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[コラム]笑うことも泣くこともできない韓国政府の1年

登録:2023-04-22 06:15 修正:2023-04-22 08:28
尹錫悦政権は発足初期から常識的に理解できないことの連続だった。国民との意思疎通の強化を掲げたが、大統領室の突然の龍山移転は依然としてその真の理由が分からない疑問だらけの決定だった。大統領夫人の役割を縮小するために第2付属室を廃止すると言っていたにもかかわらず、大統領夫人は公然と「国政のパートナー」にまで格上げされ、日々その活動領域を広げていっている。 
 
キム・ミョンイン|仁荷大学国語教育科教授・文学評論家
//ハンギョレ新聞社

 

 米国がウクライナへの武器支援についての韓国政府高官の対話を盗聴していたことが明らかになった。米国が敵対国だけでなく友好国に対しても手段と方法を選ばずあらゆる情報を収集してきたというのは、昨日今日にはじまったわけではないため、それほど驚くべきことではない。それがたった1人の一介の下級兵士によって流出したということの方が、驚くべきといえば驚くべきことだ。米国も、盗聴したということよりも流出したということの方に敏感になっているようだ。

 にもかかわらず、この事件が友好国に対する深刻な主権侵害であり、明白に違法な犯罪行為だということに変わりはない。したがって、被害国である韓国は外交ルートを通じて米国に釈明と謝罪、そして再発防止の約束を取り付けなければならず、米国は当然にも遺憾の意を表明したうえで再発防止を約束しなければならない。これは両国が守るべき最小限の外交的慣例だ。

 ところが韓国政府の関係者たちは、盗聴された内容の記された文書は偽造されたものだとか、悪意のない盗聴だとか、主権国家同士の正常な外交活動ができておらず、むしろ明白な犯罪行為に免罪符を与えることができず焦っている感じを受ける。日帝支配下での強制動員に対する賠償問題の3月の第三者弁済決定を通じて常識を越える親日姿勢を示したかと思えば、今度もあきれた低姿勢外交で一貫している。これは親米ではなく、むしろ「乞米」と言った方が正確だろう。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とその側近たちの対日、対米偏向がいくら度が過ぎるとしても、最小限の体面は保たなければならないはずだが、これはあまりにも露骨だ。

 今回の龍山(ヨンサン)の国家安保室盗聴の主な内容がさらに詳しく明らかになり、周囲の状況が把握されるにつれて、米国が尹大統領の米国国賓訪問の条件としてウクライナに数十万発の155ミリ砲弾を輸出または貸与のかたちで提供するよう韓国政府に要求し、殺傷力のある兵器の海外への直接支援がもたらす後遺症を懸念して反対の意思を表明したキム・ソンハン安保室長とイ・ムンヒ外交秘書官が大統領の怒りを買って電撃解任されたのだ、というかなり説得力のある非公式のうわさも聞こえてきている。もしこのようなうわさが事実なら、この盗聴事件に臨む政府のこのような非常識な発言と態度は、こうした事実を隠蔽するためのお粗末な偽装術だったのだろう。先日の安保関連で核となる2人の人物の電撃更迭は、大統領訪米行事の一つとして企画されたBLACKPINKのホワイトハウス公演準備に消極的だったためだといううわさがあり、失笑を禁じ得なかったのだが、もしかしたらその根拠のないうわさこそ、まさにこの本当の更迭理由を隠すために誰かが意図的に流したフェイクニュースではないかとも思う。政府が真実を隠蔽し、知らぬ存ぜぬで一貫しているため、このようなデマばかりが飛び交うのだ。

