父親と母親は再び喪服に袖を通した。政府合同焼香所にあった子供たちの遺影を取り出し、髪の毛を剃り落した。泣き声が止まらなかった。そして、子供の遺影を胸に抱えた父親と母親は、市民らとともにソウル光化門(クァンファムン)広場に向けて重い足取りで歩み始めた。
4日午前10時30分、白い喪服で身を包んだセウォル号惨事遺族約220人は、京畿道安山(アンサン)市 檀園(タンウォン)区の花郎遊園地にあるセウォル号事故犠牲者政府合同焼香所からソウル光化門広場まで徒歩行進をした。 「セウォル号を引き揚げよ」などの文字が書かれている布や頭巾を身に着け、黄色の風船を持った市民600人も遺族の後に続いた。遺影の中の子供は笑っていたが、遺影を抱えた父親と母親は涙を流していた。
セウォル号遺族たちが、政府合同焼香所に安置されている子供の遺影を取り出して道路に出たのは今回が2回目だ。昨年5月8日、セウォル号遺族たちは子供の遺影を抱え、バスに乗ってソウル市永登浦(ヨンドンポ)区 汝矣島(ヨイド)洞にある韓国放送(KBS)社屋入り口で徹夜デモを行った。当時のキム・シゴンKBS報道局長がセウォル号の惨事を交通事故に例える発言をしたことが伝えられ、これに抗議するためだった。
徒歩行進に出る前の朝8時30分、セウォル号遺族は子供の遺影を取り出すために集まって政府合同焼香所に入った。再び子供の遺影を取り出さなければならない母親たちはティッシュで涙を拭き、父親たちは複雑な表情を隠せずにいた。遺影を祭壇から下ろす前、黙祷を捧げるために遺影の前に並んだ遺族たちは、ずらりと並んだ子供たちの笑顔を見て泣き崩れた。
葬祭関係者たちが祭壇に上って遺影を下ろすのを手伝った。遺影を胸に抱えた母親たちは、遺影の中の子供の顔を撫でては遺影を抱いて涙を流した。父親たちが母親たちを慰めた。子供の遺影を胸に抱いて嗚咽した末、倒れた母親もいた。母親たちの泣き声が高まる中、「早く救急車を呼んでください」という叫びが政府合同焼香所の中に響き渡った。
午前9時04分、子供の遺影134枚を胸に抱えた遺族220人は、記者会見を行うために政府合同焼香所の入り口に立った。激しく吹いていた風が止んでいた。檀園高校2年3組の故ユ・イェウンさんの父親であるユ・ギョングン416家族協議会執行委員長は「1泊2日の間、40キロを超える距離を徒歩行進することや足が腫れることがつらいわけではない。セウォル号惨事から1年が経っても真実が明らかになるどころか、何も変わらないこの現実が私たちを苦しめている」と述べた。
檀園高校2年7組の故チョン・チャンホ君の父親であるチョン・ミョンソン416家族協議会代表は、「政府は、真相究明ができないセウォル号特別法施行令を出しておいて、今はお金で私達家族を罵倒しようとしている。セウォル号の船体引き揚げを通じて行方不明者の遺体を確保し、徹底した真相究明を通じて大韓民国を安全な国に立て直さなければ、死んでわが子に会った時、恥ずかしくない父親と母親ではいられない」と述べた。
まだ行方不明になっている檀園高校2年2組のホ・ダユンさんの父親、ホ・フンファン(51)氏は、「私たち行方不明者の家族は、まだ昨年4月16日のまま生きており、もう1年間も愛する家族を探してほしいと叫び続けている。私は行方不明者の家族ではなく、はやく遺族になりたいのに、遺族たちがこうして遺影を持って街に出なければならない現実が嘆かわしい」と述べた。
午前9時35分、記者会見が終わると、父親10人と母親7人が政府合同焼香所の入り口で2回目の剃髪式を行った。チョン・ボンジュ元議員とパク・チン セウォル号惨事国民対策会議の共同運営委員長が遺族と一緒に剃髪に参加した。母親の長い髪がばっさり切り落とされると、後で遺影を持っていた娘が嗚咽した。今月2日にもセウォル号遺族52人がソウル光化門広場と全羅南道珍島(チンド)彭木(ペンモク)港で剃髪を行った。
この日、髪の毛を剃り落した檀園高校2年5組のパク・ソンホ君の母親は、「一体なぜ政治をしているのでしょう。辛く悲しい国民がいなくなるように、政治をするのではないですか。しかし、私たちは4月16日の痛みや苦しみを1年も経験しています。政府と政治家は私たちをもう休ませてほしい。人々が安心して生きていける大韓民国を作ってもらいたい」と訴えた。
「ちょっとキム・ジンテ議員の悪口を言わせていただきます」。徒歩行進を始める前に、2年3組の故ユ・イェウンさんの父親であるユ・ギョングン416家族協議会執行委員長がマイクを握って怒声をあげた。ユ委員長は「子供への思いを胸の内に仕舞い込むというのは、親が死ぬまで苦痛を抱えて生きることを意味する。 (キム・ジンテ議員は)何にも分からないのに、勝手なことを言ってはいけない」と声を高めた。
遺族たちの間ではキム議員を非難する声があちこちから出てきた。キム・ジンテ議員(51)(セヌリ党・江原道春川市)は2日、フェースブックに「セウォル号船体の引き揚げをやめましょう。またもや傷つく人が出るだけです。代わりに、事故海域に追悼公園を作りましょう。子供への思いは胸に収めるものです」という文を載せてセウォル号遺族から非難を浴びている。
「海の中に閉じ込められているセウォル号を引き揚げよ」、「真相究明に立ちはだかる施行令を廃棄せよ」、「遺影を前でお金取り出す侮辱を中断しろ」、「沈没する大韓民国を本気で引き揚げよ」、「行方不明者を待ちわびる家族のもとに」。 416家族協議会とセウォル号惨事国民対策委員会はこの日、歩行行進を始めながら、こう叫んだ。遺族たちと市民らは道路に沿って歩きながら、「政府施行令撤回せよ」、「セウォル号を引き揚げよ」と叫び続けた。
徒歩行進に出た遺族たちと市民らはこの日午後2時5分、京畿安山常緑(サンロク)区 釜谷(プゴク)洞の案山ハヌル公園を通り過ぎた。セウォル号の惨事で犠牲になった数十人の檀園高校生徒たちの遺骨が安置されているところだ。しかし、母親たちと父親たちは歩みを止めなかった。代わりに、安山ハヌル公園に向かって手を振り、「みんな、ごめん。お母さん、お父さんが真実を明らかにしてあげる。愛してるよ」と叫んだ。安山ハヌル公園に自分の子供がいるように見える母親たちは、辛うじて歩きながら涙を拭いた。安山ハヌル公園を過ぎると、雨が少しずつ降ってきた。
この日、京畿安山政府合同焼香所を出発した遺族たちと市民らは、翌日の5日午後5時、ソウル光化門広場に到着して、国民キャンドル文化祭を開く。京畿光明(クァンミョン)市の光明障害者総合福祉館で1泊する。
韓国語原文入力:2015-04-04 13:29