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[ルポ]「国立ソウル動物園」を新たな観光名所に

登録:2015-04-18 00:29 修正:2015-04-18 08:11
ソウル大公園ビジョン報告書
ソウル動物園は1990年代以後、投資がされなかったために立ち後れた。動物園の革新方案が議論され法人や国立動物園に長期的に転換する方向が検討されている。 昨年3月、類人猿舎のオランウータンの赤ちゃんが窓の外を眺めている カン・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

▲ネチズンによる海外旅行ブログを調べました。ロンドンに行けばロンドン動物園に行き、シンガポールに行けばシンガポール動物園を訪ねています。その一方で、2013年にソウル大公園を訪問した376万人のうち外国人観光客は3万8571人にとどまりました。わずか0.78%です。 なぜでしょうか? インフラは整備されているにもかかわらず、ソウル大公園は停滞せざるをえない社会的条件がありました。 政治的影響に振り回され、予算配分から除外されていました。ソウル大公園はなぜ世界的な動物園になれなかったのでしょうか?

ソウル動物園 //ハンギョレ新聞社

■ ソウル大公園動物園(ソウル動物園)は“国立ソウル動物園”になれるだろうか?

 ソウル市関係者は17日「ソウル動物園を2018年からソウル大公園から分離して、研究・保全中心の動物園として独立的に運営した後、長期的には法人化あるいは国立化する方案を議論中」と明らかにした。 これと関連してこのような内容を盛り込んだ「ソウル大公園ビジョン報告書」が最近ソウル市に提出された。

 ソウル大公園は、ソウル動物園と周辺のテーマガーデン、キャンプ場、ソウルランド(民間運営)等からなるソウル市所有の総合テーマパークだ。 この報告書は動物園を2018年から公園管理中心の既存組織から分離して、野生動物の研究・保全機能を強化した組織に切り替え、2026年からはヨーロッパの有名動物園のように法人化したり国立動物園に切り替える日程表を提示した。 また、動物の福祉管理が厳格なことで知られる米国の動物園・水族館協会(AZA)の基準に合わせて飼育施設を改善する方案も追加された。

 ソウル動物園の法人化・国立化方案は、生態動物園および研究・保全センターへの転換など先進動物園の変化傾向にソウル動物園が大きく立ち後れたという認識から出た。 昨年、民間諮問機構により運営された「ソウル大公園革新委員会」での議論結果とソウル研究院のソウル大公園ビジョン樹立委託研究結果に基づいて作られたソウル大公園の未来の青写真は部署間調整が終わり次第、公開される予定だ。

ソウル動物園 //ハンギョレ新聞社

■ 3000ウォンの“国家代表動物園”

 ソウル動物園はいつから立ち後れたのだろうか? 1909年ソウル昌慶宮(チャンギョングン)に開園した当時、少なくともソウル動物園は当代の時代的進歩を取り入れた動物園だった。 シベリア虎、半月熊などの地元の動物はもちろん、ロンドンやパリの動物園でこそ見ることのできる“稀少動物”だったオランウータンやカンガルーを持ってきて東洋で7番目、世界で36番目に開園した。 日帝強制占領期間の植民地政策と分離して考えることはできないが、少なくとも啓蒙、近代、先端を表象し世界の主要動物園と肩を並べて出発した。 1984年に京畿道・果川(クァチョン)に移転して棲息地別に動物を展示する動物地理学的展示技法を導入するなど、先進動物園に一層近付いたが、逆説的にはその時からソウル動物園は衰退し始めた。

 2015年現在、国家代表動物園であるソウル動物園は“安い”動物園だ。入場料3000ウォン(約330円)で、2003年以後12年間凍結されている。 英国ロンドン動物園の入場料の10分の1にもならず、日本の東京にある動物園の半分をやや越える水準だ。

 16日、ハンギョレが世界の主要動物園の入場料を調べてみた。 ロンドン動物園は3万9500ウォン(24.30ポンド・現地購買価格)。 正門前で寄付金(入場料の10%)を払うかと訊かれるが、それを含めれば4万3800ウォン(27ポンド・約4800円)だ。 ロンドン動物園はロンドン市内の中心にある都心型動物園で、非営利法人ロンドン動物学協会(ZSL)が運営している。 同じく非営利法人の野生動物保全協会(WCS・旧ニューヨーク動物学協会)が運営する米国ニューヨークのブロンクス動物園は2万1700ウォン(19.95ドル・約2400円)だ。 アジアの動物園は安い方だ。 東京の上野動物園は5500ウォン(600円)でソウル動物園の二倍だ。 台湾の台北動物園は2100ウォン(60台湾ドル・約230円)で、ソウル動物園よりまだ安い。 ソウル動物園、上野動物園(1882年)、台北動物園(1914年)は全て日帝時に設置され、地方政府の予算で運営されている。

 世界的な動物園をソウル動物園と単純比較することはできない。 しかし、動物園の歴史とインフラだけについて見れば、ソウル動物園も遅れを取ってはいない。 ソウル動物園も大都市周辺にあり、外国人観光客が多く世界水準の動物園が持っている稀少動物たちもみな持っていた。 立地条件はむしろ優れている。 ソウル大公園内の動・植物園の敷地(2.42平方キロメートル)のみで比較しても、ロンドン動物園(0.15平方キロメートル),ニューヨーク ブロンクス動物園(1.07平方キロメートル)をはるかに凌いでいる。それだけ発展可能性が充分あったという話だ。