 もちろん、このような話はまだ公認されたファクトではない。しかし、大統領側近たちの度重なる偽りの釈明と慌てた態度、そして次第に明らかになりつつある周辺情況を考慮すれば、その蓋然性は非常に高いと考えられる。そして、これがもし事実であることが明らかになれば、これは実に深刻なことに他ならない。ロシアとまだ正常な外交関係を保っている韓国が、ロシア軍の殺傷に使われる砲弾をウクライナに提供することは、非常に負担となる敏感な事案だ。しかし、ロシアの侵略で苦しんでいるウクライナに対する支援は、ロシアとの外交危機を招いてでも決行しうると思う。そして、韓国政府がそのような方針を決めたなら、まさにかつて盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領がイラクに国軍を派遣する際に国民に訴えたように、大統領自らが国民に訴えるとともに、国会の協力を得れば不可能ではないと思う。

 しかし、深刻な外交危機を招きかねず、殺傷兵器の輸出を抑制している韓国の国内法(対外貿易法第26条関連告示第6条)とも衝突しうるこのような重大な事案を、重要な安保関係者の交替という雑音を生んでまで、なぜこのように急いで決行するのか。お粗末な推定になるかもしれないが、世間で語られるように、本当に米国側が掲げた国賓訪問の先決条件だからだろうか。だとすれば、もしかしたらあの荒唐無稽な強制動員解決策で対日関係を改善するということも、この国賓訪問の条件の一つだったのではないだろうか。疑惑が次から次へとわいてくる。

 尹錫悦政権はまさしく発足初期から常識的に理解できないことの連続だった。国民との意思疎通の強化を掲げたが、大統領室の突然の龍山移転は依然としてその真の理由が分からない疑問だらけの決定だった。大統領夫人の役割を縮小するために第2付属室を廃止すると言っていたにもかかわらず、公然と「国政のパートナー」にまで格上げされ、日々その活動領域を広げていっている大統領夫人の態度を見ると、あれはそれこそ夫婦共同統治のための事前停止作業ではなかったかと疑われる。

 国民の力の代表選出過程で特定候補に加えられた驚くべき露骨な迫害は、政策的決定ではなく誰かの私的な報復の結果だ、といううわさが次第にまことしやかにささやかれはじめている。そのような脈絡から見れば、この政権は大統領とその側近たちが妙に大国に屈従的かつ買弁的だからではなく、単に大統領夫妻が米国国賓訪問という贅沢を楽しむために、対日屈辱外交や冒険的な対外兵器支援のようなこともいくらでもしでかしうる、と考えてしまうのも無理はない。

 だが、まさかそんなことがあるだろうか、どうかそれが事実でないことを祈る。もともと私は政治がゴシップ化するのが大嫌いだ。風評や戯画やゴシップとして消費された瞬間、政治はもはや互いに異なる利害関係を持つ社会構成員同士の真剣な角逐と競争の場ではなく、単なる一つの劇場へと変質し、主権者たちは主体からただの傍観的な見物人の立場へと転落するからだ。しかし、私もいつからか自分も知らないうちに各種SNSが提供するポスト真実のうたげに包摂され中毒になり、このようにゴシップ的推論を真実と交換することに慣れて、このようなうわさとゴシップをまるで事実のように受け取るようになったのだろう。

 しかし、もしうわさのように聞こえてくるこのすべての疑惑が本当に事実なら、尹大統領とその側近たちが検察独裁という武器を振りかざし、右派的な道をためらうことなく疾走する確信に満ちた保守主義者たちのように見えて、実は単に大統領という職責から得られる様々な利益とぜいたくを享受することでただその地位を楽しんでいるに過ぎないとしたら? そうであることでゴシップや冗談であるべき物事がまさに国政の実体となるのが21世紀初めの韓国の現実だとしたら? 発足当初から一体どんなビジョンを持って国を導いていくのか五里霧中だった現政権のこの1年間を振り返ってみると、この悲喜劇的な問いは非常に現実的で、私は今、笑うことも泣くこともできないまま混沌状態に陥っている。

//ハンギョレ新聞社

キム・ミョンイン|仁荷大学国語教育科教授・文学評論家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1088787.html韓国語原文入力:2023-04-20 19:05
訳D.K

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