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最高裁判事のキリのような質問に…通常賃金 労使弁護人 冷や汗

登録:2013-09-10 20:45 修正:2013-09-11 06:38
最高裁公開弁論の法廷では・・・
ヤン・スンテ最高裁長官(中央)と最高裁判事が5日午後、ソウル瑞草洞(ソチョドン)の最高裁で開かれた通常賃金訴訟関連公開弁論に参加して席に座っている。 イ・ジョンア記者 leej@hani.co.kr

会社側には「経済に肯定的側面はないか?」
労働者側には「大企業職員だけの利益ではないのか?」
答弁が不十分と判断すれば厳しく批判
180席の傍聴券すぐなくなり、熱い反応

 「パク・クネ大統領はGM会長に『通常賃金問題はGMだけの問題ではなく韓国経済の持つ問題であるから、最大限解決方法を探してみる』と言いました。 これは最高裁に係留中である事件に影響を及ぼしかねない発言であって、裁判の独立性を侵害するものであり憲法上の三権分立の原則に反するものです。 (中略)経済協力開発機構(OECD)における最高の労働時間と最高の労災率が現在の大韓民国の悲しい自画像です。 1日8時間、週40時間労働が定着して人間らしい生活を送れるように期待します。」

 5日、甲乙オートテク労働者の通常賃金訴訟公開弁論が開かれたソウル瑞草洞(ソチョドン)の最高裁大法廷。 原告(労働者)側弁護人であるキム・サンウン弁護士が震える声で最終弁論を終えるや、傍聴席から拍手が起こった。 最終弁論が行なわれる間、大法廷の上に懸けられた大型画面にはパク・クネ大統領が去る5月訪米の時ダニエル・アカーソンGM会長に会った時の姿が映った。 パク大統領が当時GM会長にした発言は、通常賃金問題がもちあがる引き金の役割をしたわけだ。

 ヤン・スンテ最高裁長官は最高裁が労働者側弁護人の最終弁論予行演習の後、パク大統領の写真を使わないよう要求して弁論に干渉したという指摘(<ハンギョレ> 5日付1面)を意識したように、弁論開始に先立って「最高裁は法律的争点を扱う法律審だ。 法理を論理的に提起して裁判所を説得しなければならない。 放送で中継されることを忘れないでほしい。 格調高い法理論争を競い合う場になることを期待する」と頼みもした。

 双方の弁論と参考人陳述を終えた後、最高裁判事の鋭利な質問が続いた。 論理のスキをつく鋭い質問は弁護人に脂汗をかかせた。 通常賃金拡大がもたらす影響についてヤ

ン・スンテ最高裁長官が「(財界は)経済が萎縮するというが、税収増大など好循環的な肯定的側面もあるという意見がある」と尋ねると、被告(使用者)側弁護人は「国内は内需市場が小さくて期待し難い」と答えた。 反対に労働者側弁護人には「通常賃金の範囲を広げれば大企業の勤労者だけに恩恵が行って賃金両極化になるだけだという見解があるが」と尋ねた。 これに対し弁護人は「通常賃金問題は賃金をさらに受け取るということではなく、歪曲された長時間労働形態を変えて正常な人間的労働をして賃金を受け取ろうということだ」と答えた。

 最高裁判事は弁護人の答弁が不十分だと判断されれば厳しい批判もした。 「毎月支給する金額でなければ通常賃金に該当しないという根拠は何か」というヤン・チャンス最高裁判事の質問に使用者側弁護人が「勤労基準法上の月給制勤労者の場合、賃金は1ヶ月に一度支給されるものという認識がある」と答えるや、ヤン最高裁判事は「それは循環論理だ。 賞与金を一ヶ月に一度、あるいは2ヶ月に一度支給するのとどこが違うか」とトーンを高めた。

 質問・応答の終盤にイ・サンフン最高裁判事は「これまで出された(通常賃金関連の)最高裁判例が誤っているのか」と単刀直入に尋ねもした。 使用者側弁護人が「誤ってはいない。 多少抽象的とも見える判断基準が…」と言葉をにごすと、イ最高裁判事は「結構です」と話をさえぎった。

 社会的関心を反映したようにこの日の公開弁論が開かれる一時間前から傍聴券を受取るために市民が長い列をつくった。 180席の傍聴券はすぐになくなってしまったし、弁論は当初予定された2時間を1時間半もオーバーした午後5時30分頃終わった。

