その日、海の下は熱かった。英国とフランスの間のドーバー海峡を結ぶ長さ50キロのユーロトンネル内で火災が起きた。 映画『ミッションインポッシブル』にも紹介されたこのトンネル内の火災で、時速300キロで運行していた高速列車ユーロスターは運行を中断した。 2009年にはクリスマスを控えて襲った寒波と大雪で乗客数千名がトンネル内に16時間以上閉じ込められたこともある。 1994年に開通したユーロトンネルは、これまで大小の火災や寒波で運行できないことがたびたびあった。
韓国でもこのユーロトンネルより長いトンネルが来年上半期の開通を控えている。先月24日に貫通行事を行った「ユルヒョン・トンネル」(長さ50.3キロ)は、スイスのアルプスを通過するゴッタルドベース トンネル(長さ57キロ)と日本の本州～北海道を連結する青函海底トンネル(長さ54キロ)に次いで長い。 3年5カ月の工期と工事費3兆605億ウォンを投じて完工した。 ユーロトンネルから世界3位のタイトルを奪った韓国も、今後はトンネル事故に本格的に備えなければならない状況になった。
水西～平沢をつなぐ高速鉄道
世界で3番目に長いトンネル
火災などに備え、垂直脱出路17本
24人乗りエレベーターの他に階段も設置
断層帯を通過、亀裂・沈下管理が必要
ユルヒョン・トンネルは、ソウルの水西(スソ)と京畿道平沢(ピョンテク)をつなぐ首都圏高速鉄道の一部で、通伏トンネル(3.1キロ)につながる。21分間で通過する全運行区間61.1キロのうち二つのトンネルが93％を占める。盆唐(ブンダン)～水西高速道路(水西地域)と京釜(キョンブ)高速道路(東灘地域)の地下39～72メートルに掘られたトンネルの周辺は河川や住宅が密集した都心区間だ。その上、亀裂に脆弱な断層帯まで存在する。
そのためユルヒョン・トンネル内には火災が起きても待避できるよう天空を仰ぐ穴が随所にある。トンネル内には1～3キロ間隔で17個の防火扉が設けられている。トンネルの天井には列車に高圧電流を供給するケーブルが通っているので、スプリンクラーのような消火設備を備えることはできない。こうした事情のためにトンネル内には454個の消火器が置かれる。 また、トンネルの脇には非常待避空間も用意される。 防火扉を開ければ退避路が現れ、その道の終端には直径12メートルの穴があり、地上に連結される。 階段だけでなく24人乗りのエレベーターもある。
トンネル内には秒速15～20メートルで送排気する送風機が100台もある。このうち65台の「排煙送風機」はトンネル内の温度を自動感知し、外部と4度以上の差異が生じれば空気を外に排気する役割を果す。 残りの35台の「除燃送風機」は待避空間に外部の空気を吹き込む役割だ。 韓国鉄道施設公団では「トンネル内は燃えにくい電線を施工してあり、火災が起これば管制室を通じて機関士に通知するシステムを備えた」と説明した。 火災が起これば乗客は機関士の案内により退避することになる。
ユルヒョン・トンネルは、城南(ソンナム)～平沢区間の新葛(シンガル)断層帯を通過する。 火災のみならず亀裂にも備えなければならないという意味だ。 そのため公団側は、コンクリートをさらに厚く補強して、韓国トンネル地下空間学会からシンクホール・地盤沈下リスクに対する分析も受けたという。 トンネルが沈下したり傾かないように管理するのに必要な種々の計測装置も設置した。 開通すれば水西・東灘駅から監視カメラでトンネル内を監視し、外部にトンネル管制室を置く。 オ・セヨン韓国鉄道施設公団首都圏高速鉄道建設団長は「火災が起きれば近くの駅から非常列車をトンネル内に送り込み乗客を救助することもできるが、それ以前に退避路から抜け出せるものと見る」と話した。
訳J.S(1844字)
