尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が来週予定されていたドイツとデンマークの国賓・公式訪問を延期したことが14日に分かった。その前日の午後まで記者の同行取材申請を受けていたのに、半日で突然見送られたのだ。尹大統領は就任後16回にわたり外遊に出かけてきたが、予定された日程を取り消したり、延期したのは今回が初めてだ。しかし、出発をわずか4日後に控えて訪問を延期したにもかかわらず、大統領室は明確な理由を説明していない。「様々な要因を検討した」という言葉を繰り返すだけだ。このような態度が余計に疑惑を膨らませている。
歴代大統領たちも歴訪を取り消したり、延期したことがあった。近くは、朴槿恵(パク・クネ)元大統領が2015年の中東呼吸器症候群(MERS)の拡散で、予定されていた米国訪問を4日前に順延した。盧泰愚(ノ・テウ)元大統領は1988年、当時の天皇の健康悪化で日本訪問の日程を取り消した。いずれも相手国のやむを得ない事情や重大な国内問題など理由が明らかであり、十分な説明があったため、国民も納得することができた。今回のように「様々な要因」というふうにざっくり説明されたことはなかった。まるで国民に「私がそうだと言うのだから、そうだと思ってくれ」と一方的に通知するような傲慢な態度に映る。
現政権発足後、大統領の日程が明確な理由もなく突然変わったのは初めてではない。尹大統領は先月22日にも「民生討論会」が開かれる30分前に「風邪」を理由に欠席を通知した。実際は前日「キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ授受」への対応をめぐり、大統領室と与党「国民の力」のハン・ドンフン非常対策委員長が衝突した余波ではないかとみられていた。今回も否定的な世論などによって、キム女史が訪問に同行するかどうかを決められなかったのが実際の理由ではないかという疑念の声があがっている。大統領室は「作り話に過ぎない」と反論するが、状況をここまで悪化させたのは大統領室だ。
尹大統領夫妻は、外遊が頻繁である上、外遊のたびに様々な物議を醸してきた。このため、総選挙を約50日後に控えた時点での国外訪問が政治的負担として作用したという見方も登場した。また、尹大統領は昨年下半期以降、リトアニア、ポーランド、ウクライナ(7月)、英国とフランス(11月)、オランダ(12月)など、欧州を3回も訪問した。今回のドイツとデンマークを含めれば半年余りの期間に同じ地域を4回訪問するのも極めて異例のことだ。だからといって、これを直前に取り消すのは外交的に無理が伴う。外遊を含む大統領の日程が突然変わり、それについて明確な説明もないのは、いずれも正常とはいえない。