本文に移動

2人のうち1人は非正規職…どちらでしょうか? ⑤ソウルメトロ

登録:2013-08-21 01:07 修正:2013-08-21 07:26
就職しようとしたときIMF…非正規職になったのは‘遅く生まれた罪’でしょうか?
キム・ジョンタク(左側)氏はソウルメトロの正規職労働者で、ユ・ソングォン氏は外注業者所属の非正規職労働者だ。 パク・ジョンシク記者 anaki@hani.co.kr

 キム・ジョンタク(46)氏とユ・ソングォン(35)氏はソウル城東区(ソンドング)にあるソウルメトロ君子(クンジャ)車両基地で仕事をしている。 ソウルメトロはソウル地下鉄1~4号線を運営するソウル市傘下の地方公企業だ。 就職活動学生は公企業を‘夢の職場’と呼ぶが、仕事場でキム氏とユ氏の境遇は大きく違う。

 ユ氏は入社6年目の非正規職だ。 月給170万ウォンで、毎年雇用契約の更新を心配している。 30代半ばだがまだ結婚する意欲は出ない。 ユ氏は「この月給では一人で生活するのもギリギリだ」と話した。

 ユ氏より11才年上のキム氏は正規職だ。 11年前に35才だったキム氏の人生は、現在35才であるユ氏の現実とは色々な面で違った。 2002年には正規職とか非正規職とか言う人はまだ多くなかった。 非正規職が今のように量産される前だった。 当時、キム氏は入社10年目であり、貯金もある程度はしていた。 その数年前に結婚して子供ができたし、比較的安定した職場で未来を夢見ることができた。 11年という歳の差は、非正規職のユ氏と正規職のキム氏の境遇を大きく分けた。

 ユ氏の仕事は電車軽整備内の検査修理業務だ。 検査修理は車両基地に戻った車両が翌日再び運行できるよう消耗品を点検・交換する仕事だ。 数ヶ月ごとに車両を点検するのが軽整備、数年周期で車両を完全に解体し再組み立てするのが重整備だ。 2008年に軽整備業務の一部が外注業者へ渡り、昨年には検査修理業務も外注に渡された。 正規職の中にもユ氏のように検査修理業務を遂行する人がいるが、賃金と福祉面で大きな差がある。

 正規職は検査修理を比較的好む。 昼間勤務だけをする軽整備・重整備とは違い、交代勤務である検査修理をすれば時間外手当と休日勤労手当てを受け取れるためだ。 正規職のキム氏は「経歴20年基準で検査修理をする人とそうでない人の手当てに月40万ウォン程度の違いが生じる」と説明した。 これとは異なり、非正規職のユ氏は‘二日昼勤、二日夜勤、二日休業’等、正規職と同じ交代勤務をしても、別途の手当てはなく、契約された賃金を受け取るだけだ。

 ユ氏がソウルメトロの車両基地で仕事をし始めたのは5年前の2008年だ。 ソウルで生まれて育ったユ氏は、工業高等学校電子科を出て多くの職業を転々とした。 1996年、高等学校3年の時にオーディオ業者に入社したが、会社は外国為替危機のために休職届を出して軍隊に行き帰ってきたユ氏を受け入れなかった。 ユ氏は「軍に行く前には再入社が可能だと言ったが、除隊後に訪ねて行くと非正規職として入社しろと言った」と話した。

2008年に入社した非正規職のユ氏
外国為替危機後、除隊した彼には
すでに良い仕事場はなかった

1993年に入社した正規職のキム氏は
当時は非正規職が何かも知らなかった

2人の仕事は地下鉄の点検・修理
手当ては正規職だけ話
35才のユ氏にとって結婚は夢であり
毎年、雇用契約を心配している

 再入社をあきらめて、ようやく就職した大企業系列の自販機販売業者でユ氏は自己恥辱感を味わわなければならなかった。 ソウル麻浦区(マポグ)の在来市場のおばあさんに当時最新式の自販機を450万ウォンで売ったが、おばあさんは10日も経たずに返品させて欲しいと言った。 おばあさんが切に哀願したが、会社は資金面で圧迫し受け入れなかった。 彼は‘無理な営業をしている’という思いで会社を辞めた。 その後、京畿(キョンギ)広州(クァンジュ)にある食堂で肉の手入れをしたり、皮革業者で財布・ベルトを作る仕事をした。 友人とソウル南大門市場(ナムデムンシジャン)で装身具を仕入れ、仁川(インチョン)で売ったり、自動車の塗装、板金の仕事もした。 そうするうちに満30才になった2008年、ソウル地下鉄の軽整備外注業者‘プロ総合管理’に入社した。

 正規職のキム氏は、幼かりし頃に慶尚道(キョンサンド)から引っ越してきて、ずっとソウルで育った。 当時ソウル郊外だった城北区(ソンブクク)長位洞(チャンウィドン)で暮らした。 1986年、2年制専門大に入り卒業直後の93年、満26才でソウルメトロの前身であるソウル地下鉄公社に入社した。 ソウルメトロに入社した年齢で言えば、非正規職ユ氏より4年早かった。 キム氏が大学を卒業した時期は、よく言う‘3低好況’の末期だった。 当時は求人が多かった。 ソウルメトロに入社しても、こっそりとあちこちの入社試験を受ける同期たちもいた。

