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厳然たる韓国の地なのに、米軍憲兵 自分たちだけで銃持って巡察

原文入力:2012/07/12 20:08(4466字)

←合同巡回査察に出ている駐韓米軍憲兵と警察が9日夜、京畿(キョンギ)平沢(ピョンテク)、新場洞(シンジャンドン)の‘駐韓米軍民間人手錠事件’現場である部隊前の新場ショッピングモールを通っている。駐韓米軍と警察はこの事件以後、平日にも合同巡回査察に乗り出している。平沢(ピョンテク)/カン・チャングァン記者 chang@hani.co.kr

[ニュースの深層]  治外法権地帯‘平沢ロデオ通り’

 去る5日、京畿道(キョンギド)平沢(ピョンテク)の米軍基地(K-55)前ロデオ通りで駐韓米軍が韓国民間人3人に手錠をかけて連行する事件が起きた。 3日後ジェームズ サーマンは駐韓米軍司令官が謝ったが、普段から米軍の統制で抑えられていた地域住民たちの不満は相変わらずだ。 韓国人が人権侵害にあっても公権力が防げない所、治外法権地帯の実態を覗いて見た。

 ヤン・某(35)氏はその事件を思い出させること自体を苦しがった。「記憶していることだけで苦しいです。 当時の動画も意識的に見ないようにしています。 見れば彼ら全員を…」

 去る9日京畿道平沢市、新場洞の新場ショッピングモールの楽器商街で会ったヤン氏は怒りを抑えた。 5日夕方8時30分頃、ヤン氏は荷物を運ぶために車両2台を店の前に停めて夕食をとっていた。 これを見た米軍憲兵が 「駐・停車禁止区域なので車両をどかせ」と要求した。 ヤン氏は食事が済んだら移すといった。 言い合いの過程で米軍がヤン氏を床に倒して手錠をかけた。 市民が集まってきた。 申告を受けた警察が出動した時、米軍はすでにヤン氏を部隊側に連行した後であった。 これを阻止した市民シン・某(42)氏も米軍によって制圧され手錠をかけたまま路上にうつ伏せになっていた。

 ヤン氏とシン氏が手錠をかけられたところは‘ロデオ通り’だ。 米7空軍司令部と第51戦闘飛行団が配置された烏山(オサン)空軍基地(K-55)正門に向かい合っている。 400mほど続く道の両側には米軍と軍務員、その家族を主に相手にする飲食店、酒場、商店など350余店が入っている。

 平沢市庁は商圏活性化のために去る1996年ここを歩行者専用道路に指定した。 道のあちこちに車両進入を禁じる施設である‘ボラード’が設置された。 午前6~11時の間にだけボラードを解き車両進入を許容していた。 しかし物品を店に搬入しなければならない商人の嘆願が提起され、管理は緩かった。 一部商人は必要の都度ボラードを解き車両を店の前に入れた。

 米7空軍司令部がある烏山米空軍基地(K-55)正門に面して道の両側400mには米軍と家族を主に相手にする350余店が入っている。

 米軍はこのような状況が不満だった。 車両テロ防止を理由に掲げボラード管理権限を求めて平沢市に要求した。 平沢市がこれを受け入れて去る5月、米軍にボラードの施錠・解錠の鍵を渡した。 毎晩8時から翌日明け方1時まで米軍がロデオ通りの車両を統制することに米軍と平沢市は合意した。

 平沢市、松炭(ソンタン)出張所関係者は「人材・予算不足などで24時間ずっと(車両進入統制を)区庁で管理することは事実上難しい」と明らかにした。 この関係者は「米軍にボラード鍵を与えただけであって取り締まり権限まで与えたわけではない」 と説明した。 決まった時間外に進入しようとする車両を防げるようボラードを設置する権利を米軍に許容したが、すでに駐車している車両を取り締まる権限を与えたわけではないとの意だ。

 米軍部隊領内は韓国の主権が及ばない‘治外法権’地帯だが、部隊前のロデオ通りは厳然たる韓国領土だ。 平沢市自らが韓国領土を行き来する韓国人およびその所有車両を統制する権限を米軍に渡したわけだ。

 米軍はひとまず譲り受けた権限を拡大適用した。 去る5日夕方、駐・停車禁止区域で駐車車両を発見した米軍憲兵が韓国警察に牽引などの適切な措置を要請したとすれば今回の事件は起きなかっただろう。 米軍は平沢市と合意した権限を越えて韓国人に直接車両をどかせと要求し、これに従わないという理由で韓国人に手錠をかけて連行した。

 この日の米軍の越権は韓-米駐屯軍地位協定(SOFA)をも越えた。 ソファ規定上、米軍は危急状況で韓国人を逮捕したとしても韓国警察が要求すると同時に即時身柄を引き渡さなければならない。 事件当時、米軍は現場に到着した韓国警察官の要求を無視してシン氏を部隊に連行した。 部隊正門前では韓国警察官が見守る中で連行に抗議するヤン氏の弟(32)にまで手錠をかけた。 シン氏は 「私が米軍に引きずられて行く間、韓国警察官は何の手も使うことができなかった」と話した。 韓国警察は厳然たるSOFA規定の権限さえ行使できなかった。

 SOFA規定により米軍は部隊の外側を巡回査察できる。 しかし必ず韓国警察と同行しなければならない。 ロデオ通りの住民・商人は「平日には警察の人員が不足しているという理由で米軍憲兵だけで巡回査察している」と証言した。 去る5日夜にも規定どおり韓国警察が米軍憲兵と共に巡回査察していたならば韓国人が米軍に連行される事件は起きなかっただろう。

