"疑惑のデパート" という不名誉をものともせず頑強に持ちこたえていたキム・ビョングァン国防部長官候補者が22日、世論の圧迫に耐えられず結局辞退した。 朴槿恵(パク・クネ)大統領はキム候補者の辞退意思表明から3時間後に、キム・クァンジン現国防部長官の留任を発表した。
キム候補者の自主的辞退は "イ・ドンフプ、キム・ヨンジュン、キム・ジョンフン、ファン・チョルチュ、キム・ハグィ" に続き、朴大統領が選択した高位公職者候補の6人目の落馬事例となった。 大統領業務引継ぎ委員会のチェ・テソク引継ぎ委員の突然の辞退と人選中交替させられた5人の大統領府秘書官まで入れれば、政府序盤の朴槿恵(パク・クネ)大統領による人事は実に惨めな成績をおさめたわけだ。
新政府高位職 "6人目の落馬"
手帳の中の狭い人材プールぼろぼろ
疎通と検証の基本原則無視
吹き出る疑惑にもゴリ押し
"土壇場での交替" で名分・実利 喪失
「人事システム全面改善」の声
政界では「朴大統領が人事に関して几帳面に記録したという<手帳>が<デスノート(生死を分けるリスト)>に転落した」という苦々しい評価まで出ている。 現国防長官の留任もまた、聴聞会を経なくて済む人事を選んだもので、朴大統領の持つ人材プールの限界を赤裸々に見せる象徴的事件と見ることができる。
このように繰り返される不良人選の原因としては、<手帳>に象徴される非公式的な秘密人事と業務引継ぎ委員会時代から "疎通欠如" と指摘されてきた朴大統領のコミュニケーション方式が先ず挙げられる。 大統領が指名した本人に発表前日に通知するパターンが繰り返され、 "牽制と均衡" "疎通と検証" 等、人事の基本原則が通じにくい構造となった。 責任総理制度や創造経済、確固たる安保など朴大統領がとりわけ強調する分野に該当する総理と未来創造科学部、中小企業庁、国防部の候補者が大挙落馬したのも、結局朴大統領が重要な人事を一人で決定したためという分析が出ている。
"世論の流れ" に鈍感で、一度下した決定はよほどでなくては変えようとしない朴大統領のスタイルに対する批判も強い。 キム・ビョングァン候補者に対しては世論はもちろん与党まで反対意見が圧倒的だったにもかかわらず、朴大統領は「透徹した国家観のある方」と言って終盤まで擁護し、結局報道機関と野党の追加疑惑提起に "押されて" 交替を選ぶ状況に至った。 政局転換のための "タイミング" をのがして名分と実利を全てなくしたわけだ。
人事の背景に対する説明もなく、主要候補者の落馬に対する遺憾表明もなく、さらには大統領府秘書官人事は「発表せずに官報に掲載する」という一方通行式人事スタイルも、国民には "傲慢" な姿として映っている。 朴大統領の "ワンマン人事" スタイルのために直言する参謀がおらず、 "ぼろぼろ人事" に対する責任もそっくり大統領に戻るという構造も問題として指摘される。 その上、基本的な検証を担当した民政首席と民政秘書官、公職規律秘書官などが全て検察出身であってみれば、同じ検察出身のキム・ハグィ法務部次官の事例のような "大型事故" を事前に濾過することもできなかったのだろうという "構造的問題" も提起される。
このように八方塞りの状態なので、選択された人々の面々は "能力" や "一貫性" 等を見出せないほどの水準になった。セヌリ党のある役員は「少なくともその分野で尊敬を受ける人を使うべきなのに、評価の良くない方々ばかりだ。 大統領の周りにまともな評判を伝える人がいないことが問題なようだ」と皮肉った。 キム・ドジョン明知(ミョンジ)大教授は「意固地でもメッセージがなければならないが、そういうものがない。 発表された人選の面々を見れば "偽装転入や論文盗作は絶対許さない" とか "他のことは別にしてもこれだけは確実に守った" といった人事哲学が見られない」と指摘した。
キム候補者の辞退を契機に、与野を問わず "全面的なシステム改善" を促す声が溢れている。 ムン・ヒサン民主統合党非常対策委員長は「これ以上人事の事故がおきないように大統領が約束した大統領府人事委員会によるシステム人事がなされるようにしなければならない」と話した。 セヌリ党のある重鎮議員は「今からでも(朴大統領の最側近である)ホ・テヨル秘書室長が人事委員長を務める部分を再検討すべきだ」と語った。 モク・チンヒュ国民大教授は「金大中大統領時代の中央人事委員会のような機構を作る必要がある。 色々な懸案を取りまとめるのに忙しいホ・テヨル室長より、もう少し大統領から距離があって客観性を保てる人が主導する別途の人事組織が必要だ」と助言した。
ソク・チンファン、キム・ナムイル記者 soulfat@hani.co.kr