 ヤン・スンテ最高裁長官は使用者と労働者側の最終弁論が終わった後「最高裁判所としてひたすら法と原則により法的争点を慎重に検討して判断します」と言ってこの日の公開弁論を終えた。

イ・ジョングク記者 jglee@hani.co.kr

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労使公開弁論の争点

会社側「一ヶ月単位で支給されたものだけが通常賃金」
労働者側「何%支給すると定めた賞与金も該当」

 5日に開かれた最高裁全員合議体(裁判長ヤン・スンテ最高裁長官)の通常賃金事件公開弁論では、通常賃金の範囲・通常賃金に対する団体協約の効力問題などを巡って、被告人 甲乙オートテク側と原告である労働者側の立場が真っ向からぶつかった。

■ 賞与金は通常賃金か

通常賃金の概念について、被告側弁護人は「通常賃金は所定勤労の代価として、1賃金算定期間すなわち一ヶ月単位で、定期的・一律的・固定的に支給されなければならないという三要件を全て充足しなければならない」と主張した。 入社初日から延長労働手当ての計算が可能なように事前に通常賃金額が確定されなければならないが、一ヶ月を超えて支給される賞与金などまで含めれば、事後精算などの問題が生ずることになるということだ。

 被告側は賞与金も勤務成績により金額が変わる非固定的賃金であるから通常賃金ではないと主張した。 被告側はまた「賞与金には所定勤労の他に延長勤労に対する代価も含まれ、勤労奨励と功労補償、そして寄与度などの定性的要因まで全て入っている」として“所定勤労の代価”とは見難いと主張した。 会社側参考人であるパク・チスン教授(高麗(コリョ)大法学専門大学院)は「施行令や労働部例規などを見れば一ヶ月単位で支給されたものだけを通常賃金と見るのが体系的解釈に符合する」と話した。

 一方、原告側弁護人は「通常賃金は勤労基準法で週40時間と定めた法定勤労の代価として支給すると決められた賃金」として「超過勤労をしなくとも所定勤労をすればいくら、または、何%を支給するとあらかじめ決まっていれば通常賃金だ」と主張した。 原告側参考人であるキム・ホンヨン教授(成均館(ソンギュングァン)大法学専門大学院)は「年俸制もある状況で、一ヶ月単位支給に通常賃金の範囲を限定するのは無理」と述べた。

 賞与金の性格についても原告側は「1990年代以降、多くの企業の賞与金は寄与度や実績を考慮するのではなく、法定勤労の代価としてあらかじめ何%と固定されているのだから、これを通常賃金から除外することはできない」と言った。 キム教授は「褒賞や使用者の裁量により与えられる外国の賞与金と違い、今回の訴訟の賞与金はあらかじめ決まっているという点で本来の賞与金でない非真正賞与金であるから通常賃金だ」と述べた。

■ 労使合意で通常賃金から除外することができるか

被告側は「団体協約を見れば労使は通常賃金に賞与金が含まれないという認識を共有していた」として「今になって賞与金が通常賃金に含まれると主張するのは信義則違反」と話した。 企業側参考人であるパク教授も「労使が対等な地位で個別企業の実態を勘案して通常賃金を定めているならば、明白な違法性がない限りこれを尊重しなければならない」と述べた。

 原告側は「労働者は『定期賞与金も通常賃金に含まれ得る』という昨年3月の最高裁判決以前は、賞与金が通常賃金に該当するということも知らなかった。 これを知ってから、通常賃金に含めてほしいと主張しているのだ」と反論した。 労働者側参考人であるキム教授は「労働現場ではすでに定期賞与金が賃金の約20%に該当する程に基本給化した」として「労使合意という理由で例外を認めて賞与金を通常賃金から除外するならば(通常賃金の立法趣旨である)長時間勤労の抑制が不可能になる」という意見を出した。

■ 経済的波紋は

企業側は「通常賃金が拡大すれば追加労働費用が38兆ウォンを越えることになり働き口40万個が減少して新規採用も減ることになる」として「中小企業など企業の負担が30~40%増えて破産の危険がある」と主張した。

 労働者側は「そのような数値はすべての勤労者が訴訟を起こす状況を仮定するなど危険性を誇張している」として「通常賃金問題は慢性的な長時間労働問題など歪んだ状況を正常化させ、長期的に新規雇用の創出につながるなど好循環を成し遂げようということ」と話した。

ヨ・ヒョノ先任記者 yeopo@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/602385.html 韓国語原文入力:2013/09/06 08:03
訳A.K(3701字)

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