培材高校野球部の「スタバ行こう」騒動を見て、15年前の秋にポーランドのアウシュビッツ収容所を訪ねた時のことを思い出した。霧が立ち込めていたため、余計に寂しく感じられる日だった。「働けば自由になれる(ARBEIT MACHT FREI)」という悪名高きスローガンが入口で来訪者を迎えた。赤いレンガの建物を単純かつ整然と配置しているのは、多分にドイツ的だった。
外見はどうあれ、中では人類史上最大かつ最悪の虐殺を雄弁に物語る地獄のような光景が広がっている予感がした。期待は簡単には満たされなかった。多くは、骨と皮だけになって誰もが似たように見える収容者たちの写真や、彼らの生活についての説明などだ。白黒写真だからリアリティーはより落ちる。怒りを誘う表現も見つからなかった。
しかし、アウシュビッツは決して虚名ではなかった。そこには蒸発させられてしまった人々が残した物たちがあった。各部屋の壁から少し離れた場所には、天井までガラスの壁を設置して空間が作られ、持ち主のいない品々で埋め尽くされていた。カバン、眼鏡、義足など、数千人か数万人かさえも見当がつかないものたちが、種類ごとにいっぱいだった。その中の一室に積み重ねられた遺品は、人間性に対する揺るぎない幻滅を私に抱かせた。子どもの靴だった。子どもたちはそれを履いてよちよち歩いたり、ぴょんぴょん跳ねたりして、親に抱きついたことだろう。数千足の靴は、その持ち主が実在していたことをはっきりと語っていた。その強烈な記憶のせいか、私は時が来たら一緒に墓に入れてもらおうと思い、自分の子どもが幼い頃はいていた靴を1足保管している。
果たして、神がいて人類を裁くとしたら、これこそが理由だと思いながら展示室を出ると、もうひとつの超現実的な光景が目に入った。高校生と思われる若者たちが遊園地にでもやって来たかのように笑ったり、騒いだり、ふざけたりしながら移動していたのだ。奇しくもドイツ語を使っていた。いくら幼いとはいえ、あれほどとは。引率の教師と思われる人物は、我関せずといった態度で歩いていた。
「スターバックス騒動」は、分別なき人々の行進が古今東西を問わないことを再認識させてくれた。なぜある種の人々は、人の苦しみに憐憫(れんびん)を感じないだけでなく、それを遊戯の手段にまでするのか。それを問うのは、少々複雑な問題だ。
いま重要なのは、培材高校野球部の生徒たちが反省していると言ったことだ。本気かどうかをどうやって見分けるのか、と思うだろうか。首を垂れた生徒の一部は、心の奥では完全には承服していないかもしれない。学校で反省文を書かされた経験があれば分かるはずだ。反省文は本来、徹底して心から反省が湧き上がって書くことはあまり多くない。大切なのは、表面的にでも反省するということだ。そのような行為は非難されるべきだと社会が指摘し、生徒たち自身もそうだと言った。共同体には越えてはならない一線があり、誰かがまたそのようなことをすれば見過ごすことはできないということを、はっきりさせた。刑罰論ではこのことを、一般予防効果と呼ぶ。刑罰によって他の潜在的な犯罪者に警告し、犯罪を予防するということだ。そのような効果もあったと判断されるため、今回の件は終結させた方がよい。
しかし、10代の少年たちよりも分別のないように思える政治家たちは、どうすればよいのか。肝心の本人たちは間違っていたと言っているのに、保守野党「国民の力」の一部の議員は「表現の自由」をうんぬんしつつ、加害者を応援する態度すら取っている。イ・ジンスク議員は「李在明(イ・ジェミョン)政権は、思考にも『手錠』をかけるつもりか」と言い、加害者を被害者化しようとまでした。こじつけであり、ハリウッドのアクションだ。表現の自由とは、基本的に検閲や処罰などの権力の抑圧に対する概念だ。今回の件は、被害者側に対する嘲笑が社会的に指弾され、民間機関が懲戒したものだ。表現の自由が侵害されるもなにもなかった。
ドイツではホロコーストの被害者を嘲笑するだけで刑務所行きになりうる。分別なき者たちには、そういった場所に行って思う存分表現の自由をおう歌しながら論争してみることを勧めたい。憲法機関だという国会の議員が反憲法的な言動を擁護しても無事でいられるのだから、韓国の方が自由な国だと喜ぶべきなのだろうか。国民の力のチャン・ドンヒョク代表は、その大好きな表現の自由を強調するために「ジェミョンよ、高校生ではなく私と戦おう」と言い、低俗な遊戯にはまっているようだ。「コーヒー1杯の自由」を強調していた彼は、アウシュビッツでげらげらと笑い声をあげる高校生たちを叱ったら、「表情の自由」の侵害だと難癖をつけるかもしれない。
培材高校野球部の6カ月出場停止処分は、もう解除してはどうか。代わりに、分別なく振る舞う人々は6カ月間の議員職停止処分にしてもらいたい。
イ・ボニョン|全国部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )