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[寄稿]韓国の不動産PF不良債権化…家計債務に転嫁してはならない

登録:2023-09-19 10:21 修正:2023-09-20 08:17
アン・ジェファン|仁荷大学経営大学院副院長
韓国のマンション集合地の風景/聯合ニュース

 政府は韓国の家計債務は管理可能な水準であり、直ちに急激に不良債権化する可能性は低いとみている。実際に、急激に上昇していた家計債務の延滞率は0.33%で、このところやや下落している。一方、プロジェクトファイナンス(PF)の延滞率は上昇を示している。特に証券会社の延滞率は17%を超えており、懸念すべき水準だ。このような傾向をみれば、133兆ウォン(約14兆8000億円)規模のPFが問題であり、1000兆ウォン(約111兆円)の家計債務は問題ではないようにみえる。

 しかし、家計債務の潜在的リスクはいつでも可視化しうる。最近の家計債務の延滞率の下落は、かなりの部分が貸付残高の急増に起因する。また、6月に銀行圏は3兆ウォンを超えるウォン建て債権を回収できないと確定し、これを帳簿から除去した。このような大規模な不良債権の整理は2019年以来だ。延滞率の分母に当たる貸付債権残高は増加し、分子となる既存の延滞債権は減少する中で、延滞率が単に小幅に下落したということは、分子のもう一つの要素である新規延滞債権がかなりの規模で発生していることを意味する。特に延滞率は他の指標とは異なり緩やかに増加することはなく、外部からの衝撃によって一気に上昇するかたちを示す。2009年には10%台だった貯蓄銀行のPF貸付延滞率が2011年にあっという間に40%を超えたのがその例だ。

 家計債務のさらに大きなリスクは、政府がPF貸付の不良を家計に移転させ続けていることだ。政府がこのような政策的方向性を定めたのは、住宅価格の下落が本格化した時だ。PFの不良化は金融会社の健全性を悪化させ、システムのリスクへとつながりうるため、建設会社のモラルハザードを引き起こす可能性があるにもかかわらず政府介入が避けられない面はある。だが、政府は建設会社に対する直接・間接的な金融支援を行うとともに、不動産取引と家計融資の規制緩和を通じて個人の住宅購入を積極的に誘導した。その結果、実需要ではない投資家が大挙して不動産と分譲市場に飛び込み、5カ月間に分譲価格が40%以上も上昇する中で請約(新築マンション購入する人に分譲優先権を与える貯蓄制度)競争率が数百倍に達するという投機熱が再現された。

 高価格でマンションの分譲を受けたことで、個人はPFの不良を家計債務として抱え込むことになった。特に自己資本がほとんどなく高価格で分譲を受けた投資家は、住宅価格の一部は自らの直接の借り入れで、残りは賃借人から預かった伝貰(チョンセ・賃貸契約時に賃貸人に高額の保証金を預ける代わりに月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)資金という借金で当てることになる。このようなケースでは分譲価格のほとんどが家計債務となりうるということだ。もちろん、貸付の取り扱い過程で金融機関が借主の債務返済能力を十分に考慮すれば、問題になることはない。しかし現実はそうではない。現在、伝貰資金融資には総負債元利金返済比率(DSR)規制が適用されておらず、住宅購入者のDSRの計算に伝貰保証金は含まれない。居住目的で分譲を受けたケースでも、債務者が生きている間に返済できないくらい長い所得期間を設定することで、負債額を増やしている。このような貸付は、非優良貸付が横行した2008年以前の米国の「死者に対する貸付」と似ている。

 長期の住宅担保融資が批判されたことを受け、政府はこのような貸付は通常、満期以前に返済されると反論した。貸付そのものは非常識だが、ほとんどの長期貸付は早期に返済されるため問題になることはないという説明だ。しかし、生涯所得でも返済が困難な巨額の負債を、借主はどのように早期返済するというのか。このようなシナリオは住宅価格が上昇し、融資を受けた時より高い価格で不動産を処分するケースでのみ可能となる。

 ここで根本的な問いを投げかけてみよう。住宅価格は政府の期待通りに上昇し続けるのだろうか。振り返ってみれば、PFと逆伝貰にともなう家計債務の不良化の懸念は、住宅価格の下落と金利上昇に触発されたものだ。その後の政府の政策は最小限の不動産取引を活性化してこのような問題に対応するという立場からのものだったが、結果的にすでに返済能力を大きく越え、返しようのないより多くの負債を家計に抱え込ませる方向へと流れてきた。しかし再び不動産価格が下落すれば、現在の家計への貸付は結局のところ返済されないだろう。したがって、PFの不良を家計債務へと転嫁するというやり方は、現在の家計債務の規模が含意する危険性を考慮すれば、まったく現実的でない「時限爆弾のたらい回し」に過ぎない。

 政府が遅まきながら50年満期の融資にブレーキをかけたのは良いことだ。しかし、40年満期の融資も長い。次は賃貸人と賃借人に対する貸付のいずれにもDSRを厳格に適用することが必要だ。PFの不良は別の方法で処理するとともに、政府には漸進的かつ積極的に家計債務の縮小に取り組んでほしい。

//ハンギョレ新聞社

アン・ジェファン|仁荷大学経営大学院副院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1109072.html韓国語原文入力:2023-09-18 19:04
訳D.K

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