 ロデオ通りで露天商を営む若い女性は「ここでは韓国警察が無用の長物という認識が強い」と話した。 酒場を営むまた別の女性も「 以前に騒動が起きて警察を呼んだが警察がむしろ‘あの子(米軍)は恐ろしいから、ひとまずごめんと言え’と話してあきれた」と伝えた。

基地が治外法権であってもここは基地でもないのに、住民に手錠をかけて連行?
商人は戦々恐々、事実上の営業停止に等しい‘米軍立入禁止’処分が恐ろしいため

 事件以後、警察は米軍憲兵7人を不法逮捕の疑いで立件すると明らかにした。 一歩遅れて主権行使を公言したわけだが、<ハンギョレ>取材の結果、韓国裁判所が彼らを直接処罰することは難しいものと見られる。 米軍憲兵は基地周辺の駐・停車取り締まりを‘正当な公務執行’と主張している。 米軍の公務中に起きた事件に対しては裁判権を米国側が持つようにSOFAに規定されている。 韓国警察が米軍にどんな疑いを適用しようが、彼らの行為を‘公務’と見る場合、その裁判権を米国に譲り渡す可能性が高い。

 パクチョン・ギョンス‘駐韓米軍犯罪根絶運動本部’事務局長は「今まで米軍の公務実行中の事件に対して韓国が裁判権を行使した事例がない」として「米軍憲兵が駐・停車取り締まり業務を‘テロ予防のための正当な公務執行’と主張して、駐韓米軍首脳部が‘自主調査’を強調したことは、この事件の裁判権行使を念頭に置いたもの」と指摘した。 去る2002年、米軍装甲車に轢かれて亡くなったヒョスン・ミソンさんに対する裁判も‘公務上犯罪’という理由で米国で行われたし、事件関連の米軍人は無罪判決を受けた。

←京畿道、平沢市、新場洞の米軍基地(k-55)正門前’で去る9日、日課を終えた米軍人が市内に出るために正門を出ている。 平沢/カン・チャングァン記者 chang@hani.co.kr

 そのために韓国政府が米国に裁判権の放棄を要請し貫徹させなければならないという指摘が出ている。 民主社会のための弁護士会のクォン・ジョンホ弁護士は「重要犯罪や社会的に大きな物議をかもした事件に対しては私たちが積極的に裁判権を持ってこそ、再発防止にも役立つだろう」と説明した。

 無気力な韓国主権を‘体験的’に知っているロデオ通りの商人・住民たちは不当なことを体験しながらも米軍の顔色を伺う。 雑貨店主人オム・某(50)氏は「手錠をかけて連行したことは明確に誤りだが、今回のことでわけもなく反米感情が生じてはならない」と話した。

 米軍は‘オフ リミット’(off limit)という政策をロデオ通りに適用している。 韓国人が運営する店で暴行・売春など不法行為が起きれば米軍当局が米軍の出入りを禁止する。 米軍を主に相手にする商人の立場からはこれは事実上の‘営業停止’処分だ。

 先月末、カバンに酒を入れてクラブに入った米軍人がこれを制止する韓国人職員と争った。 米軍はこのクラブに10日間の‘オフ リミット’措置を出すといった。 米軍人どうしが踊って互いにケンカになったまた別のクラブに対しても米軍は同じように措置した。

 韓国警察を呼んでみても「あの子は恐ろしい子供たちだから、ひとまずすみませんといえ」あきれたことを言い、店には不条理ながら米軍が反対に脅迫する "I can close your bar"

 米軍は‘問題が発生した場所は危険なので米軍が出入りを制限しなければならない’という論理を前面に出す。 過去に暴行事件で‘オフ リミット’措置にあったことがある酒場主人は 「業者にも疎明機会を与えるが、形式的な手続きに過ぎない、決定は米軍の陳述に依存する」と話した。 このような事情を知っている一部米軍人は乱暴を働いても事業主に "I can close your bar"と脅迫性発言をすると商人は証言した。

 1992年当時、松炭市と米軍はこの地域の業者が衛生・医療・消防・安全など法令に反した時、米軍人の立入禁止を通知するという内容の‘オフ リミット’協約を結んだ。 米軍の不当な公権力執行という指摘が続くと1997年平沢市が米軍側に破棄を要求した。 だが、米軍は今でもこの制度を一方的に運用している。 また別の主権侵害が続いているということだ。

 現在、米軍の正確なオフ リミット適用基準は誰にも分からない。 ロデオ通りに巣を作った韓国人住民・商人の生存権はただ米軍の裁量に任されている。 平沢市、松炭出張所の集計によれば、2009年に2ヶ所、2010年に3ヶ所、昨年4ヶ所が短くて一ヶ月、長くて8ヶ月位の立入禁止措置にあった。 今年も3ヶ所が立入禁止状態だ。

 平沢参与加自治市民連帯ソン・ヒョンシク事務局長は 「ここで発生する不法行為は国内法でも十分に防げるのに、米軍が法的根拠もなしに統制を継続し、商人は異議申し出もできない状況が蔓延している」として「今からでも韓国の土地で米軍が銃器で武装して歩くことが適法なことであるとまともに問題提起しなければならない」と話した。

 ここの商人は11日、今回の事件関連対策会議を開いた。 再発防止と改善対策を要求するために米軍部隊指揮官面談を要求し、近い将来今回の事件を糾弾する集会を開くことにした。 平沢/イ・ギョンミ、キム・キソン記者 kmlee@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/542259.html 訳J.S