 キム氏はずっと君子車両基地だけで17年仕事をして、倉洞(チャンドン)車両基地で3年勤めた後、今年初め労組幹部になり再び労組事務室のある君子車両基地に戻った。 現在キム氏はソウル地下鉄労働組合の車両支部長だ。 キム氏が倉洞車両基地で会った非正規職の後輩ユ氏は、昨年君子車両基地に来ていた。 ユ氏はその間、公共輸送労働組合ソウル地下鉄非正規支部事務局長になっていた。

 同じ職場で非正規職と正規職に分かれることになった明確な理由を二人から見つけることは難しかった。 2人に、なぜ正規職になり、非正規職になったかを尋ねた。 正規職のキム氏は「私がもう少し年齢が若かったら私も非正規職になったかも知れない。 私たちの入社時にはそのような言葉自体がなかった。 この頃は若い友人の未来が暗鬱に見える」と話した。 非正規職のユ氏は「私たちを非正規職にしておけば、会社は管理責任もなく、たとえケガしたり死んでも外注先が責任を抱え込むことになる。 費用をケチるためにも非正規職は結局誤った政策の犠牲」と話した。

 2人を正規職と非正規職に分けたのは、個人の能力や資質ではなく‘歳月’だという返事だった。 キム氏が入社した1993年とユ氏が入社した2008年の間に、私たちの社会とソウルメトロにどんなことがあったのであろうか。

パク・キヨン記者 xeno@hani.co.kr

--------------------------------------------------------------------------------

"ソウルメトロ 外注下請けを直接雇用に"

正規職 兄-非正規職 弟の連帯

 ソウルメトロ君子車両基地で車両検査修理・軽整備職群の正規職は350人、重整備業務を遂行する正規職は200人余りだ。 ここではユ・ソングォン氏をはじめ検査修理・軽整備をする非正規職36人が一緒に仕事をしている。 非正規職は経済危機以後にこの職場にも出現した。

 ソウルメトロは1997年の外国為替危機の時に一度、また2008年の世界金融危機の時に一度のリストラを行なった。 金融危機の時、ソウルメトロは定員を1万128人から9150人に減らした。 1000人余りを減らす状況から出た方案が、下請け業者に外注するいわゆる‘アウトソーシング’だった。 ソウルメトロは5ヶの車両基地中4基地の軽整備を下請け業者に任せることにした。 君子車両基地は職員の一部をサービス業者‘プロ総合管理’に移す方案を選んだ。 定年58才を控えた人々を名誉退職させた後、人件費を70%に減らし、定年を61才に延長し再びこの業者を通じて間接雇用する方式だ。 会社は人件費を減らし、労働者は定年を3年増やせるようになるということだ。

 当初、会社の計画はプロ総合の定員の100%をソウルメトロから移った‘転籍者’で満たす予定だった。 だが、予想とは異なり、定員107人の内で転籍者は33人に過ぎなかった。 残りの74人は新入社員を採用するほかはなかった。 こうなってはソウルメトロが30%の人件費を支給し、残りをプロ総合管理が負担することにした当初構想は狂い、ソウルメトロが人件費の80%を負担し残りをプロ総合管理が賄う構造になった。 危機を迎えて費用を減らそうとしていた会社の計画が狂ったのだ。 2011年の公企業監査で監査院は「電車軽整備を民間委託した去る3年間、直営していた時より101億ウォンの費用が多くかかった」として、ソウルメトロに‘機関注意’措置した。 この過程でユ氏のような非正規職74人が誕生したのだ。

 ソウルメトロ非正規職労組は昨年2月17日に結成された。 現在34人が組合員だ。 プロ総合管理がスタートした2008年12月で3年が過ぎた2011年末、全職員107人中58人だけが契約を更新し、残りの49人は契約解約通知を受けた。 ユ氏もその時になって自身が1年ごとに契約を更新しなければならない非正規職であることを悟った。 正規職労組の代議員らと活動家が助言を与えた。 労働法も教えて全国民主労働組合総連盟への加盟も斡旋した。 そのようにして労組を知らなかった彼らが労組を組織した。 会社側の契約解約方針もついに撤回させた。

 正規職労組であるソウル地下鉄労働組合は‘社内非正規職の直接雇用’を今年の団体協約の主要議題に選んだ。 キム・ジョンタク ソウル地下鉄労働組合車両支部長は「ソウルメトロは今、非正規職が必要な状況ではない。 非正規職の直接雇用は2008年人件費節減を目的に実施した誤った政策を正すということに過ぎない」と話した。

パク・キヨン記者 xeno@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/600282.html 韓国語原文入力:2013/08/20 21:40
訳J.S(4027字)

関連記事