国家情報院が再び政治の‘前面’に出た。 昨年の大統領選挙介入に続き2回目だ。 検察捜査で政治関与の疑いが明らかになり、国会で国政調査が議論され改革対象に指定されているにも関わらず、臆面もなく政治の真中に飛び込んだ。 依然として真偽が曖昧な2007年南北首脳会談‘対話録’をふりかざしてだ。大統領府とセヌリ党は‘知らなかった’とか‘シナリオはなかった’と反論しているが、国家情報院が対話録を与党側にのみ無断公開した時点などを考慮すれば、国家情報院が‘情報商売’を通じて政治介入2ラウンドに入ったのではないかという分析が出てくる。
■対話録 無断公開の時点
ハン・ギボム国家情報院1次長が国会本館646号ソ・サンギ国会情報委員長(セヌリ党)の部屋に対話録原文と抜粋本を持ってきた時刻は20日の午後4時頃であった。 ソ委員長とセヌリ党情報委員4人だけが1次長を待っていた。 わずか1時間前の3時7分、ソ委員長は自身の補佐官を通じて民主党情報委幹事であるチョン・チョンレ議員側に 「午後4時に対話録を閲覧できる」という事実を知らせろと指示した。 情報委はこの間、与野党幹事の間で連絡をやりとりして会議日程などを決めてきたし、補佐官を通じる事例はなかったというのが民主党側の説明だ。 結局‘一方的通知’も同様だったという話だ。
チョン・チョンレ議員など野党側情報委員は閲覧を拒否し、与党議員だけが4時5分から40分間にわたり対話録抜粋本と原文を対照しながら閲覧した。 ソ委員長をはじめとする与党側情報委員5人は閲覧直後の4時45分頃に記者会見を行い「(盧武鉉前大統領の)NLL放棄発言があった」と主張した。
無断閲覧と公開がなされたこの日午前の状況は、国家情報院にとって非常に不利に展開していた。 与野党院内代表は6月臨時国会中に国家情報院コメント事件国政調査処理に努力するという合意を形成した。 与野党が国家情報院改革に‘直ちに’着手するという合意も併せて出てきた。 窮地に追い込まれたナム・ジェジュン国家情報院長が、世論を意識してやむをえず国家情報院の国政調査に合意したセヌリ党の閲覧要請が入ってくるやいなや、与野党合意がなければならないという既存方針を投げ捨て、対話録の無断公開に出たのではないかという推定が出てくる背景だ。
ソ・サンギ委員長は国家情報院に閲覧を要請した時期がいつなのか正確に明らかにしていない。 ソ委員長は「全般的な雰囲気が(閲覧を要請する)判断を下させた」と説明しているが、実際の要請は国家情報院が対話録原文と抜粋本をまるごと国会に持ってくるわずか一日前の19日に行われたという。国家情報院が昨年ウォン・セフン前院長の在任時期から一貫して守ってきた‘閲覧不可’原則が、わずか一日で手のひらを返すように変わったわけだ。
■主客が入れ変わった対話内容
国家情報院が持ってきた抜粋本の対話内容も、国家情報院の‘政治的意図’が積極的に反映されたものではないかという分析を産んでいる。 ソ・サンギ委員長は 「国家情報院が持ってきた抜粋本は、検察捜査当時に提出されたものとは同一本ではないだろう。 確認してみなければならないが、ページ数が増えているようだ」と話した。 NLL放棄虚偽事実流布疑惑で告発されたチョン・ムノン議員などセヌリ党議員に対する検察捜査過程で、国家情報院が提出した対話録内容は当然に‘捜査対象に限定して’NLL関連内容だけが入れられたものと推定される。すなわち、国家情報院がセヌリ党側に閲覧させた抜粋本の内容が検察に提出したものと同一である理由はないということだ。
21日<朝鮮日報>などが報道した対話録内容というものを見れば、北方境界線内容は一部に過ぎず、むしろそれとは直接関連のない米国の対北韓制裁や対米関連認識、南北首脳会談という特殊な状況が反映された対話内容が大部分だ。 大統領がNLLを放棄するほどならば、それと関連した対話内容が主とならなければならないはずだが実状はそうではなかった。 国家情報院が検察捜査の後に自分たちはもちろん現政権に不利になっている世論を‘理念論争’に引っ張り込むために直説話法として良く知られている盧武鉉大統領の発言を対話録のあちこちから都合よく切り出して貼りあわせた後に公開したのではないかという疑惑が提起される所以だ。
キム・ナムイル記者 namfic@hani.co.kr