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保守・進歩学者 "思想検証は過度な政治攻勢"

原文入力:2012/06/06 22:15(3115字)

専門家たちがみた従北論難

ハン・ホング
朴槿恵の国家観云々した発言
朴正熙のYS議員 除名を思い起こす

パク・ミョンニム
一つの理念だけを許容する独裁
民主主義で最も危険な発想

ソン・ホグン
問題は従北ではなく資格未達
政治家、有権者に信念明らかにすべき

ユン・ピョンジュン
北に関連した立場を聞きたいのが民心
資格審査はセヌリ党が無理

 李明博大統領までが加勢した従北理念、思想検証論難に対して、学界では進歩と保守を問わず憂慮する声が多かった。 ハン・ホング、パク・ミョンニム教授など進歩指向の学者は過去の類似事例を挙げて政治的意図は成功できないことだと指摘し、ソン・ホグン、ユン・ピョンジュン教授など保守指向学者さえ "過剰" 、"過度な政治攻勢" という表現を使いながら思想検証、公安追い立てに批判的な態度を示した。

←ハン・ホング教授

■ハン・ホング聖公会(ソンゴンフェ)大教授(教養学部・韓国史)

 国家観を云々するのは明白な政治攻勢だ。国家観を問題視し議員資格を審査して除名までするということは維新体制、それも維新末期体制に戻るという話だ。

 1979年8月ソウル、麻浦区(マポグ)新民党社で座り込み中のかつら輸出会社YH貿易の女性労働者172人を強制解散させた過程で女性労働者1人が亡くなり、9月8日には朴正熙政権が裁判所をそそのかし金泳三議員の総裁職停止仮処分決定を下したが取り消された。 その一週間後の9月16日、金総裁が<ニューヨーク タイムズ>とのインタビューで米国に「朴正熙政権に対する支持撤回」を要求したため、これを反国家的言動と追い立て9月29日ついに彼を除名処分した。 半月後の10月15日から釜山・馬山(マサン)抗争が始まり、その10日後に宮井洞(クンジョンドン)の安家で起きた10・26事件で維新体制は崩壊した。 議員職除名処理後わずか一ヶ月で維新体制が終末を告げた。

 国家観を疑問に思われる人が国会議員になってはならないとし、統合進歩党議員2人を除名しなければならないと言った朴槿恵議員は肝に銘じなければならない。 朴槿恵議員こそがまさに維新それ自体を象徴する人物ではないか。 そのような彼女が彼の父親のように国会議員の国家観を問題視して除名までするということは、歴史をその時に戻すということであり、その時の悲劇を忘却した処置だ。

←パク・ミョンニム教授

■パク・ミョンニム延世(ヨンセ)大教授(政治外交学)

 セヌリ党の態度は国家の根幹を揺るがすものだ。 冷戦時代には暴力で独裁したとすれば、今は理念検証という口実の下に一つの定規だけを許容するという独裁を振るおうということだ。

 北韓に問題があるのは確実だ。 しかしこれに対する態度を根拠に選出職国会議員までも検証するということは、唯一の理念的色彩だけを許容するということだ。 これは他のどんな政治的態度とも関係がなく、理念的定規は一方だけが有効だということで、民主主義国家で最も危険な発想だ。 もちろん理念論難以前にイ・ソクキ、キム・ジェヨン議員は辞退するべきだった。 不正・不良選挙のためだ。 彼らが辞退をしなかったためにここまで事態を追い立てた。

 今の論議をこのまま放置すれば福祉・教育・民主・検察・労働などあらゆる分野の改革の動きが‘従北’と烙印を捺され封鎖されかねない。 実際、セヌリ党などはこれを暴力的に封じ込めるという発想の下にそちら側に追い込んでいるのだ。 これは盧泰愚政権以前に歴史を戻す試みに他ならない。 南北関係は‘南北関係発展法’に基づいてきたが、これを根本的に否定するということではないのか。

←ソン・ホグン教授

■ソン・ホグン ソウル大教授(社会学)

 資格審査はその用語が曖昧で問題がある。 もう少し細分化して接近する必要がある。 どんな理念でも許されなければならないことは正しい。 しかし軍人が自身の祖国が‘大韓民国’ではなく‘北韓’だと言うなら、確かに問題がある。 このような時には当事者が自身の信念や考えを明確に明らかにしなければならない必要がある。

 もちろん北韓に偏向的だとか、そんなことは可能だと考える。 国会勢力構造内にそのような勢力がいること自体も別に問題にはならない。 国会内で対応をすれば良い問題だ。 しかし先立って話したように、自身の見解が北韓に同調するのか違うのかに関するる答はしなければならない。 それを隠してはならない。

 統合進歩党は厳密に言えば、従北ではなく資格未達の問題を抱いている。 内部競選過程であった不正は選挙法違反など手続き問題として処理されなければならない。 従北とは関連のないことだ。 胸の内にある思想のために国会議員資格が未達になるという意味ではない。 思想検証をするといえば、誰が出てするだろうか? そのようにすればマッカーシズムという批判が出てきかねない。 それ以前に政治家自らが有権者に自身の信念を正直に明らかにすることが必要だ。

 北韓人権法に対する賛同有無で(民主統合党を)従北と連結させることは話にならないと見る。 実効性の問題がある。 韓国で作った人権法が北韓に実質的にどのような影響を及ぼし得るのか? 実際に作動しない法は作る必要がない。 実際、圧迫にもならない。 それは過度な政治攻勢だと考える。

←ユン・ピョンジュン教授

■ユン・ピョンジュン韓神(ハンシン)大教授(政治学)

 資格審査はセヌリ党側が無理に出ているようだ。 ところで、その裏にある民心の実体を無視してもいけない。

 イム・スギョン議員の場合、不適切な発言をした後のまともに対応できなかった。 イ・ヘチャン前総理の場合も、自身の強情でしつこい性分のためなのか党代表選挙を念頭に置いた戦略のためなのかわからないが、‘新マッカーシズム’にまで言及して現在の論難をより一層拡大させる方向で対応した。 民主党をはじめとする全野党陣営勢力が賢明な対応ができなくて、社会的論議をむしろ大きくしている。 そうするうちにセヌリ党が政治工学的に攻勢をかけ、MBまでが出たということではないのか。 その理由は民心の去就が自分たちに有利だということにあるわけだ。

 セヌリ党の対応には過剰な側面が伺える。 これはもともと単純な問題ではない。 原則的に自由民主主義体制では明快に誰が正しいとか正しくないとか分けることはできない。 良心の自由があり、誰でも異なる意見を持つことができる。 ところで問題は今の民心の実体だ。 北核や3代世襲、人権問題などに対して明確な見解を聞きたいのだ。アン・チョルス氏がそうだったように常識的なことと非常識であることを区分するのを見たいのだ。これは過去の政権が主導して理念のレッテルを貼り付けたこととは違う。そのために今の状況をマッカーシズムの延長とかアカ狩りだとは呼び難い。

 もちろんその中にはいろいろ混ざっている。 政府・与党は現実政治工学に基づいてこれを良い機会にしようと思う欲望を示す。 それで資格審査のような過剰対応をするということだ。 しかしその裏に民心という客観的実体があるということを見逃してはいけない。

チェ・ウォンヒョン、キム・ボヒョプ記者 bhkim@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/536449.html 訳J.S