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[コラム]韓国大統領室高官の辞任を要求する

登録:2023-03-14 06:10 修正:2023-03-14 08:34
11日午後、ソウル中区の市庁広場の東側で開かれた「強制動員屈辱解決策強行糾弾および日本の謝罪賠償要求第2回汎国民大会」で参加者たちがプラカードを持ちシュプレヒコールを叫んでいる=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「白旗投降」で終わったこの4年間の韓日対立を思い起こすと、実に様々な複雑な思いに陥る。

 4年間続いた対立の前半部といえる文在寅(ムン・ジェイン)政権時の韓日対立について、2021年7月に『新冷戦韓日戦』と題する本を出した。その本で当時、この戦いは両国間の単純な歴史対立ではなく、朝鮮半島と東アジアの未来像をめぐる巨大な世界観の衝突だったとする分析を提示した。すなわち、北朝鮮核問題を解決して南北関係を改善し、東アジアの冷戦秩序を打破しようとする文在寅政権の「現状変更」戦略と、韓国政府のそのような試みを打ち破り、韓米日の3角同盟を強化し、北朝鮮と中国を抑制しようとする日本の「現状維持」戦略が正面で衝突し、大きな破裂音を立てたということだ。

 両国間の対立がピークに達した2019年8月、慶南大学極東問題研究所で討論会が開かれた。その時、当時の与党「共に民主党」のキム・ミンソク議員(当時は議員就任前)が吐露した発言が胸に残っている。「この問題に国家の命運がかかっており、国家の名誉を担ってこの問題を解決できるかどうかに政権の命運がかかっている」

 当時その討論会の席でこの話を聞き、「大げさな発言ではないか」と思ったが、事態の本質を見抜いた発言だったと遅ればせながら認めざるをえない。あの殺伐とした闘争で韓国は敗れ(2019年2月末、ハノイでの朝米首脳会談の失敗)、文在寅政権は任期を終えた。だからこそ、その後登場した尹錫悦政権が前政権の遺産を全面的に否定し、韓米日3カ国協力の強化に「全賭け」するのは、別の見方をすれば残酷だが当然の論理的帰結だと考える。

 それでも、新たに登場した尹錫悦政権に一抹の期待を持たずにはいられなかった。私の所見では、世界はすでに新冷戦の入り口に差し掛かっており、北朝鮮の核の脅威が現実化した状況においては韓米日の3カ国協力自体を否定できなかった。だから、両国が最大の懸案である強制動員被害者への賠償問題に合理的な妥協案を引き出せるよう心から願った。だが結果は、原告の二つの要求事項である日本の「謝罪」と「賠償参加」のうちの一つも勝ち取れなかった白旗投降になってしまった。

 なぜそうしなければならなかったのだろうか。大統領室高官(知っている人は誰のことなのか皆知っているが、実名公開は不可だという)の6日の会見録を読んでみたが、すべての分析が無意味だと感じられた。「我々が大法院(韓国最高裁)判決を否定する理由は何もないが、とにかく国際法的に、そして1965年の韓日両政府の約束に照らしてみると、2018年の大法院判決は、日本としては『韓国が合意を破ったものだ』という結論になったのです」。これまで日本を含む数多くの外国政府の当局者の会見を見てきたが、公開の席上で自国の最高裁の判決を蔑視し相手国の立場を擁護する姿は、見たことも聞いたこともない。

 戦争はなぜ発生するのか。これに関する最も印象的な洞察を、東京大学の加藤陽子教授の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』という本で読んだことがある。その本で著者は、戦争を「相手国の権力を正当化する根本原理である憲法を攻撃目標にすること」と定義した。大韓民国が今の大韓民国たらしめている二つの前提は、憲法の中に含まれている。大韓民国は「3・1独立運動で建立された大韓民国臨時政府の法統」と「不正に抵抗した4・19(李承晩大統領を辞任に追い込んだ民主化運動)の民主理念を継承」した民主共和国だ。この高官が、日本の立場を擁護し返す手で非難した2012年5月の大法院判決(破棄差戻し)と、それに続く2018年10月の大法院全員合議体の判決の核心は、次のようなものだ。原告敗訴を決めた日本の先の判決は、過去の植民地支配が合法であることを前提としたものであり、これは、「大韓民国の善良な風俗」すなわち憲法の価値に反するものであるため受け入れることはできず、原告が要求する慰謝料は「不法な植民地支配と侵略戦争の実行に直結した反人道的な不法行為」に対するものであるため、1965年の請求権協定で解決されなかった、ということだ。

 国家であれば、この価値を擁護するために戦わなければならない。時には妥協も必要だが、政府当局者には言うべき言葉と言ってはならない言葉がある。政府高官が自ら自国に恥をかかせるのであれば、世界のどの国が韓国を尊重するだろうか。過去にも様々な論議を引き起こしたこの高官には、辞任して「学問と思想の自由」がある大学教授に復帰してもらいたい。

//ハンギョレ新聞社

キル・ユンヒョン|国際部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1083415.html韓国語原文入力:2023-03-14 02:38
訳M.S

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