ソウルの主要な大病院の一つであるソウル峨山(アサン)病院の教授たちが、辞表提出を決めたという。先に円光大学、慶尚国立大学、慶北大学の各医学部の学部長が辞任の意を表明したのを皮切りに、医学部教授たちの集団行動が大病院へと拡散する兆しを示している。専攻医のストライキで「医療大乱」の懸念が徐々に高まっているなか、政府と医師の対立が日増しに悪化しているのは実にもどかしい。
ソウル峨山病院などの教授たちで構成される蔚山大学医学部教授協議会が7日に辞表提出を全会一致で可決したのに続き、全国医学部教授協議会(全医教協)は9日に非公開総会を開き、政府の医学部増員対応策を議論することにしている。医学部の増員申請規模をめぐり、所属大学の本部と対立する医学部の教授たちは、最近の専攻医の集団行動に対する政府の強硬対応方針に反対の声を強めてきていた。したがって今回の総会では、医学部の教授も集団行動に同意する可能性が高いとみられる。専攻医に続いて医学部の教授までもが集団行動に打って出るのは、政府の「医療改革」政策を信頼していないからだ。政府は、必須医療および地域医療の崩壊を防ぐためには「医学部定員2千人拡大」が絶対に必要だと主張する。だが「2千人増員」の根拠となった報告書の著者たちまでもが、政府案とは異なって「漸進的増員」が望ましいと表明し、物議を醸している。政府が総選挙のためはなく本当に「医療改革」を望むのなら、医療現場の実態と教育環境に見合った案を協議し推進しよう、というのが医学部教授たちの主張だ。
しかし最近の政府の動きは、医療脆弱地や忌避科目に医師を流入させるための具体的な対策は打ち出さずに、ひたすら「医学部の定員を2千人」増やすだけでこれらすべての問題が解決できる、と言っているように見える。また、双方とも問題解決ではなく神経戦を繰り広げているような姿勢ばかり見せており、これを見守る国民、特に患者とその家族をさらに不安に陥れている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は6日の国務会議で「(専攻医ストなどの)違法な集団行動は法と原則に則って厳重に対応せざるを得ない」、「国民の生命権を侵害する違法な集団行動は絶対に許されない」などの強硬発言をおこなっている。政府は大韓医師協会などの無理な要求に屈してはならないが、対話と交渉の扉を閉ざして強硬対応ばかりを叫ぶのも望ましくない。容易ではないことは分かっているが、医療大乱を避け、交渉力を発揮して問題を解決すべきだ。それが政府の責任だ。強対強の対峙(たいじ)では何も解決しない。