尹錫悦大統領が10日(現地時間)から米ワシントンで開かれる北大西洋条約機構(NATO)75周年首脳会議に出席する。今年の会議は、この3年間ウクライナを積極的に支援してきた米国のジョー・バイデン大統領が再選を断言できなくなった非常に「微妙な」状況の中で開かれる。尹大統領はウクライナを支援するNATOの連帯には積極的に参加する一方、韓国の安全保障にとって災いとなる結果をもたらしかねない「殺傷能力のある兵器」の供与は絶対に避けなければならない。
尹大統領はワシントンに先立ち9日に訪れたハワイの米インド太平洋司令部で、最近、旧冷戦時代に匹敵する同盟関係を回復した朝ロ両国を名指しし、「無謀な勢力」だと述べた。また、彼らの脅威に対抗するためには「強力な力と共に価値観を共有する国同士の連帯が欠かせない」と語った。首脳が自ら朝ロを刺激する発言を繰り返すのは不適切だ。ただし、先月19日の朝ロの「戦略的接近」を通じて、ウクライナ戦争の余波が韓国に直接的な影響を及ぼすことになったのも事実だ。
こうした現実に対応するため、インド太平洋地域の民主主義国家4カ国である韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランド(IP4)は11日、別途の首脳会議を開き、NATOと「パートナーシップ」を明確にする初の共同文書を出す予定だ。4カ国は同文書で、ウクライナへの支援▽人工知能(AI)▽偽情報対策▽サイバーセキュリティなどの分野でNATOと本格的な協力を宣言するという。これら4カ国は、インド太平洋地域で今後の東アジア版NATOの構想が具体化した場合、中心軸になる可能性が高い。この協力の枠組みが第一歩を踏み出すことに対し、ロシアだけでなく中国が反発することは明らかだ。
NATOはこれまで、今回の会議の重要な議題は「ウクライナ支援」になることを繰り返し強調してきた。NATO当局者は9日、韓国に対して「ウクライナの防衛力を向上させることができる支援なら、それが何であれ温かい歓迎を受けるだろう」と述べた。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も9日、ワシントンで「(米大統領選挙が開かれる)11月まで待たずにすみやかに支援してほしい」と訴えた。特に、韓国に兵器供与を強く要請する可能性がある。
しかし、分断国家である韓国が「殺傷能力のある兵器」を供与すれば、ロシアは北朝鮮を通じて韓国の手に負えない報復を加えるかもしれない。尹大統領には、西側諸国との協力・連帯に重点を置くあまり、韓国の現実とそぐわない決定をしないよう求めたい。殺傷能力のある兵器の供与は、NATOが優先的に行うべきであり、韓国は人道支援や非殺傷用装備の支援に専念するのが望ましい。