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集団的自衛権と逆さの地図【コラム】

登録:2025-11-27 09:11 修正:2025-11-29 06:47
チョ・ギウォン|国際部長
在韓米軍が2025年から内部教育用に使用している上下逆さまの東アジアの地図=在韓米軍提供//ハンギョレ新聞社

 2014年4月27日、米ニューヨークで米日両国の外交・国防相は安全保障協議委員会を開催し、新たな「米日防衛協力のための指針(ガイドライン)」に合意した。ガイドラインは、第2次世界大戦での敗戦後、戦力保有の禁止と戦争放棄を規定した平和憲法の制約下に置かれている日本が、事実上戦争のできる国へと踏み出す道を開いた。最近の中国と日本との対立でよく耳にする言葉で、日本が直接攻撃を受けなくても自衛権を行使できるとする「集団的自衛権」に関する内容も、ガイドラインには登場する。

 ガイドラインは、「日本以外の国に対する武力攻撃への対処」で、「自衛隊は、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に対処」するとしている。

 新たなガイドラインの合意から3カ月後の2014年7月1日、安倍晋三首相(当時)は、平和憲法上許されないとされていた集団的自衛権の行使は可能だとする憲法解釈の変更を閣議決定した。閣議決定は「(技術発展など)現在の安全保障環境に照らして慎重に検討した結果、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ」た場合、「必要最小限の実力を行使することは…憲法上許容される」と述べている。安倍政権はその後、集団的自衛権の行使が可能ないくつかの例を提示している。邦人輸送中の米輸送艦の防護、武力攻撃を受けている米艦の防護、弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護、米本土が武力攻撃を受けた際に日本近隣で作戦を行う米艦の防護、米国に向け日本上空を横切る弾道ミサイルの迎撃、国際的な機雷掃海活動への参加、民間船舶の国際共同護衛などだ。安倍政権は翌年の2015年、憲法解釈の変更を実質的に後押しする安保法制の制定および改正を、野党と市民社会の激しい反対にもかかわらず断行した。

 このように集団的自衛権の行使は、米日同盟のグローバル化の主要な要素として議論されてきた。ただ、日本政府は集団的自衛権を具体的にどのような場合に行使できるかについては曖昧にしてきた。集団的自衛権の行使を可能にした安倍元首相は、退任後の2021年12月、台湾のシンクタンクが主催したオンライン講演で、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と本音をあらわにしたが、首相在任中は曖昧にしていた。

 高市早苗首相は今月7日の衆議院予算委員会で、台湾に対する武力攻撃が発生し、海上封鎖を解除するために米軍が来援し、封鎖を阻止するために武力衝突が起きるケースについて述べてから、「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケース」だと述べた。高市首相はそれ以上具体的なことは語らなかったが、台湾をめぐって米中が衝突した際に自衛隊は米軍を支援できるということを述べたもの、と解釈しうる。

 中国としても念頭に置いていたシナリオだろうが、台湾有事に直接言及したという点で一線を越えたと判断して日本に激しい攻勢をかけており、米国は日本への支持を直ちに表明している。

 日本のメディアによると、高市政権が来年の早期実現を目論んでいる安保3文書改正の際、「核兵器を作らず、持たず、持ち込ませず」の「非核3原則」を変更しようという議論も聞こえてくるという。対中国抑止を前提に、核ミサイルを搭載した米軍の原子力潜水艦の日本への寄港の容認などを念頭に置いたものとみられる。

 高市首相の台湾有事発言で火がついた中日対立の背景には、発展した米日同盟と中国の対立がある。そしてこの対立は、米国のもう一つの北東アジアの同盟国である韓国にも不安な影を落としている。今月17日、在韓米軍のブランソン司令官(陸軍大将)が、内部教育用に使っていた「東が上になっている地図(east-up map)」をウェブサイトで公開した。朝鮮半島がもはや「北朝鮮抑止の前進基地」ではなく、台湾海峡をも包括する場所であるという米国の見解を、積極的にあらわにしたのだ。

//ハンギョレ新聞社

チョ・ギウォン|国際部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1231007.html韓国語原文入力:2025-11-24 18:49
訳D.K

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