本文に移動

[インタビュー]「私が出家者だから韓国に行けないのか」

登録:2016-09-02 01:49 修正:2016-09-04 05:40
インド・ダラムサラで会ったダライ・ラマ 
チベットの「精神的指導者」ダライ・ラマが29日、インド・ダラムサラのナムギャル寺院で行われたアジアン法会で法文を行っている。ダライ・ラマはこの日龍樹菩薩の「宝行王正論」をテーマに空性・菩提心について説明した。//ハンギョレ新聞社

韓国仏教界、数年前から訪韓推進 
中国の圧力を意識し、韓国政府は入国不許可 
「あと何年待てば行けるのか… 
韓国に行ったら好きなキムチをたくさん食べたい」 

81歳の年齢にも、4時間睡眠・4時間修行の原則 
若者たちへ「心の幸福は意志にかかっている」

 第一声に驚かされた。「私が比丘(出家修行者)だから(韓国に)行けないのですか?」みんな笑った。首をかしげながら笑った。どういう意味かすぐに思い至らなかったが、世界的な精神的指導者の冗談に反応せずにはいられなかった。

 ダライ・ラマ(81)は韓国を訪問できない現実を逆説的な一言で表現した。彼の言葉を理解するのにしばらく時間がかかった。中国の圧力や韓国政府の入国不許可のために韓国を訪問できない現実を、冗談で婉曲に指摘したのだ。

 30日午前、チベット亡命政府のあるインド・ダラムサラの「ダライ・ラマ宮」の接見室で会ったダライ・ラマは、「一体これから何年待たなければならないのですか」という言葉からインタビューを始めた。

 今も午後不食の少食と、1日4時間の睡眠、4時間の修行の原則を守りながら、チベット独立運動を率いているダライ・ラマは、活発な対内外活動を行っている。チベットの独立を目指す非暴力闘争で1989年にノーベル平和賞を受賞した彼は、チベット難民だけでなく全世界の人の精神的指導者と称えられる。韓国仏教界は彼の訪韓を推進してきた。だが、中国との関係を意識した韓国政府が彼の入国を許可しなかったため、まだ韓国の地を踏めていない。中国政府はダライ・ラマの訪問を許可した国家には経済的制裁をするなど圧迫を加えてきた。

ダライ・ラマが30日、インド・ダラムサラの「ダライ・ラマ宮」接見室で訪韓推進委員会の関係者と韓国の記者団と歓談し明るい笑顔を見せている。//ハンギョレ新聞社

 この日の会見は韓国の「ダライ・ラマ訪韓推進委員会」(共同代表・金剛(クムガン)僧侶、眞玉(ジンオク)僧侶)が主催した。3年前に発足した訪韓推進委はこれまで僧侶や仏教信徒、一般市民など約13万人からダライ・ラマの訪韓に賛成する署名を集めた。曹渓宗総務院は政府の立場を考慮し、訪韓推進委とは距離を置いている。

 ダライ・ラマは訪韓の可能性について「中国政府の態度に変化が生じるまでは難しいだろう」とし、「来年の第19回中国共産党全国代表大会を機に、良い方向への変化があることを望む」と話した。彼は「韓国に行ったら好きなキムチをたくさん食べたい」と話しながらも「韓国に行けるか行けないかは政治的な部分であり、政治は少数の人間の手にかかっている」という言葉で、宗教を政治的に利用する中国と韓国政府の態度を批判した。2011年、モンゴルを訪問した後に日本に行く予定であったダライ・ラマが、仁川空港で乗り継ぎをする飛行機のチケットを予約したところ、アシアナ航空が彼のチケットを解約するというハプニングが起きもした。ダライ・ラマは年に2回、日本を訪問している。

 チベットの法王であるダライ・ラマは、2001年に自分の政治的権限の半分を委譲し、投票で首相を選出するとした。2011年には政治的権限を完全に渡した。今は宗教的な業務だけ行っていると強調した。「私の着ている袈裟は2600年前に仏が着た法衣と同じだが、私の頭脳は非常に若いマインドだ」と笑って話した。

 彼は「学びと修行の宗教」としての仏教を強調し、「仏教徒の大半が伝統によって読経と礼仏を行っているが、学びと修行をおろそかにする傾向がある」と指摘した。また「分析と観察を通して修行してこそ、仏教がこれからも数千年を継続していくことができる」とし、「もはや宗教も無条件に祈福する信仰ではなく、科学的にアプローチしなければならない」と呼びかけた。彼は「経典、特に般若心経の空性(我のないことを認識する)と菩提心(衆生を教化しようとする心)は、師を通して聞き、思惟が深まれば修行してみることを願う」とし、「修行を通して経験、体験が深まれば確信が生まれ、人生そのものが深まり、人生が幸せになる」と語った。

ダライ・ラマがチベット亡命政府のあるインド・ダラムサラの「ダライ・ラマ宮」接見室で訪韓推進委員会共同代表の金剛僧侶(左)、眞玉僧侶(中央)らと歓談している。//ハンギョレ新聞社

 現実に苦しんでいる若者たちに向けた幸福のメッセージも与えた。「物質的な幸福は我々の五感にかかっており、心の幸福は我々の意志にかかっている。心の幸不幸は肉体の幸不幸よりもはるかに重要だ。体がつらくとも心と意志がしっかりしていれば打ち勝つことができる」

 科学がいかに進化しても宗教は依然としてその役割を果たさねばならないと強調した。「創造主のいる宗教がある。目的は愛と憐憫を施すことだ。神はなぜこの世を創造したか。愛と憐憫のためだ。神は怒りでこの世を作ったのではないのだから、その方の性質と品格である憐憫を実践しなければならない。仏教は創造主のない宗教であるため、自らの行動が作った因果と業によって正しい人生を生きなければならない」

 この日、訪韓推進委はダライ・ラマに訪韓招待状を渡し、八萬大蔵経般若心経の経典版木を贈呈した。 ダライ・ラマは、韓国を訪問できれば海印寺を訪問し八萬大蔵経を参拝したいという意思を何度も表した。

 一方、ダラムサラで30年間修業している清典(チョンジョン)僧侶は記者らと会い、「ダライ・ラマの訪韓が何度も実現できずにる理由は、曹溪宗の指導者たちが政界の顔色を見ているため」だと主張し、「韓国の仏教が政界に振り回され、宗教の勢力が大幅に弱体化した」と批判した。

ダラムサラ(インド)/イ・ギルウ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国語原文入力:2016-09-01 21:36

https://www.hani.co.kr/arti/society/religious/759572.html  訳M.C