本文に移動

[特派員コラム]復讐を叫ぶトランプ「私は君たちの正義だ」

登録:2024-03-15 08:26 修正:2024-03-20 09:20
2024年2月24日、米国メリーランド州のナショナルハーバーで開かれた保守政治行動会議(CPAC)の年次総会で演壇に上がったドナルド・トランプ前大統領が拳を握りしめている/ロイター・聯合ニュース

 日本による1941年の真珠湾奇襲の際、連合国の指導者のうち、衝撃を受けたのではなく安堵したと告白した人物が少なくとも2人いる。米国のヘンリー・スティムソン陸軍長官は、真珠湾が爆撃されているというフランクリン・ルーズベルト大統領の電話に「最初に感じたのは安堵感だった」と日記に書いた。英国のウィンストン・チャーチル首相は回想録に、その日は安堵と感謝の気持ちで眠りについたと記録した。

 2人の目には将来が明確に見えていたためだ。第2次世界大戦への参戦をためらっていた「眠れる獅子」がついに戦争に突入したことで、彼らの悩みが解決されたのだ。たいていの場合、こうした状況であれば黙ってはいないだろうが、特に米国人はやられたらやり返さずにはいられない人たちだ。9・11の後、中東をめちゃくちゃにした「テロとの戦争」と10年にわたるオサマ・ビン・ラディン追撃戦も、そうした気質を示している。2011年5月1日の深夜に、バラク・オバマ大統領が「正義が実現された」としてビン・ラディン射殺を発表した直後、ホワイトハウス周辺に集まった数千人の表情には、人生最高の歓喜がにじみ出ていた。

 米国人にとっては、復讐、報復、審判、正義、処罰は区別しがたい単語だ。正義は、高尚な価値を表現するよりも、単に罪を犯した者を罰することを示すことに多く用いられる。米国はいわゆる先進国のなかでは珍しい死刑存置国だ。超現実的な数百年の懲役刑が宣告される状況も、彼らが復讐にいかに価値を置いているのかを示している。ハリウッド映画の多くの主人公が復讐に飢えた人間である点も「復讐文化」を象徴する。そうした文化では、節制、忍耐、寛容のようなものは、美徳として強調されない。

 そのため、ドナルド・トランプ前大統領が昨年3月の年次行事である保守政治行動会議で「私は皆さんの正義だ」「私は皆さんの報復だ」と述べ、自らを復讐の化身であることを宣言したのは核心を突いたものだった。この時から彼は、常に復讐と報復を口にするようになった。先月末に開かれた今年の保守政治行動会議では「勝利が私たちの究極の復讐」だと述べた。

 トランプが言う復讐は、ジョー・バイデン大統領の処罰や連邦公務員の大量解雇などを意味する。支持者にとっては、トランプのどの政策よりも復讐が重要なようだ。選挙を盗んだ(トランプの嘘だ)者、贅沢三昧して優秀なふりをするコスモポリタンたち、中国の成長を支援あるいは放置した者、自分たちを無骨な田舎者と見下す者たちに対する仕返しの機会が切実なのだ。そうした人たちにとっては、共和党の予備選出馬者のなかで最も徹底した復讐を約束したトランプを支持するのは当然のことだ。

 遊説場所では、トランプを崇拝する雰囲気まで感じられる。聖書が描写する「復讐は私の仕事」と語る「復讐の神」に対する服従のようなものだとみるべきなのかもしれない。彼は最近、保守政治行動会議での演説で、11月5日の大統領選挙日は「審判の日」になると述べた。

 トランプは、自分の危機を支持者に彼ら自身の危機だと受けとめさせる能力も持っている。トランプが復讐を口にし始めた時は、性的関係の口止め料に関するニューヨーク検察の捜査が佳境に入ったときだった。彼は「私でなく皆さんを処罰しようとするもの」だと述べ、支持者たちとの運命共同体を形成した。

 トランプはよく見るある種の人たちに似ている。神のための献金を説きながら私腹を肥やし、危機の時には信者を前面に出して狼藉をはたらくカルト宗教の指導者だ。

//ハンギョレ新聞社

イ・ボニョン|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1132297.html韓国語原文入力:2024-03-14 18:58
訳M.S

関連記事