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[社説]トランプ前大統領の「在韓米軍撤退論」、現状変更に慎重を期すべき

登録:2024-05-09 06:02 修正:2024-05-09 10:18
ドナルド・トランプ米共和党大統領候補が2月、支持者の前で演説している/AFP・聯合ニュース

 11月の米大統領選挙で返り咲きを狙うドナルド・トランプ前大統領側が、繰り返し「在韓米軍撤退論」に触れている。韓国からより多くの防衛費分担金を引き出すための「脅し」とみるには、これらの発言があまりにも頻繁に、そして一貫して続いている。「あらゆる事態」に向けた万全の備えが必要だとみられる。この問題は朝鮮戦争以来70年以上続いてきた朝鮮半島と東アジアの戦略バランスを揺るがす根本的な変化であるだけに、韓米が新たな合意点を見出すまでは、米国による一方的な現状変更を阻止しなければならない。

 トランプ政権下で国防副次官補(戦略・戦力開発担当)を務めた「マラソン・イニシアチブ」のエルブリッジ・コルビー代表は6日、聯合ニュースのインタビューで、「米国の主な懸案ではない北朝鮮(問題)を解決するために、これ以上朝鮮半島で米軍を人質として取られるわけにはいかない」とし、「韓国は北朝鮮を相手に自国を防衛する上で、主となる圧倒的な責任を負わなければならない」と述べた。また、米国が自国の都市を犠牲にしてまで韓国を北朝鮮の核攻撃から守ることはないとし、「韓国の核武装を排除しない」とまで語った。コルビー元副次官補はトランプ陣営の外交安全保障政策に影響力を行使する人物で、彼が共同創設したマラソン・イニシアチブにはマシュー・ポッティンガー元大統領副補佐官(国家安全保障担当)などが参加している。

 米国の大統領選挙の勝敗が決まったわけではなく、コルビー元副次官補の主張が米国の朝鮮半島政策として具体化されるかどうかはまだ不明だ。にもかかわらず、この発言の中には韓国の運命と直結する、在韓米軍の撤退▽戦時作戦権の移管▽独自の核武装など、主な安全保障懸案に対するトランプ陣営の「戦略的見解」が具体的に示されている。要するに、米国は中国との対決に集中しなければならないため、韓国の安全保障は自ら守るべきであり、この過程で独自の核武装をするなら止めない、ということだ。これは同盟の問題を「なぜ豊かな国である韓国を(米国が)守らなければならないのか」(先月30日のタイム誌とのインタビューなど)という経済的損益問題として把握してきたトランプ前大統領のアプローチとも次元が異なる。

 在韓米軍については様々な意見があるだろうが、撤退が現実化した場合、韓国は安全保障政策を一から建て直す「国難」に追い込まれることになる。独自の核武装も、韓国が長い間進めてきた「朝鮮半島非核化」原則の廃棄だけでなく、世界的にも不拡散(NPT)体制の崩壊という災いを招くことが明らかだ。早まった現状変更がなされないよう、極めて慎重でなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1139752.html韓国語原文入力:2024-05-08 18:44
訳H.J

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