尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は22日、釜山を訪れ「様々な困難な状況があるが、業として捉え、国と国民のために右顧左眄(うこさべん)せずに石を投げられても前に進む」と述べた。与党「国民の力」のハン・ドンフン代表との成果のない会合の後、公開発言を通じて「わが道を行く」と宣言したのだ。国民と呼吸を合わせて国政を率いるべき大統領が、むしろ国民に対し宣戦布告をしたも同然だ。
尹大統領が言及した「厳しい状況」と「業」は、夫人のキム・ゴンヒ女史に対する疑惑とこれに対する批判の声を指すものとみられる。キム女史が関与した疑惑が連日暴露される中、一方では検察をはじめとする国家機関が先を争って「免罪符」を与えており、これに憤る世論が沸騰している。また、経済、安保、暮らしの問題など、どれ一つとして安定したものがない。大統領の支持率が20%台前半(韓国ギャラップ基準)にとどまるなど、国政運営の動力が失われているにもかかわらず、問題意識がまったく見当たらない。にもかかわらず、すべての指摘を無視し、「国と国民のために」「石を投げられても前に進む」と言っているが、それのどこが「国と国民」のためなのか。「キム・ゴンヒ女史」のためではないのか。
尹大統領はハン代表が要求した「(キム)女史ライン」の人的刷新▽キム女史の対外活動中止▽キム女史の疑惑解消への協力などを全て断った後、「これ見よがしに」チュ・ギョンホ院内代表を呼んだ。議員たちの手にかかっているキム・ゴンヒ特検法と特別監察官の推薦などを取り締まり、政権党のパートナーはハン代表ではなく、チュ院内代表だと公表したわけだ。それから1日後、「石を投げられても前に進む」と発言した。殉教者にでもなったつもりのようだ。キム女史問題に対する国民の順当な批判を「石を投げる」と表現し貶したのだ。
尹大統領の任期の折り返し時点が来月に迫ったが、何を成果として掲げられるかは分からない。国民の不安を引き起こす医療界と政府の対立が長期化しているにもかかわらず手をこまねいてばかりで、自ら打ち出した4大改革の推進も姿を消した。キム女史の疑惑が堰を切ったようにあふれているにもかかわらず、「証拠を持って来い」と逆に怒鳴りつけている。国政が漂流しようが、誰に何と言われようが、ひたすら妻を守れるならそれでよしということなのか。最近高まっている安保危機も「政権の保衛用」として利用しようとしているのではないかという疑念を抱いている国民も多い。尹大統領にこれ以上何も期待していないという国民が増えている。尹大統領はなぜ大統領になろうとしたのか。ただ大統領の座を守り、できるだけ権力を享受することが目的なのか。民意とかけ離れた尹大統領の非理性的な行動が国を危機に追い込んでいる。