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[記者手帳] 朴槿恵大統領がリー・クアンユー元首相の葬儀に参加する理由

登録:2015-03-28 07:44 修正:2015-03-29 08:19
 マンデラ元大統領の葬儀は冷遇した朴大統領
 弔問外交の基準は単なる昔の誼
リー・クアンユー(左から2番目)元シンガポール首相が1979年に訪韓した当時、朴正煕(中央)元大統領と撮影した記念写真。左端は当時通訳をした朴槿恵大統領だ。韓国政策放送院提供 //ハンギョレ新聞社

 朴槿恵(パク・クネ)大統領が29日にシンガポールの国立シンガポール大で開かれるリー・クアンユー元首相の国葬に参加することにしました。リー元シンガポール首相に対する国内の評価が錯綜しているだけに、朴大統領の弔問外交を見つめる視覚も様々です。

 まず朴大統領が現職の首脳でもない、一国家の指導者級要人を弔問するため海外に出かけること自体、とても異例なことです。韓国の大統領が葬儀出席のため海外を訪問したのは、15年前の2000年6月に当時の金大中(キム・デジュン)大統領が日本の小渕恵三元首相の葬儀に参加したのが唯一でした。朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領が1963年11月に米国のケネディ大統領の葬儀に参加したことがありますが、当時は大統領でない国家再建最高会議議長という肩書でした。

 異例なことはまだあります。朴大統領は就任初年度の2013年12月のネルソン・マンデラ元南アフリカ共和国大統領の葬儀と、今年1月のアブドラ・ビン・アブドルアジズ サウジアラビア国王の葬儀には参加していません。当時国内では、朴大統領が二つの葬儀に参加しなかったことをめぐり、意味ある外交舞台を見逃したとする批判が少なくありませんでした。マンデラ元大統領の葬儀には91カ国首脳が参加していますが、マンデラ元大統領が成し遂げた民主主義と人権、そして和解の心に献花すること自体が、葬儀に参加した指導者とその国家の価値を示す象徴的な行為でした。サウジ国王の葬儀は最近になって朴大統領が強調する「第2の中東ブーム」を積極的に活用できる実利外交の舞台だったという点で残念なことでした。当時バラク・オバマ米国大統領はホワイトハウス参謀と前・現職幹部など30人余りの弔問団を率いてサウジ国王の葬儀に参加しています。

 こうした事情もあり、今回のリー・クアンユー元首相の葬儀に参加するという朴大統領の決定は、過去2回の弔問外交不参加と比較して解釈する他ありません。しかも政府が2回の葬儀不参加について当時、「現職大統領が海外弔問に出たケースはほとんどない」と言い逃れをしていたので、説明がより難しくなる側面もあります。

 「マンデラの葬儀を冷遇しておきならが、31年も在任したリー・クアンユーの葬儀を選んだ理由は何なんだ?」というシニカルな疑問がでてくる他ありません。広く知られているように、リー・クアンユー元首相と朴正煕元大統領、そして朴槿恵大統領との間の長い間の縁もあり、「弔問外交の選択基準は単に親密な誼?」という好ましからぬ視線もあります。その背景にあるのは結局、朴大統領の価値観がリー元首相が成し遂げた「シンガポールの豊かさ」にだけ合わされ、リー元首相の独裁と人権弾圧など暗い面からは目を逸らそうとする疑いをもってしまいます。毎年春になっても春が来た気がしない韓国の現実のなかで、大統領の指向が「豊かさを優先し反対者を徹底的に弾圧して統治したリー・クアンユー式成長モデル」に向かっていっては困ります。

ソク・ジンファン記者 //ハンギョレ新聞社

 こうした疑いと憂慮が杞憂であることを願います。しかも今回の葬儀には(まだ確定してはいないが)中国と日本の指導者級要人が参加するとの観測もあります。シンガポールと関係が良かった北朝鮮も高官で構成した弔問団を派遣する可能性が高いです。韓国が積極的に関わるASEAN国家の首脳も大挙参加します。2000年に金大中元大統領が小渕恵三元首相の葬儀に参加し、当時のビル・クリントン米大統領と森喜朗首相と略式の首脳会談を開いたように、朴大統領も今回の弔問外交を通じ、拗れるだけ拗れた北東アジア情勢を解決に導く機会にすることを願います。

ソク・ジンファン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.03.27 20:04

https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/684401.html 訳Y.B