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[コラム]このままでも3年やれるという尹大統領の傲慢と勘違い

登録:2024-04-20 07:25 修正:2024-04-20 11:51
ソン・ウォンジェ|論説委員
尹錫悦大統領が16日、ソウル龍山の大統領室庁舎で行われた国務会議で発言している/聯合ニュース

 率直に言って、今回の総選挙の結果は残念だ。類例のない無能と専横をあらわにした尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を審判したことは明らかだ。もはや今のようにはいかないという強い警告を送った。それでも2.6%足りない。尹政権の国政乱脈を全面的に遮断し、確実にリセットするには、300議席のうち8議席、2.6%足りない。

 結果的には、尹大統領の変化を前提にさらに国政運営の時間を与えたわけだが、これもまた民意の表出であることは否定できない。問題は、このままさらに3年見守るには国運がすでに尽きかけているうえ、国民の暮らしも崖っぷちに立たされているということだ。暗い現実は客観的な数値として表れている。

 2021年に世界10位だった経済規模は、2022年に13位へと3ランク下落。2023年の経済成長率は1.4%にとどまり、国際経済危機やコロナ危機の時期を除けば過去最低を記録した。救済金融危機に見舞われた1998年以来25年ぶりに日本(1.9%)の後塵(こうじん)を拝した。

 昨年の1人以上の事業体の労働者1人当たりの月平均賃金総額は、対前年比2.5%増にとどまった。物価は3.6%上昇したため、実質賃金はマイナスだった。今年も物価高はおさまる気配がない。「長ネギの値段が875ウォンなら合理的」などと口にした尹大統領の世間知らずな発言が、なぜあれほど大きな怒りへとつながったのかを物語るものだ。

 民主主義指数も悪化の一途をたどっている。スウェーデンのヨーテボリ大学のV-Dem(民主主義の多様性)研究所が先月に公開した年次報告書(「民主主義リポート2024」)によると、韓国の「自由民主主義指数」は179カ国中47位にまで下落した。2020~2021年の17位から尹政権が発足した2022年に28位に下落したのに続き、またしてもわずか1年で19ランクも下落したのだ。同研究所はさらに、韓国を「独裁化が進んでいる」42カ国のうちのひとつとしてあげている。自由民主主義の最上位グループ(32カ国)のうち、独裁化国に分類されたのは韓国が唯一だった。研究所は「尹大統領は前政権の高位関係者を処罰するために強圧的な措置を取っており、ジェンダー平等も攻撃した」と指摘した。

 国境なき記者団(RSF)が昨年5月に発表した2023年「世界報道自由度ランキング」でも、韓国は47位だった。48位はスリナムだった。文在寅(ムン・ジェイン)政権では終始41~43位を行き来し、3年連続(2019~2021年)でアジア1位を記録していた。

 1987年の民主化以降、韓国がこのように経済・民生と民主主義の両方で一度に墜落したことはない。無能の新記録であり、専横の金字塔だ。わずか2年で国はこの有様で、国民の暮らしは疲弊した。

 このような抽象的な数値を現実の生々しいエクストリーム体験として体感させたのも、尹大統領自身だ。何の根拠もなく史上最大の研究・開発(R&D)予算削減をおこなって国の競争力に穴を開け、これに抗議するKAISTの卒業生を「口をふさいで」引きずり出した。「キム・ゴンヒ特検」は拒否権を使って阻止し、自らに迫りくる「海兵隊外圧」疑惑に対する捜査は、最重要被疑者であるイ・ジョンソプ前国防部長官を外国に送って回避しようとした。民生への対処には怠惰なのに、夫人と共に国賓として接待を受け、グルメの追求やブランド品のショッピングには忙しいという印象を与えた。

 選挙ではっきり示された民意とは異なり、今後3年が画期的に変化するかも不確実だ。16日の国務会議での尹大統領の総選挙についての発言は、むしろ懐疑と不安を強める。多くの国民は、国政基調と態度全般に対する根本的な反省と転換を期待したはずだ。しかし、「大きな枠組みでは国民のための政策といえど、細かい領域では足りなかった」と述べ、部分的な補完にとどまるであろうことを明確にした。「正しい国政の方向性を定め、実践するために最善を尽くした」と述べ、自画自賛を並べ立ててすらいる。

 国民が聞きたがっていたのにまったく言及していないものも多い。妻の疑惑と醜聞、「ラン・ジョンソプ(イ・ジョンソプ前国防部長官の海外出国)」事態に対する釈明と謝罪、政府・野党協力の象徴的措置といえる野党代表との会談提案、拒否権の自制表明などはなかった。今後も自身と妻の防衛を権力行使の最優先の目的とし、これまで通りひとりよがりの国政を展開していくことを宣言したわけだ。

 8議席の安全弁を確立したという安堵(あんど)感の表れだろう。しかし上っ面の変化でやり過ごせると考えているとしたら、傲慢であり勘違いだ。最後の警告まで無視されたと判断した瞬間、保守層からも忍耐の限界となる人々が続出するだろう。巨大な民意の波の前では2.6%の防御壁など何でもないということを、私たちはすでに経験している。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ウォンジェ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1136866.html韓国語原文入力:2024-04-16 17:23
訳D.K

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