2008年8月‘脱北女スパイ1号’として世間の耳目を集めたウォン・ジョンファ(40)氏が 「私のお父さんはスパイではない」と明らかにした。 ウォン氏は去る18日<ハンギョレ>とのインタビューで「検事の懐柔と圧迫に耐えられずにお父さんも北韓保衛部の南派スパイだと虚偽の自白をした」と語った。
ウォン氏は2008年に検察の調査で "私のお父さんは北韓保衛部要員だ。 お父さんは中国に行き来する対北韓貿易で保衛部の活動資金を用意し、私も同じく保衛部要員という事実を知っていた」という趣旨の陳述をしたことがある。 検察はウォン氏の陳述などを基にウォン氏とともに義父のキム・ドンスン(69)氏を国家保安法違反容疑(スパイ罪)で拘束起訴した。 しかし1・2審裁判所はキム・ドンスン氏に対して "スパイ活動をしたという具体的証拠がない" として無罪を宣告し、最高裁も2012年7月に無罪判決した原審を確定した。
ウォン氏は自身の父親を北韓保衛部の南派スパイだと名指ししたことについて、去る18日「検察で調査を受けた時に検事がお父さんまでが監獄に行ってこそ私の刑が軽くなると話すので、どうしようもなかった。 調査室では毎度のように酒を飲んだし、酔っぱらった状態で陳述調書に拇印を捺した」と主張した。 ウォン氏の発言は強圧的な懐柔と圧迫などで得られた陳述に依存したスパイ事件捜査が、後になってどれほど簡単に覆りうるのかを改めて示す事例と考えられる。
最近、証拠ねつ造論議をかもしているソウル市公務員スパイ事件も、被告人ユ・ウソン氏の妹の虚偽自白に依存して捜査が始まり、起訴および裁判に至った。
ユ氏事件に続き、ウォン氏事件でもねつ造が明らかになれば、2008年以後に発表された‘キム・ミファ スパイ事件’、‘金日成大学博士スパイ事件’等に対する全面的な再調査が必要だという声も出て来かねない。 ユ・ウソン氏やウォン・ジョンファ氏に対する起訴状を几帳面に覗いて見れば、弱点が簡単に出てくるように、他のスパイ事件も大きくは変わらないというのが民主社会のための弁護士会など法曹界の一部の観測だ。
一方、2008年にウォン・ジョンファ氏に対する捜査を担当したユン・某前検事は「ウォン・ジョンファの主張は全て事実ではない。 言論の関心を引くために嘘をついていると見られる」と反論した。
2008年8月、検察は‘ウォン・ジョンファ氏が偽装脱北者として韓国に潜入し、軍将校などに接近して韓国軍の情報と脱北者の情報などを北に渡すスパイであることが確認された’と発表して大きな波紋を呼んだ。 ウォン氏はスパイであることを認めて刑務所に収監された後、昨年7月に出所した。
ホ・ジェヒョン記者 catalunia@hani.co.kr