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ワーグナーと日帝強占期の親日音楽家たち【コラム】=韓国

登録:2025-12-17 03:03 修正:2025-12-17 07:48
//ハンギョレ新聞社

 ヒトラーはオペラ『ローエングリン』を観て一目で魅了された。わずか12歳でのことだった。ワーグナー崇拝の始まりだった。後にワーグナーをフリードリヒ大王に例え、「ドイツ国民を導いた偉大な英雄」と持ち上げた。ナチスにとっても、ワーグナーの音楽は単なるバックミュージックではなかった。重要な式典のたびに雄大なワーグナーの旋律を響かせ、扇動の道具として活用した。ヒトラーはオペラ『トリスタンとイゾルデ』をワーグナーの音楽の最高峰に選んだが、皮肉なことにこの傑作が、ワーグナーがパトロンの妻であるマティルデ・ベーゼンドンクと交わした「禁じられた愛」から生まれたという事実は、逆説的だと言える。

 2001年7月、エルサレムで『トリスタンとイゾルデ』の第1幕の前奏曲が鳴り響いた。ホロコーストの生存者がいるイスラエルでは、ワーグナーの演奏はタブーだ。客席では「恥だ」という抗議とスタンディングオベーションが入り交じり、騒動に発展した。当時、アンコールでこの曲を演奏した指揮者のダニエル・バレンボイムは、ユダヤ人であるにもかかわらず、ワーグナーを禁止する風潮と闘っていた。「作曲家ワーグナー」と「反ユダヤ主義者ワーグナー」は切り離すべきであり、ワーグナーの音楽はホロコーストの原因にはなりえないという論理だった。

 最近、韓国国立オペラ団が『トリスタンとイゾルデ』の全幕を韓国で初演した。昨年の『タンホイザー』の原語版での初演に続き、来年には『ニーベルングの指輪』4部作の『ラインの黄金』を上演するというのだから、まさに「ワーグナー全盛時代」だ。ナチスのトラウマがない韓国社会では、ワーグナーに対する拒否感は少ないほうだ。それどころか、2000年代以降にはワーグナーの音楽の魔力が広がり、「ワーグネリアン」(ワーグナー崇拝者)ブームまで沸き起こった。

 しかし、視線を内部に向けると、韓国もまたイスラエルに劣らぬジレンマに直面していることに気づかされる。すなわち、安益泰(アン・イクテ、1906~1965)や洪蘭坡(ホン・ナンパ、1898~1941)など、積極的な親日行為が明白な音楽家に対する評価の問題だ。ワーグナーを演奏することがヒトラーに対する敗北ではないように、親日音楽家の曲を歌ったとしても、ただちに植民地支配に対する屈服とはならないだろう。しかし、彼らの芸術的成果を認めることと、歴史的過ちを黙認することの間の綱渡りは、バレンボイムの抗弁よりはるかに危ういことだ。イスラエルではワーグナーの音楽は拒否すれば済む話だが、親日音楽家が残した「愛国歌」(韓国国歌)や「故郷の春」は、韓国人の情緒的遺伝子に深く刻み込まれており、除去することは難しい。芸術を道徳の物差しだけで断罪するわけにはいかないが、不都合な真実をただ覆い隠しておくわけにもいかない。芸術と歴史を同時に凝視する成熟した視線を持つとき、芸術を芸術として完全に受け入れることが可能になるだろう。

イム・ソクキュ|文化部記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1234878.html韓国語原文入力:2025-12-16 18:46
訳M.S

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