米国の大統領選挙が終わったら、ウクライナ戦争を終わらせようという議論が急速に進みそうだ。米国がウクライナ戦争を支援することに極度に懐疑的なドナルド・トランプ前大統領が政権に返り咲く可能性が高いからだ。演説途中に暗殺の危機に陥り、辛うじて命拾いした直後、彼の大統領選挙での勝利の確率は60%を超えた。彼はすでに「大統領に再選されればロシアと妥協して戦争を24時間以内に終わらせる」と公言している。
トランプ前大統領の終戦案がいかなるものなのかはまだ分からない。ロシアとの妥協に言及したという点で、ウクライナにとって好ましくない方向へと流れる可能性が高い。米メディアは、軍事的支援を餌として、ロシアに占領された領土をウクライナに放棄させる方向へと終戦交渉を導いていくよう圧力をかけるとみられる。ウクライナの立場からすると、領土の20%を奪われることを強いられるわけだ。ウクライナは断固拒否するだろうし、欧州の同盟諸国も反発するだろう。誰であろうと、3年も続いた戦争をたった一日で終わらせることはできない。
ウクライナ戦争は結局のところ「朝鮮半島式休戦協定」によって凍結されるだろうとの見方も強い。ウクライナは勝てず、ロシアは負けられない戦争が続いているからだ。軍事専門家たちは、今のウクライナの戦況は停戦交渉直前の朝鮮半島の状況と似ていると指摘する。両国ともにおびただしい数の死傷者を出しているが、どちらも圧倒的な勝機はつかめていない。朝鮮戦争でも最初の1年間は劇的に前進と後退が繰り返されたが、その後はこう着した戦線を挟んで消耗する交戦が続いた。
休戦協定は本来、戦勝国と敗戦国との間で臨時に取られる軍事的措置だった。勝敗が明確になった際に、交戦をやめることで戦勝国が敗戦国を一方的に虐げることを防ぐ外交的装置も兼ねていた。第2次世界大戦の最後に旧ソ連とドイツ・イタリアが結んだ協定や、太平洋戦争の終わりに日本が署名した降伏文書がこれに当たる。しかし朝鮮半島の休戦協定は、戦争の勝敗が明らかでない中で、参戦国の政治的計算によって結ばれた。戦争の途中で戦争を凍結したのだ。
凍結された朝鮮戦争は結局、分断の固定化につながった。南北は軍事境界線を挟んで71年間対峙(たいじ)している。ウクライナ戦争が凍結されれば、長くなろうが短かろうが朝鮮半島のように分断の時期を経ざるを得ない。凍結された戦争はいつでも全面戦争になりうるという点は、もう一つの苦しみとなるだろう。