発言し、問題になった。最近では去年から持ち上がった「朴槿恵(パク・クネ)-チェ・スンシルゲート」関連事案を報道において無視し続け、MBC構成員から「“報道惨事”の主役」と言われて辞任要求を受けてきた。

MBC労組が23日、ソウル市上岩洞の本社前広場に組合員全員の名前入り社員証1650個を並べ公正放送闘争を決意するパフォーマンスを行なっている。放送文化振興会は言論改革要求を無視しこの日キム・ジャンギョム報道本部長を新社長に選任した=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 今回の社長選任は朴槿恵大統領の弾劾に反対する一部政治勢力が強引に押し切った結果だという憂慮と批判が出ている。弾劾局面で「公営放送改革」を要求する声が高まり、現在そのための放送法改正案など(「言論掌握防止法」)が国会に係留されている状況だ。「言論掌握防止法」が可決されれば公営放送の理事会を新しく構成しなければならないので、今回選任されたキム・ジャンギョム社長は「時限付き」の社長になる恐れがある。 たとえ法が可決されなくても、早期大統領選挙により政権交替がなされれば放文振理事会とMBC経営陣に対して過去の政権の「言論掌握」問題に対する責任が提起される可能性がある。このような状況にも拘らず放文振の与党推薦理事が反対の声を無視したまま社長選任を強行したのだ。これに対して「弾劾審判と早期大統領選挙などの局面で一部政治勢力の声を代弁するための“MBC先占”」という分析が出ている。現在放文振の与党推薦で任命された理事は、事実上朴槿恵政権の息のかかった人物だ。

 当初MBCの新社長選任は政治権力の公営放送掌握を防ぎ止め、放送の独立性を保障できるように新しい支配構造を設ける事と関連していた。李明博(イ・ミョンバク)政権は政権初期から公営放送を掌握したという批判を受けており、MBCはその弊害が最も深刻に現われた現場であった。2010年「天下り」問題とともにMBC社長に就任したキム・ジェチョルは、「公正放送」関連の社内手続きを無視して政府・与党に偏向的な報道で一貫し、2012年には労組の「170日ストライキ」を触発した。その後朴槿恵政権は公営放送の支配構造改善を大統領選挙公約に掲げたが、その公約を守るどころか「言論掌握」を続け、セウォル号惨事の際に大統領府がKBS(韓国放送)の報道に介入した事実が明らかになるなど、暴露と批判が絶えなかった。公営放送が報道において無視した「朴槿恵-チェ・スンシルゲート」はその頂点だった。そのため「言論掌握防止法」により公営放送の支配構造を改善して、MBCの新社長は新しい構造で選任すべきだという声がいつにもまして高かった。

 「言論掌握防止法」は政府・与党に偏向的な現行支配構造(KBSは与・野が7対4、MBCは6対3)を与・野7対6の構造に再編し、社長選任などについては「特別多数制」(3分の2以上の賛成)を導入することを主な内容とする。「社長推薦委員会」を通して公営放送社長選任に対する政権の影響力を二重に遮断できる方案も盛り込まれている。与野党どちらも一方的な理事会運営や社長選任ができない構造を作ろうというわけだ。 2013年与・野が共に参加した国会の放送公正性特別委員会で既にこれに対する共感が形成されている。 しかし旧セヌリ党勢力がこれを拒否し、第20代国会に入っても自由韓国党と「正しい政党」が 「言論掌握防止法」の処理を果てしなく遅延させて時間稼ぎに終始している状態だ。今回のMBC社長選任強行はこうした流れとも無関係ではないという指摘が出ている。

 MBCの内部葛藤は一層激しくなる見込みだ。2012年のストライキ以降、MBCはスト参加者を解雇等の懲戒あるいは本来の業務と無関係な職種に発令したと批判されてきた。チェ・スンホプロデューサー(PD)、パク・ソンジェ記者など労組員6人が解雇され、109人の記者・PD・アナウンサーなどが未だに「業務排除」の状態に置かれている。経営陣の「道具」でなければ捨てられた「余剰」になるよう強要する「廃墟」と化した、という診断が出るほどだ。 このような状況でキム・ジェチョル-アン・グァンハン体制の核心的人物として、また「報道惨事」の主役として批判されてきたキム・ジャンギョム社長の就任は、構成員の強い反発を呼んでいる。社長選任を控えて最近MBCが大規模な経歴職採用手続きを開始して、「(職員の)入れ替え」の疑惑が提起されもした。最近国会の環境労働委員会はMBC経営陣の不当労働行為を確認するための「MBC聴聞会」を開くことを決めたが、キム社長はこの聴聞会の核心的証人の1人でもある。

チェ・ウォンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2017-02-23 20:01

https://www.hani.co.kr/arti/society/media/783996.html  訳A.K