原文入力:2012/01/29 09:49(3608字)
キム・ナムイル記者
公金横領 内部告発者ファン中佐は懲戒されて進級脱落
疑惑を買った准将は無嫌疑、事件終結遅延を図った少将は書面警告
<ハンギョレ21>が昨年報道した1990年以後の代表的公益申告事件36件の内、5件は‘鉄条網’で囲まれた軍に関連したものだった(869号表紙の話‘正義の人のための国はない’参照)。‘民間人’たちが匍匐前進で鉄条網を突破してもとうてい知りえない不正が階級章を投げ捨てた内部告発者などの勇気によって世の中に知られた。 軍関連情報提供者5人は全員が監獄に行ったり人事上の不利益を凄絶に味わった。 反面、不正を犯した人々は‘常勝’し、仮に軍服を脱いでも‘長駆’している。 職業軍人にとって進級は名誉であり目標だ。 多くの軍人が不正が明らかに見えてもしっかり目を瞑ってしまう所以だ。 公益情報提供関連団体は「外部監視体系が全く作動しない軍のような組織では内部告発者の保護が一層重要だ」と話した。 内部告発者は懲戒され、不正を犯した者は解放され、軍は口をしっかり閉ざす、‘だから軍隊だ’という言葉が自ずと出てきそうになる事件がここにもまたある。
2010年11月、首都防衛司令部憲兵団長であり将軍進級審査を控えたイ・某(陸軍士官学校38期)大佐の公金横領不正を書いたA4用紙5枚の匿名投書が陸軍中央捜査団長宛てに送られた。 具体的な横領時期と方法、金額などが指摘されていた。 "1億余ウォン相当の公金を横領、自身の進級ロビーのために影響力ある人物に対する贈り物および饗応接待費などとして使った" という爆発力が大きく鋭敏な内容が盛り込まれていた。 このような人が憲兵兵科長を引き受けてはならないという "忠情" のためだと情報提供者は書いた。 陸軍中央捜査団スン・ジャンネ(陸軍士官学校37期)団長はイ大佐の犯罪疑惑を調査するよりは情報提供者の探索に乗り出した。 その間にイ大佐は星を付け准将になり、スン団長に続き陸軍中央捜査団長の席を奪った。 これに対し情報提供者は翌年1月キム・クァンジン国防部長官宛てに再び投書を送った。 国防部調査本部長(少将)に進級したスン本部長は刑事処罰をする水準の事案ではないという結論を下した。 処罰を避けたイ准将は転役志願書を出した。 代わりに情報提供者探索は成果を上げた。 イ前准将の秘密資金造成指示を受けたパク・某少佐の哀訴を聞き、代わりに投書を送ったファン・某中佐が見つけられた。しかし状況が変わった。 昨年4月イ前准将の横領疑惑を軍が覆い隠そうとしたという言論報道が流れ出るやキム長官からの再調査指示が下った。 二ヶ月後、国防部検察団の捜査結果はファン中佐の情報提供内容が相当部分事実だという点を明らかにした。
兵士のパン代まで引き出した幼稚な‘将軍様’
軍検察が明らかにしたイ前准将の疑惑内容はこうだ。首都防衛司令部憲兵団長(大佐)として赴任するとすぐにイ前准将は憲兵団予算の中から‘現金化’が可能な項目を部下の実務者らに示した。さらに現金化する具体的な金額と方法まで知らせた。 ‘現金を作り出せ’と指示した項目等を見よう。 △兵士副食用パン購入費△防弾帽塗色費△事務機器維持費△厨房用品費△兵士激励金△事件処理費。小さなことこの上もない項目だが、絞れば現金が出てきた。 兵士副食用パン購入費の横領方法を見よう。 イ大佐はパンの供給業者を懇意にしている人が運営する業者に変更し、パンの価格を高く策定しておき、後からそれをバックしてもらう手法を使った。 パンの運送も業者が直接する代わりに部隊車両を利用し運賃を引き出した。部隊車両は年間60回余りパンを積み出した。 このようにして1200万ウォンが作られた。 納品業者に備品を依頼したように偽装したり、備品数を水増ししておき納品代金をバックしてもらいもした。 このようにして800万ウォンを引き出した。 名節と年末年始の警護・警備行事に動員された兵士たちに使うよう上級部隊から下された激励金の一部も中間で消えた。上級部隊から激励金を受け取ったという事実はイ大佐の他には誰も知らなかった。会計処理なしで個人用途に使ったり、一部だけを執行し残りは引き出した。このようにして1320万ウォンを横領した。 憲兵捜査官の出張旅費も引き出した。 捜査官の個人口座に入金した後に返させたり、現金で支給したかのように書類をでっち上げた。 このようにして、また1300万ウォンを取り込んだ。 2007~2008年にイ大佐は計4700万ウォン余りを横領した。 パク少佐の“上級指揮官ロビー”陳述にもかかわらず、イ前准将の進級ロビー疑惑は確認できなかったと軍検察は明らかにした。
