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解放の日から1年…米国は再び偉大になったのか【寄稿】

登録:2026-04-03 01:15 修正:2026-04-03 08:57
チャン・ヨンウク|対外経済政策研究院 研究委員
自身が「解放の日」と名付けた2025年4月2日、米国のトランプ大統領が全世界に対して高率の関税を課すことを発表している。米国際貿易裁判所は5月28日、トランプ大統領の高率関税の課税命令を無効とした/AFP・聯合ニュース

 ちょうど1年前、米国のトランプ大統領はホワイトハウスのローズガーデンで「米国解放の日」を宣言した。トランプの表現を借りれば、米国はこれまで「仲間と敵に略奪され、たかられて」きた。これを正し、米国を再び偉大にするためにトランプが切ったカードは、相互関税だった。同盟国はもちろん、地図で見つけるのも難しい島国にまで関税を課した。そして1年たった今、果たしてトランプの解放は実現したのだろうか。

 いくつかの経済指標を見ると、米国は何とか善戦してきた。2025年の米国の経済成長率は2.1%で、先進国の中で最も高い水準に属する。株式市場は一時的に動揺したものの上昇に転じ、現在は主な株価指数が1年前に比べて10~20%高い。インフレ率も1年間大きく上がることはなく、2%台中盤で安定している。失業率も4%台と低水準を保っている。トランプが約束した偉大な米国になったかまでは分からないが、多くの経済学者が予想した経済危機は現実のものとはなっていない。

 もちろん、これらの指標がトランプ式の関税の課税を正当化するわけではない。まず、トランプの脅しとは裏腹に、実際に課された関税率はそれほど高くない。経済学者でハーバード大学教授のギータ・ゴピナートの研究によれば、解放の日のころに32.5%で最高に達した法定関税率はその後、交渉や調整を経て25%ほどにまで低下した。また、各種の猶予や免除、例外条項があるため、実際の関税率は14%ほどにすぎない。さらに、今年2月の米最高裁判決で相互関税が無効となり、より低い関税に置き換えられたことで、関税率は5~8%ほどにまで低下した。関税を負担したのはほとんどが米国の輸入業者と消費者だが、幸か不幸か、関税の規模は経済に甚大な影響を与えるほどではなかった。

 それでもトランプ就任前より関税率が上がったのは事実だが、関税の課税が意図されていたほどの効果をあげたかどうかは不明だ。解放の日にトランプは貿易赤字の解消、国家財政の収入確保、製造業の保護を関税課税の目的として掲げた。しかし、2025年の米国の貿易収支は1兆2400億ドルの赤字となり、2024年(1兆2150億ドル)から逆にやや増加。関税収入は前年から2000億ドル以上増加し、国家財政にある程度貢献したが、相互関税無効判決により、そのかなりの額を返還しなければならなくなっている。さらに、大規模な減税政策によって他の税収が減少したうえ、戦争によって支出が増加したため、財政赤字の解消は遠のいた。製造業の保護も実現されていない。人工知能(AI)による代替で労働需要が縮小し、移民の追放で供給も減少したことで、製造業の雇用は解放の日以降、減少し続けてきた。関税の影響で中間財の輸入価格が上昇し、製造業の生産も打撃を受けた。

 米国経済が何とか善戦できたのは、関税ではなく米国の持つ構造的な強みのおかげだ。米国はAI、バイオ、エネルギーなどの主要産業で主導権を握っていること、ドルを基盤とするグローバル金融市場で優位にあることで、投資の呼び込みや株価防衛で有利な立場にある。世界最大の経済大国としての強い購買力は、貿易相手国による輸出先の変更を難しくしている。トランプは同意しないだろうが、彼の気まぐれな政策から米国経済を守ったのは、米国が築いてきた世界経済秩序だ。

 問題は、トランプがこの秩序を破壊していることだ。経済力と軍事力を武器として、欲しいものを手に入れるため、体制ライバル国はもちろん同盟国すらも随時圧迫し、参謀たちと協議したのかも疑わしい政策をソーシャルメディアに軽く書き込んだかと思えばすぐに撤回し、経済と安全保障の主要問題を同盟国と調整することもなしに無理に推し進め、頻繁に逆風にさらされる。彼の一言一言で世界の金融市場が揺らぐが、トランプの周囲の誰かがもうけたという信じがたい話も聞こえてくる。米国に対する信頼が低下するにつれ、主な貿易相手国は代わりの貿易相手を探し始めている。米国が自ら招いている「米国なき世界経済」は、決して米国に有利に働くものではない。

 解放の日から1年たったが、米国が再び偉大になったという証拠は見出しがたい。むしろ、過去の栄光が危機にある米国の胸ぐらをつかんで引きずり回しているようにみえる。グローバリゼーションの副作用の是正から中東の平和維持に至るまで、米国が単独で担える課題は存在しない。真の解放は孤立ではなくつながりから生まれるということこそ、解放の日から1年が過ぎた今、米国が世界に示している教訓ではなかろうか。

//ハンギョレ新聞社

チャン・ヨンウク|対外経済政策研究院 研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1252260.html韓国語原文入力:2026-04-02 05:01
訳D.K

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