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[記者手帳]梨花女子大生だけの消費者運動より大切なことがある

登録:2016-08-11 00:27 修正:2016-08-12 13:12
梨大事態を考えるキーワード
梨花女子大の在学生と卒業生が10日午後、ソウル西大門区の同大キャンパスで総長の辞任を求め大規模な集会を開いて行進し「解放、梨花総長辞任」と訴えている=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

「学校のレベルが低くなるのは問題」
生涯学習単科大に反対する論理

自発的個人が集まって「主体」に
新鮮な抵抗という評価もあるが
「純粋な梨花人」を前面にかかげ
少数意見を座込みから追い出す

 梨花(イファ)女子大の在学生と卒業生が10日、チェ・ギョンヒ総長の辞退を求める「2回目のデモ」を始めた。

 学生たちはこの日午後8時、ソウル西大門区大興洞の梨大正門前で開かれた2回目の集会で、生涯学習単科大を作る事業「未来ライフ大学新設計画」を一方的に推進するなど学校の政策を独断的に決め、梨大キャンパスに1600人余の警察力を投入させたことに対する責任を問い、チェ総長は退陣すべきと主張した。各自がバラバラで徹底的に「個人」として動いていた20代の梨大生が、自発的に一つになって未来ライフ大学の新設撤回を引き出すなど、新しいスタイルの運動を見せたという評価もあるが、今回の問題を「純粋な梨花人」の問題と規定して、社会的拡張性を確保できなかったという指摘もある。2週間に及ぶ座り込み過程で起こったいくつかの場面を通じて、再会した「世代」の姿を見て回る。

梨花女子大の在学生と卒業生が10日午後、ソウル西大門区の同大キャンパスで総長の辞任を求め大規模な集会を開き声明書を朗読している=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

■ 差別に賛成する20代の積極的権利闘争

 「学内問題で学生どうしがこのように固く団結したのは初めて見ました。その上、夏休み期間中でしょう?」。在学生のイさん(23)は学期中はいつも一人でご飯を食べて、勉強するのが常だ。イさんばかりでなく、学生食堂には「一人ご飯」をする学生が大半だ。イさんは先月、学内コミュニティの「梨花イアン」に上げられた「未来ライフ大学設立過程と問題点」という文を見て、同僚の学生たちと一緒に声を上げることになった。学校がプライム/コア事業に参加する時も、教授や学生の意見を聴かずに拙速に推進しているという批判世論があったが、今回ほど反発は強くなかった。警察力の投入がなされるまでは、掲示板は主に実業系高校出身の在職者を大学に受け入れれば「梨大の品格が下がり競争力を失う」という内容が相次いだ。

 イさんはアルバイトをしているために本館占拠座り込みには参加していないが、代わりにアルバイトで稼いだお金を座り込みのための支援金として出した。「勉強してやっと入った大学なのに、学校のレベルが低くなることは問題じゃないですか。自分の権利を守ろうとすることは当然ではないですか」。学校側が大規模な警察力まで導入して座り込み学生たちを引きずり出すと「梨大を守ろう」と言って卒業生たちまでが大挙加勢した。結局今月3日、チェ・ギョンヒ梨大総長は「未来ライフ大学設立計画を撤回する」と発表した。

■外部勢力ではなく内部勢力だけで

 梨大生はチェ総長の降服宣言を「純粋な梨花人」の“勝利”と規定した。学生たちは座り込みの初期から「政治色を帯びたいかなる外部勢力とも関係ない」と宣言した。生涯学習単科大学の設立に反対する梨大生を支持するという他大学の連帯集会も断って、政界が差し出した手も握ろうとしなかった。「梨大生が主体的に学内問題に声を上げているのに、みすみす保守マスコミのフレームにはめ込まれて他意があるように見られることを警戒した」というのが学生たちの話だ。

 「学生証」と「卒業証書」を通じて「梨花人」であることを立証した人々だけが「梨花イアン」を通じてリアルタイムで疎通し、今回の座り込みやデモを企画実行した。卒業生のパクさん(28)は「梨大出身の弁護士や記者たちが、自身の職業を明らかにして、長期座り込みに備えて法律的な相談やマスコミの報道方向などを助言する内容の文を直接残した」と明らかにした。総長の辞退を叫ぶ2回目のデモが行われた日まで、梨大生たちは自ら計10回の募金活動を行い、1億ウォン(約900万円)の“闘争支援金”を用意した。文化評論家のチェ・デソプ氏は「“単科大学事業撤回”という明確な目的を持って、外部勢力を排除するなどの戦略的選択は有効だったかも知れない」としつつも「この問題を梨大だけの問題に限定して、在学生と同窓生の力だけで自分たちの利害を貫徹させた“消費者運動”に終わった側面もある」と話した。「梨花の乱」以後に起きた東国大や仁荷大などの生涯学習単科大学設立事業撤回の声が、各自のキャンパス内でのみ響きわたっていることもこうした現象と無関係ではなく見える。

■ 「緩い民主主義」の中で排除された「少数意見」

 梨大生は生涯学習単科大学設立事業の撤回から総長辞退の主張につながった意思決定が、すべての人の意見を反映した「緩い民主主義」だと説明する。だが「生涯学習単科大学事業反対」という同じ主張をしていながら「活動家」と名指しされた学生たちを投票の結果だとして座込み場から追い出した。外部勢力介入の兆候でも見られれば「目的の達成」が難しくなるという現実的計算が反映されたのだ。今月7日、自身を「匿名の梨花人」と明らかにしたある学生は「梨花女子大の“純粋性”に関する議論は、また別の暴力と感じる」という壁新聞を貼り出した。「梨花イアン」には今回の事態と関連した自身の意見を明らかにしつつも、「問題があれば文を削除する」という“自己検閲式”の文章が上がってきている。「多数決」を振りかざした目的指向型の緩い民主主義の中で、「少数意見」は声を奪われている。

■ マスクとサングラスの後に隠れたデモ

 今回座り込みに参加した学生たちは、ほとんどがマスク、帽子、サングラスで顔を隠した。これまでの総学生会主導のデモとは違い、主導者も、代表者もいない集会ということを象徴的に示す姿だ。学生たちは占拠座り込みのすべての責任を特定の誰かではなく「皆が一緒に」担うと言う。同時に、このような姿は「梨大嫌悪」に対する被害者意識が反映された結果でもある。誰かが無断で写真を撮影し、オンラインに上げて、一部のネチズンによって身上が公開されて、ありとあらゆる非難を受けることを憂慮したためだ。ある卒業生は「ほとんどの梨大生は梨大に入学した後、ずっと梨大嫌悪を体験しているために嫌でも萎縮せざるをえない」と話した。

パク・スジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/756112.html 韓国語原文入力:2016-08-10 20:13
訳J.S(2746字)

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