 それでは、なぜソウル動物園は世界的な動物園にならなかったのだろうか? 専門家たちはその原因として(1)京畿道にある地理的特異性(2)ソウル市の消極的予算投資(3)ソウル大公園組織の曖昧な地位を挙げる。 1983年に昌慶園から移転した後、大規模施設投資と改善が一度もなされなかったこともこれと関連がある。

 ソウル大公園の所有および運営主体はソウル市だ。 本来は京畿道果川市(クァチョンシ)莫渓洞(マッケドン)の清渓(チョンゲ)山麓だ。ソウル市民の税金で運営されるが、利用客の相当数は“散歩に来た”京畿道民だ。 その上、ソウル大公園の敷地はグリーンベルト規制に縛られている。 ソウル動物園のノ・ジョンレ園長は17日、「新しい建物を作ることもできず、作るにしても既存建物を壊して同じ規模で作らなければならない」として「大々的な動物飼育舎改善は難しい状況」と吐露した。

 毎年変わるが、ソウル大公園の年間予算は概して300億ウォン(約33億円)前後だ。 入場料、ソウルランドと各種店舗の賃貸料などで多少は稼ぐが、予算の半分以上はソウル市から支援されている。 財政自立度は50%水準だ。

 入場料を1000ウォン上げれば年間20億ウォンの追加収益が発生するとソウル大公園は予想する。 入場料の引き上げが容易でない理由は、ソウル大公園が“市営動物園”であるためだ。 運営上の現実的要求が選挙を控えた市長と市会議員の政治論理の前で後送りされる。 外国の動物園のように、企業と市民から寄付金を募ることもできない。 最高管理者であるソウル市長の選挙運動と見なされ選挙法違反になる。 ソウル市から運営費以上の予算の支援を受けることもできない。 昨年、ソウル大公園革新委に参加したある専門家は「ソウル市の所属だが果川にあり、ソウル市議会の地方区一つすらない。 このような構図では十分な予算を確保できない」と話した。 出し抜けの発表でソウル大公園を政治的に利用したことはあっても、最後まで責任を負うソウル市長はこれまでいなかった。 毎年100億ウォンずつで生態動物園に変えるという青写真が長期研究を通じて2004年に用意されたが、2006年に当時大統領選候補だった李明博(イ・ミョンバク)ソウル市長は、退任直前に放送インタビューに出演し翌年ディズニーランドを着工するとして計画を覆した。 ディズニーランドとの交渉実体は曖昧で、生態動物園はうやむやになった。 そんな風にしてソウル動物園は時代から取り残されていった。

ソウル動物園 //ハンギョレ新聞社

■ 娯楽慰労施設に進むのか、種保全センターに進むのか

 将来の展望を立てられない所有構造を指摘して、動物園をソウル大公園から“独立”させるべきだという声は昨年運営されたソウル大公園革新委で本格的に出てきた。 動物園を“非営利法人”に変えたり、さらに進んで“国立動物園”に昇格させようということだ。

 非営利法人の代表的モデルはロンドン動物学協会と野生動物保全協会だ。 それぞれロンドン動物園とブロンクス動物園を運営する二団体は、名前だけ見れば学会や市民団体のように見えるがそうではない。 動物園を運営し金を稼ぎ、動物学研究機関も兼ねている。 市民や企業からの寄付を募ったり、一部の予算は政府の支援を受ける。 そして動物園の垣根を越えて世界で野生放飼および野生動物研究、棲息地保全に加わっている。

 野生動物保全協会の2012年予算は約2426億ウォン(2億2330万ドル)だが、入場料収入と寄付金が大部分を占め、予算の10%をニューヨーク市から支援され、14%は国家課題遂行で稼いでいる。 全世界の動物園の中で最も大きな恐竜級組織を備えている。 博士級研究員が200人余り、約4000人の職員が動物園・水族館4カ所を運営し、65カ国500の地域に出かけ保全活動を繰り広げている。 ロンドン動物学協会は小さいながら強い組織だ。 年間収入は約723億ウォン(4460万ポンド・2012年)で、ソウル大公園の予算の2倍水準だ。 入場料収入が39%を占め、研究・保全事業以外の動物園運営に対しては政府の支援を受けていない。 入場料および寄付金収益の比重が高いので時代的感覚に合わせて動物園を革新しなければならない。 先進動物園は内では動物福祉を強化し、外では野生動物保全活動を行うことによって、動物を近くで見ようという欲望とは反対に、閉じ込められた動物を哀れがるという観覧客の矛盾した態度に対抗して成功的な綱渡りをしてきた。

 国内には未だ伝統ある動物学研究機関がない。 非営利法人の設置がすぐには困難ならば、似た性格の環境部傘下の法人である国立生態院に委託管理する方案も一角で議論されている。 現在、ソウル市がソウル子供大公園と付属動物園をソウル施設公団に任せたのと同じ方法だ。 忠清南道・舒川(ソチョン)に本部を置く国立生態院は、野生動植物の研究・展示・生態教育機関だ。 自然にソウル動物園の研究・保全機能を強化できる契機になりうる。米国の場合、ナショナル・アクアリウムのように運営を非営利法人に任せ、“国立”の地位を付与したりもする。

 ソウル市は所有構造を含めたソウル大公園ビジョンを近い将来発表する予定だ。 娯楽慰労施設に重きを置くのか、研究および種保全センターに重きを置くのかが、未来への経路の別れ目だ。 先進動物園が後者を中心に親環境的に変身を試みたとすれば、ソウル大公園は前者の道を歩いてきた。

ナム・ジョンヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/687397.html 韓国語原文入力:2015-04-17 20:33
訳J.S(4579字)