本文に移動

韓国政治はヘイトを前にして何をしてきたのか【寄稿】

政治家は何を言っても特に責任を取らない中、なぜ高校生だけが「試合妨害」を理由に重く懲戒されなければならないのかと抗議されたら、何と答えられるだろうか。このような応援行為そのものは厳罰に処すべきだが、この問題に責任を問う準備ができていなかったことは冷静に認めるべきだ。 
 
ホン・ソンス|淑明女子大学法学部教授
国民の力のイ・ジンスク議員が先月4日、自身のフェイスブックに投稿した自身の写真。右は先月5日に投稿されたソウルの培材高校を応援する花輪=イ議員のフェイスブックより//ハンギョレ新聞社

 培材高校野球部による5・18(光州民主化運動)嘲笑の応援騒動から1カ月たった。先日には、懲戒が6カ月から1カ月に短縮されたというニュースも聞いた。当時、どれほど多くの人が激しい怒りを表出したか、誰もが覚えているはずだ。政界もすぐにでも何かするかのように反応したが、1カ月が過ぎた今は静かだ。

 そもそもこの問題は「懲戒」に集中すべきではなかった。大韓野球ソフトボール協会スポーツ公正委員会は、事件発生から3日で6カ月の出場停止処分を下した。しかし懲戒の理由は、「試合妨害」という当惑するものだった。この事案の本質に合致する懲戒理由ではなかったのだ。主導した生徒を区別したわけでもなく、コーチングスタッフや学校の責任を問いただしたわけでもなく、「チーム」に対する最高レベルの懲戒を下したのだ。

 公平性の面からも考える余地がある。2019年に自由韓国党のイ・ジョンミョン、キム・スンレの両議員は5・18公聴会を開催し、その場では「暴動が民主化運動になったもの」との発言もあった。彼らはどのような処分を受けたのか。イ・ジョンミョン議員は除名が決定されたものの、議員総会への回付が延期されたため1年間も党の役職を維持し、無所属を経て復党した。キム・スンレ議員は党員権が3カ月停止されたが、懲戒が終わるやいなや最高委員に復帰した。祝辞を述べたキム・ジンテ議員は、警告処分を受けてからも国会議員の公認を受け、後に江原道知事となった。2020年の5・18歪曲処罰法の成立後、何人かの国会議員が告発されたものの、実際に処罰された例はなく、国会レベルで懲戒された例もない。今回の培才高校事件でも、イ・ジンスク議員が「培才高校の生徒たちを支持します」という花輪を贈ったが、特に措置は取られていない。規制合理化委員会のイ・ビョンテ副委員長が「5・18は聖域なのか?」と発言した後に辞任したのが、何がしかの「責任を取った」唯一のケースだ。このように政治家は何を言っても特に責任を取らない中、なぜ高校生だけが「試合妨害」を理由に重く懲戒されなければならないのかと抗議されたら、何と答えられるだろうか。このような応援行為そのものは厳罰に処すべきだが、この問題に責任を問う準備ができていなかったことは冷静に認めるべきだ。

 何より、嫌悪(ヘイト)と差別はなぜ懲戒されるべきなのか、その「理由」を明らかにすることが重要だ。これを機に懲戒規定を整備するとともに、再発防止のために多角的な対策を講じるべきだ。教育部、各市道の教育庁、大韓体育会、各種目の協会、学園スポーツ団がやるべきことは山ほどある。政界はその裏付けとなる法的根拠を整備するとともに、立法的、行政的な支援方法を模索すべきだ。しかし、ある瞬間から培材高校事件は大衆の関心から急速に消え去り、優先順位が下がった。

 野党は今回の事態の意味を過小評価した末、こっそり手を引いてしまい、与党は民生や国政の懸案を後回しにして意味不明な内部の政争ばかりに没頭している。スターバックス事件や培材高校事件でのあの熱い怒りは、影も形もなくなってしまった。ヘイトと差別に対する私たちの対応は、いつもこのようなものだった。昨日今日にはじまったことではない。2013年の衝撃的な「イルベ」事件、2014年のセウォル号遺族の前での爆食座り込みなど、絶え間なく衝撃的な事件が起き続けてきたが、その時だけで、粘り強く制度的な対策を整備したことはない。最近では、反中デモの激化に対して大統領までもが対策を講じるよう指示したが、目に見える措置は何も取られていない。

 政界が無関心だっただけで、韓国社会全体が手をこまねいていたわけでは決してない。問題が起きると「メディアが問題だ」、「教育が問題だ」などと叫ばれるが、実際にはメディアと教育はヘイト問題に対してそれなりに役割を果たしてきた。ヘイト問題を企画・特集記事にしていない主要メディアを見つけるのは難しい。粘り強く追跡報道を続けてきた記者も多い。学校現場には、子どもたちの間に浸透しているヘイト文化の深刻さを認識し、自分たちなりの教育的対応を真剣に模索している教師が少なくない。根拠となる適切な法規もなく、政界の関心や支援もない劣悪な環境の中で、現場はヘイトとの孤独な闘いを黙々と繰り広げてきたのだ。そのような中でメディアや教育のせいにするのは、無責任すぎるのではないか。

 何か事件が起きると先を争って怒りを表出した末、まるで何事もなかったかのように冷めるということを繰り返して、もう15年になる。スターバックス事件や培材高校事件もまた、例のあの虚しい轍(てつ)を踏んでいる。一時的な怒りが熱いだけで、ヘイトと差別に対する国家レベルの法的・制度的対応は相変わらず無防備だ。今こそ、この時代的要求に政界はこたえるべきだ。

//ハンギョレ新聞社

ホン・ソンス|淑明女子大学法学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1271431.html韓国語原文入力:2026-08-05 05:00
訳D.K

関連記事