「周辺人物ロビーは調査可能」
端緒がなくては…標的捜査論議の憂慮も
特別捜査チームは「結論は決まっていない」
朴槿恵(パク・クネ)大統領が、ソン・ワンジョン前京南企業会長の二度にわたる赦免を「法治の毀損」と規定し「真実を明らかにしなければならない」と発言し、検察がこれをどのように受け入れるかが関心の対象になっている。 検察内部の雰囲気は朴大統領の“意志”とは相当な温度差を見せている。
朴大統領の発言は、特別赦免も捜査の主要テーマにすべきと思うというメッセージに聞こえる。だが、大統領の赦免権は憲法と法律が付与した高度な統治行為であるため、それ自体は捜査対象になりえない。 ある検察幹部は「赦免は憲法が付与した大統領の固有権限なので、その行為自体は捜査が不可能だ。(大統領を相手に)告訴・告発がなされれば法律的には却下するしかない事案だ。 政争で使われるような話を、大統領が真剣に話すとは意外だ」と話した。
ソン前会長が最初に赦免を受けた2005年の場合、2002年大統領選挙および地方選挙と関連して政治資金を提供し処罰を受けた企業家を全員赦免した。 朴大統領の発言のように、当時自由民主連合に16億ウォンを提供したソン前会長の赦免背景を捜査するには、イ・フェチャン候補側に340億ウォン、盧武鉉候補側に30億ウォンを与えたサムスングループのイ・ハクス 構造調整本部長、イ候補側にいわゆる“車単位の取引”で150億ウォンを渡したカン・ユシクLGグループ副会長、同じくイ候補側に100億ウォンを提供したキム・ドンジン現代自動車副会長らが赦免を受けた背景も同時に捜査しなければならなくなる。
もちろん赦免対象の決定過程で大統領周辺の人物が犯罪を犯したとなれば捜査対象になりうる。 赦免ロビーの代価として金を受け取れば贈収賄罪や特定犯罪加重処罰法の斡旋収賄罪が成立しうる。 だが、ソン前会長が普段から“管理”次元で政界に金を渡し、後に赦免を頼んだとすれば代価性の立証は容易でない。 2006年キム・ソクウォン前双龍(サンヨン)グループ会長側から赦免請託と共に2000万ウォンをシン・ジョンア氏が受け取った容疑で起訴されたが証拠不十分で無罪になった。
ある検察幹部は「いくら大統領が捜査しろと言っても、端緒がなければならない。 問題になった赦免時期が2005、2007年なのだから(不法行為があったとしても)公訴時効が過ぎていれば捜査は不可能だ」と話した。 授受額により公訴時効に差はあるが、基本的に贈収賄罪は7年、斡旋収賄罪は5年だ。ソン前会長が命を絶つ前に自分の口で話した“リスト8人”の疑惑立証も、その多くが難しい状況なのに、彼の話さえ存在しない状態で赦免請託の代価性を問い詰めることは一層難しいことだ。 その上、2007年の特別赦免の決定権者である盧武鉉前大統領は故人になった。
また、小さな端緒もなく漠然と“怪しい”という理由で捜査に着手することは、捜査権の乱用だ。 それ自体で標的捜査の議論を招くだけでなく、明確な犯罪端緒がないのに裁判所が捜査に必要な押収捜索令状などを発行するかも疑問だ。
検察内外ではこのような点を理由に朴大統領の真意が何なのかを巡り様々な解釈が出ている。 ある幹部は「補欠選を控えて本人の考えを明らかにしたのではないかと思う。 検察の捜査を要求したとすれば、あえて対国民メッセージにするのではなく、すぐに法務部を通じて指示すれば済むこと」と語る。
だが、大統領の発言を検察がひたすら無視することも困難という見解もある。 これに先立ちファン・ギョアン法務部長官も国民日報とのインタビューで「赦免が現段階では捜査対象ではないが(問題の有無を)調べてみられるプロセスがあるだろう」と述べている。
特別捜査チームは困り果てていると思われる。捜査チーム関係者は、朴大統領の発言に対する記者たちの質問に「今回の捜査はリストに基づく捜査だ。しかし(それに)限定された捜査ではない」と原則的な返事に終始した。 一方では「捜査対象を限定しない」と繰り返し明らかにした捜査チームが、ソン前会長の側近を調査する過程で赦免ロビーに関する陳述も集めている可能性が提起される。
訳J.S(2059字)
