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[社説]被害拡大しているのに「汚染処理水」に名称変更とは=韓国

登録:2023-08-31 23:34 修正:2023-09-01 08:03
尹錫悦大統領が31日、ソウル銅雀区の鷺梁津水産市場を訪れ、ワタリガニを購入しながら店の人と言葉を交わしている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 韓国政府と与党「国民の力」は、福島第一原発から放出されている「汚染水」の名称を「汚染処理水」に変更することを検討するという。政府与党が汚染水の名称変更を公式化したのだ。

 ハン・ドクス首相は30日の国会答弁で「ALPS(多核種除去設備)を経ているので『処理された汚染水』が科学的に正しい表現」だとし「用語の変更を検討する」と語った。国民の力の「韓国の海を守る検証タスクフォース(TF)」の委員長を務めるソン・イルチョン議員はすでに5月から「汚染処理水が正しい」という意見を表明している。日本は汚染水を薄めて流しているというのが理由だ。国際原子力機関(IAEA)と日本政府もそのような理由で「処理水」または「汚染処理水」と書いている。汚染水という用語が水産物忌避心理を過度に刺激する面があるのなら、水産業従事者への被害の拡大を防ぐために名称変更もありうるだろう。

 しかし、物事には順序というものがある。日本の一方的で無責任な放出によって、韓国国民の被害が本格的にあらわれている。水産物の消費減少で販路が断たれたことで生計を脅かされる国民が増えているが、放出はいつ終わるとも知れない。だとすれば、今からでも日本政府にさらなる安全対策を打ち出すよう求めることこそ正しい。だが尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はこれまで、水産業界の被害は「フェイクニュースと虚偽扇動」のせいだとし、野党とメディアにばかり矛先を向けてきた。これほど被害を受けても一言も言えないとは、いったい日本政府にいかなる弱みを握られているのか。

 政府はこの日、800億ウォン(約88億2000万円)の予備費を緊急投入する被害救済対策を打ち出した。来年度予算には560億ウォン(約61億7000万円)の水産物に対する放射能検査予算が新たに策定された。放出期間は30年を超える。「日本政府が及ぼした被害に、なぜ韓国国民の税金を、いつまで使わねばならないのか」という批判は避けられない。

 だが、イ・グァンソプ大統領室国政企画首席は30日の国会答弁で、国際機関への提訴について「笑いものになるだろう」と述べた。事実関係は別として、このように大統領室は不安がる国民をあざ笑うような発言をためらわない。むしろ日本が汚染水を放出して1週間もたたないうちに、韓国政府が率先して日本政府のように「汚染処理水」への名称変更を急げば、それこそ笑いものになるだろう。国民たちの不安は大統領が水産市場を訪れてパフォーマンスを行い、「汚染水」の名を変えたからといって解消されはしない。大統領が日本を代弁するばかりで、国民を守ってくれるという確信が持てないからだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1106629.html韓国語原文入力:2023-08-31 18:15
訳D.K

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