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[コラム]プーチン大統領の危険な「北朝鮮カード」の使い方

登録:2024-02-07 06:24 修正:2024-02-12 08:12
ウラジーミル・プーチン大統領と金正恩委員長=キム・ジェウク画伯//ハンギョレ新聞社

 韓国とロシアが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の北朝鮮関連発言をめぐり、猛烈な非難と大使の呼び出しなどの応酬で衝突した。尹大統領が先月31日、「北朝鮮政権は世界で唯一核先制使用を法制化した非理性的な集団」だと述べたことを受け、当事者ではないロシア外務省の報道官が乗り出して「著しく偏向した」、「忌まわしい」と非難したのは明らかに異例のことだ。北朝鮮とロシアの戦略的密着が韓ロ関係と朝鮮半島情勢に暗い影を落としている。

 ロシアが尹大統領の北朝鮮関連発言を問題視したのは、朝ロの緊密な連携を誇示し、ウクライナ戦争でロシアに有利な状況を作るため、北朝鮮カードを最大限に活用しようとする意図を示している。

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とウラジーミル・プーチン大統領による昨年9月の朝ロ首脳会談の前後に、北朝鮮はロシアに兵器を本格的に供与し始めたという。中国もロシアに兵器は支援していない状況で北朝鮮が供与する大量の砲弾とミサイルは、ウクライナ戦争の戦勢をロシアに有利に変える重要な要因となった。一方、ロシアは韓国に対し「ウクライナに砲弾を供与すれば、北朝鮮に先端軍事技術を渡す」と暗示することで、ウクライナへの砲弾の供与をできるだけ遮断しようとしてきた。

 最近ではロシアがさらに一歩進んで「北朝鮮カード」を活用し、北東アジアの緊張を意図的に高めようとしているという分析もある。ロシアの支援を受けて大胆になった北朝鮮が北東アジアで局地的挑発を行い、核・ミサイル脅威を強化すれば、米国とヨーロッパに続きアジアでもウクライナへの支援に対する関心が薄れるという算段だ。朝鮮戦争当時、スターリンが米国の関心をアジアに向けさせ、欧州でソ連に有利な情勢を作るために、金日成(キム・イルソン)主席の「南侵」計画を承認したのと類似した戦略だ。中国でも懸念の声があがっている。房寧前中国社会科学院政治研究所長(四川大学教授)は先月のフォーラムで、「ロシアが戦場の向こうの水を泥水にし、より多くの火薬庫を作って西側の注意を分散させることで、ロシアに対する圧力を減らそうとしている」とし、「中国の目の前で問題を起こそうとするロシアの潜在的な動きを警戒しなければならない」と警告した。中国の専門家たちは、ロシアが北朝鮮に先端ミサイル、偵察衛星、潜水艦技術などを提供することは、韓国はもとより中国にとっても問題になるとみている。

 プーチン大統領も金委員長も、米国内部で孤立主義が強まる中、「トランプ前大統領の帰還」が現実のものになれば、在韓米軍の撤退や米国の北大西洋条約機構(NATO)脱退もあり得ると見込んで、ますます大胆に動いている。

 韓国は、ロシアと北朝鮮が密着した危険な実状を正確に把握し、警戒しなければならないが、ロシアが大統領の発言を問題視したとして言葉の応酬を繰り広げるのは賢明な状況管理とはいえない。韓ロが激しく戦うほど、北朝鮮はさらに大胆になり、挑発の危険性は高まるだろう。韓ロ関係に「青信号」になるかもしれなかったロシアの外務次官の訪韓中に起きた騒ぎを見て、金委員長は笑みを浮かべただろう。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1127286.html韓国語原文入力:2024-02-05 15:10
訳H.J

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