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[特派員コラム]中国と韓国の似通ったコロナ防疫

登録:2023-01-27 06:21 修正:2023-01-27 08:29
中国最大の祝日である春節(旧正月)を2日後に控えた20日、特急列車に乗るために人々が上海の虹橋駅で待機している=上海/AFP・聯合ニュース

 振り返ってみると、本当にまじめだったと思う。昨年1月に北京に来てから、2日に1回、新型コロナウイルス感染症のPCR検査をきちんと受けてきた。食堂や官公庁、バス、タクシーなどを利用するためには「陰性」の結果が必要だったが、中国政府の防疫政策に協力するとともに、自分の健康を守るためでもあった。2100万人が集まって暮らす北京だけでなく、上海(2400万人)、武漢(1100万人)、重慶(3200万人)など、中国全域の状況もほぼ同じだった。中国に住む人々は非常に誠実に政府の防疫政策に従った。

 変化は突然訪れた。昨年11月初め、中国政府はPCR検査の義務付けを電撃的に廃止した。北京の街のあちこちでよく見られたPCR検査を受けるための長蛇の列が一夜にして消えた。陰性の結果なしには入れなかったショッピングセンターも自由に出入りできるようになった。それから1カ月後には、新型コロナにかかっても病院や隔離施設である「方艙医院」に入れられることなく、家で休みながら治療できるようになった。再び1カ月が過ぎた今月8日には、3年間固く閉ざされていた海外への出国の関門が開かれた。

 嬉しい一方、これまでのことを考えると、少し悔しかった。中国当局はオミクロン株の致命率が低くなり防疫政策を転換したと説明したが、オミクロン株は昨年初めから中国を襲ったウイルスだ。中国当局の説明通りなら、昨年末ではなく、昨年初めに防疫政策を解除してもよかったのではないか。1年近く日常となっていたコロナ検査はなぜ受けなければならなかったのか。上海の住民2400万人はどうして2カ月間も家に閉じ込められなければならなかったのか。

 実際、中国当局が昨年末になって防疫政策を変えた理由を、中国人の多くは知っている。習近平国家主席の3回目の再任が昨年10月末に確定しており、その前には社会を不安にさせる行動を最小化すべきだった。新型コロナの防疫をめぐる政策転換は結果の予測が難しい、非常に大規模な変動要因だった。

 中国当局は自分たちの防疫政策が徹底的に科学に基づいたものだと宣伝しているが、そもそも「科学」だけに依拠した防疫は存在しない。政治と科学が併存する中で、最高権力者あるいは多数の世論が何をもう少し優先するかを決める。科学だけに基づいた徹底した防疫も、結局は政治的な決定だ。明らかなことは、自然すなわちウイルスとの戦いでは、政治ではなく科学に近いほど被害を減らし、多数の利益を確保できるということだ。

 韓国はどうだろうか。最近、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は中国が自国民に対する出国制限措置の解除を検討したことを受け、今月末まで中国人に対するビザ発給を停止した。尹政権もまた科学防疫という理由を掲げた。しかし、この決定で科学より政治を優先した印象は拭えない。世界で中国に対してビザ発給を停止した国は唯一韓国のみだった。中国からの渡航者が多いためだと言うが、韓国よりも多くの中国人が訪れる日本はビザ発給を停止しなかった。韓国政府が世界で最も徹底した防疫意識を持っていて国民の生命を守ろうとしているなら、歓迎すべきかもしれない。しかし、政府はオミクロン株ではない新しい変異株が広がっていて危険だといわれる米国からの航空便には、これといった措置を取っていない。

 尹錫悦政権がなぜそのような決定を下したのかについては、容易に見当がつく。韓国には中国に対して良くない感情が広がっており、中国人に対するビザ発給停止に対して賛成する人も多い。コロナ初期の文在寅(ムン・ジェイン)政権が中国側に取った融和的な態度とも明らかな対照をなす。科学よりも政治を優先した決定で、私たちは何を得て、何を失うのか。韓国の多くの企業家は中国に気軽に行き来する日を心待ちにしている。

//ハンギョレ新聞社
チェ・ヒョンジュン|北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1077131.html韓国語原文入力:2023-01-27002:35
訳H.J

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