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授与式 来なければ奨学金はない?

登録:2013-05-30 20:55 修正:2013-05-31 03:39
学校暴力の被害を受けた貧しい生徒に
青少年暴力予防財団 ・育成会、授与式出席強要
「写真も撮られるだろうに…2次被害」の憂慮
法務部が製作して配布した学校暴力予防ポスター.

「制服は着ないで、帽子をかぶって行くようにしなさいね。嫌だったら写真撮らなくてもいいから…」 

教師の言葉に生徒は無言でうなずくだけだった。 奨学金授与式に行く生徒にソウルのある中学校のS教師はとても「おめでとう」とは言えなかった。 先月16日、ソウル市衿川区(クムチョング)加山洞(カサンドン)の<青少年暴力予防財団>でこの生徒は奨学金を授与された。

 S教師は去る3月、<青少年暴力予防財団>の奨学金支援対象に生徒を推薦した。 奨学金申請案内文には、学校暴力や性暴行被害生徒の中で家庭が経済的に困難な青少年を優先的(1順位)に選抜して奨学金(120万ウォン)を支給するとあった。 学校暴力の被害を受けたこの生徒は暮らし向きが苦しかった。

 先月10日、<青少年暴力予防財団>からその子が奨学金支援対象者に選ばれたという案内メールがきた。 ただし“条件”があった。「奨学金授与式に本人が参加しなければ奨学金は支給されない」というものだった。「貧しく暴力被害者であるという事実をおおっぴらにしたい子供はいないし、写真も撮られるだろうから2次被害も憂慮される」として、S教師は「どうしても行かなければいけないのか」と<青少年暴力予防財団>に尋ねた。

 <青少年暴力予防財団>側の態度は強硬だった。 「案内文を通じてすでに知らせた通り、授与式に参加しなければ奨学金を放棄したものと見なす」と言うのだった。<青少年暴力予防財団>の案内文には「選ばれた奨学生は奨学金授与式に必ず参加しなければならない」と記されていた。 「しょうがないでしょう」奨学金が切実なその生徒は力なく言った。

 また別の中学のある生徒は奨学生に選ばれながら、授与式に参加せずに結局奨学金を受けることができなかった。 警察庁傘下団体である<韓国青少年育成会>(育成会)の永登浦(ヨンドンポ)地区会は永登浦区内の中・高校で家庭が経済的に困難な生徒を一校当たり1人ずつ選んで奨学金20万ウォンを支給したが、永登浦警察署で14日に開かれた奨学金授与式に参加した生徒たちだけが支給を受けることができた。 奨学金支給対象者67人のうち5人が授与式に参加しなかったという理由で奨学金を受けることができなかった。 授与式には対象者62人を含め、永登浦警察署長、派出所長、地域住民たちからなる学校暴力善導委員、永登浦区母親会会員など100人余りが参加した。 鋭敏な時期の青少年が大衆の視線の前に自身をさらして初めて支給を受けることができるわけだ。

 奨学金支給要件に授与式出席を掲げる理由は何か。 <青少年暴力予防財団>と育成会は共通して“誠意”を挙げた。 <青少年暴力予防財団>関係者は「奨学生が授与式に参加するのは後援者に対する配慮だ。 感謝の気持ちを持つようにという意味で参加を促している」と言った。 育成会関係者も「恩着せがましくするつもりではなく、最小限の誠意を見せてほしいという側面から生徒たちの出席を条件にあげたもの」と説明した。

 しかし、学校暴力・性暴行などの被害に遭った貧しい生徒たちに授与式参加を条件に奨学金を支給するのは奨学事業の趣旨に合わないのではないかとの指摘が出ている。 キム・ヨンジ韓国青少年政策研究院研究委員は「自分が低所得層であるという身分が露出するかと思って給食など政府支援を受けない生徒が多い。 いくら良い意図で奨学金を与えるとしても、学校暴力・性暴行・貧困などの理由で自ら露出するのを敬遠する生徒に授与式参加を強制するのはかえって人権侵害になりかねない」と指摘した。

キム・ギョンウク記者 dash@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/589607.html 韓国語原文入力:2013/05/29 21:33
訳A.K(1736字)