不良捜査の責任を押し付け合う軍・民間検察
軍検察はイ前准将事件を民間検察に渡し、パク少佐らの関連者処罰は民間検察捜査が終われば一括処理することとした。 スン本部長に対しても“犯罪疑惑を認知していながら適時に捜査に着手せず依願転役で事件の早期終結を誘導した”として懲戒を依頼した。
それでは、正義はきちんと打ち立てられたのだろうか。 イ前准将はどうなったのだろうか。 軍検察から事件を譲り渡された水原(スウォン)地検城南(ソンナム)支庁は去る1月初め、イ前准将に対して‘無嫌疑 取調べ終結’した。 検察関係者は「軍検察がパク少佐の陳述を根拠に事件を移行したが、少佐の陳述が一貫していない」とその理由を説明した。「現金を作ったことまでは認定しながら、イ前准将にいくら与えたのか、金の使途がどこなのか特定できない。 一部は(軍の人事に影響力がある)予備役に上納したと言うが、それも特定できない。イ前准将を起訴するに足る証拠が不足している」ということだ。 民間検察側では「基本的に軍で発生した事件だ。我々が軍を押収捜索することもできない状況で軍検察捜査に進展がない。事件が渡された後、8ヶ月も経つのに追加証拠を送ってこない。 軍検察が事件実務者であるパク少佐も起訴出来ずにいるではないか」と不機嫌そうに語った。 それと共に「イ前准将の転役志願をなぜ受け入れたのかもいぶかしい。 今からでも軍で補完捜査をしてくればイ前准将に対して再捜査できる」と付け加えた。
軍当局は民間検察に責任を転嫁している。 国防部関係者は「イ前准将に対して民間検察が無嫌疑決定をした。横領を指示した人物が疑惑なしで終わったのにパク少佐を立件・起訴しても無意味ではないか。 パク少佐の場合、不正事実があるため彼に相当する処分を考慮している」と話した。イ前准将は完全に抜け出たわけだ。 イ前准将の‘無嫌疑放免’を事実上幇助し懲戒依頼されたスン本部長はどうなったのだろうか。 懲戒有無を尋ねると国防部は「昨年10月警告懲戒に該当する書面警告を受けた」と答えた。‘気を付けて次からうまくやれ’という書面警告を懲戒だと考える人はいない。 それすらも何の知らせもなく行われた。 スン本部長も完全に抜け出たわけだ。
ファン中佐、懲戒処分 取消訴訟 提起
後輩将校のために担がなくとも良い重い先鋒の役割を担いだファン中佐はどうなったのだろうか。 軍当局は「指揮系統と手順を踏まない進級関連投書行為で軍規と風紀を乱した」として、昨年8月ファン中佐を減給3ヶ月に処した。別の不正連座者に対する懲戒は進行されることもない状況で、進級審査対象者であるファン中佐だけが急いで懲戒委に回付された。 △指揮系統に則り正常に情報提供せず(軍人服務規律違反) △個人ノートブックで投書を作成し(セキュリティー規定違反) △他人名義で投書を送った(品位維持違反)等が懲戒理由になった。 ‘腐敗防止および国民権益委員会の設置と運営に関する法律’‘腐敗防止および内部公益申告業務訓令’等の関連法によれば、身分保障・責任減免対象に該当する項目だ。
ファン中佐は大佐進級審査から脱落した。内部公益申告者の身辺保護を規定した国防部訓令も無視された。 国民権益委員会の「公益情報提供者に該当する」という意見も無視された。 抗告したが減給3ヶ月からけん責へ懲戒強度が多少下がっただけで懲戒はそのまま維持された。 これまで数多くの内部告発者らが組織から淘汰される公式がそのままに再現された。 ファン中佐の弁護を引き受けたチェ・カンウク弁護士は去る1月中旬、大田(テジョン)地裁に懲戒処分取消訴訟を起こしたと語った。
キム・ナムイル記者 namfic@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/516449.html 訳J.S