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[インタビュー]「6月抗争」を目撃した感動が韓国とハンギョレへの愛に

登録:2015-06-08 08:23 修正:2015-06-08 08:51
ハンギョレ日本語版翻訳のボランティア活動続ける染井順三氏

 「日本にもハンギョレがなければなりません。日本人が韓国を正しく知るために必ず必要です」

 日本人の染井順三氏(64)は4日、ハンギョレ新聞社で感謝盃を受けとるとこう語り、明るく笑った。染井氏は2008年からハンギョレの記事とコンテンツを翻訳・編集し、インターネットに載せるボランティア活動を続けている。

 染井氏は昨年9月から「ハンギョレ日本語版」(japan.hani.co.kr)のニュースがポータルサイト「ヤフージャパン」にサービスされるのに大きく寄与した。ハンギョレ日本語版には独島、慰安婦、安倍晋三首相など韓日関係を扱ったコンテンツが多い。ページビュー(インターネットユーザーが特定ページに接続して開いた回数)は毎月500万~700万に達する。

染井順三氏はハンギョレ記事を日本語に翻訳するボランティア活動を続けている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

1987年6月に家族旅行中「民主化」と遭遇
鉄鋼会社IT分野が専門の“鉄の労働者”
2004年に辞表出し7年間ソウル生活
2008年ファンクラブ「ハンギョレ・サランバン」開設
昨年、「ヤフージャパン」サービス連結に寄与
「日本人が韓国を正しく知るのに必須」

 「朝鮮日報、中央日報、東亜日報といった保守メディアはすでに日本のポータルサイトを通じてニュースを提供していたけど、昨年8月までハンギョレはありませんでした。このため日本人は一方的に韓国の右派の声ばかり聞かされてきました。ハンギョレがポータルサイトにニュースを提供するようになり、多くの日本人が韓国内の別の声を聞くことになりました。韓国をもう少しバランスの取れた見解で理解することができるようになったのです」

 現在、日本の長野県松本市に住む染井氏は、毎日午後8~12時にハンギョレの記事4~6本ずつ日本語に翻訳している。最近は他の日本人ボランティアや契約職翻訳者、コピーエディターなどと仕事を分担しているが、昨年までは一人で一日10本余りの翻訳をこなす強行軍に耐え抜いてきた。

 「ハンギョレのニュースをヤフージャパンに提供してから寄せられたコメントを読むと、『政府の誤りを批判する数少ないメディア』『政府をこんなに批判して生き残れるのか』『日本の朝日新聞みたいだ』といった内容が多くありました。ハンギョレのニュースは日本市民だけでなく報道機関の記者も多く読んでいます」

 染井氏と韓国の縁は1987年の6月抗争に遡る。36歳だった当時、彼は妻と娘と息子を連れ韓国に旅行した。ソウルの明洞(ミョンドン)や南大門(ナムデムン)市場などを見物していた時にデモ隊と遭遇した。「民主化を求める巨大な叫び声は、私には大きな感動でした。街頭では多くの市民がデモ隊を応援していたのだけど、日本では想像もできない場面でした」

 その記憶がどれほど強烈だったのか、日本に戻った後、彼は韓国語を勉強し始める。2004年12月、染井氏は会社に辞職願いを出し、1カ月後の2005年1月2日、韓国を再び訪ねる。その後、高麗大学韓国語学堂で韓国語を勉強をし、昨年は聖公会大学社会学科修士課程を終えるなど、ソウル生活を続け、昨年9月に長野県に移住した。「日本でどんな仕事をしていたのか」と尋ねると、染井氏は「鉄の労働者」と言ってハハハと笑った。「民主労組の旗の下で」で始まる歌手アン・チファンの民衆歌謡「鉄の労働者」を、日本人である彼が知っていた。冗談などではない。彼は日本の鉄鋼会社の情報技術(IT)分野で仕事をしてきた。

 韓国生活を始めて3年後の2008年11月、染井氏はハンギョレのファンクラブ「ハンギョレ・サランバン(広間)」(blog.livedoor.jp/hangyoreh/)というブログを開設した。志を共にする日本人ボランティアメンバー10人余りと共にハンギョレの記事を日本語に翻訳し始めたのだ。ハンギョレ・サランバンは2012年10月に拡大改編されたハンギョレ日本語版サイトの礎石になった。

ハンギョレ新聞社のチョン・ヨンム代表理事(右)は4日午後、ソウル・麻浦区の本社社長室で2008年から「ハンギョレ・オンライン日本語版」で翻訳のボランティア活動を続けてきた染井順三氏(左)に感謝盃を渡した=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 ハンギョレのコンテンツを日本語に翻訳する際に最も大変な点は何だろうか? 「地名や名前の漢字を探すのが難しいです。同じ単語でも歴史と文化の差でそれぞれ違う使われ方をする言葉も多いです。例えば『親日派』という単語は『親米派』のようにその国が好きな人のことですよね。でも韓国で使われる親日派には歴史が入り込みます。そこで親日派の代わりに『親日に加担した人』といったように分かりやすく書く事例が多いです」

 今年は韓国と日本が国交を正常化して50周年を迎えるが、最近の韓日関係は極めて悪化している。安倍首相の右傾化も激しくなっている。これに対する染井氏の考えはどうだろうか?「日本は経済的に弱くなるとより一層右傾化されています。安倍首相が登場したのも暮らし向きが悪くなったからです。韓国と同じように日本でも非正規雇用が増え、格差が広がっています。こうした内部の不満を外部に逸らすため右傾化政策が強まっているのです」

チョン・ヒョクチュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-07 21:07

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/694642.html 訳Y.B