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[寄稿] 大統領夫人も避けられなかった「テーブルの性差別」

登録:2022-06-04 10:25 修正:2022-06-05 09:30
[ハンギョレS]イ・ラヨンの批評 
女性搾取の空間である「男たちの部屋」 
 
日本の首相夫人、来賓にお茶のもてなし 
接待する役割を女性に担わせる 
遊興という名の性搾取が蔓延 
「男たちの部屋」から自ら出よ
日本の岸田文雄首相(左)の妻の裕子夫人(右)が先月23日、日本を訪れたバイデン米大統領に自らお茶をふるまっている=首相官邸のホームページ//ハンギョレ新聞社

 数年前に結婚情報会社が発表したアンケート調査資料を見て、興味深い事実を発見した。男性たちはデート費用の中で最ももったいないと感じる項目として、食費を挙げた。それだけでなく、男性たちは女性が自分のお金で自分が食べるおやつ代も「もったいない支出」と感じていた。ところが、別の結婚情報会社が発表したある資料で、男性が最も好む女性の趣味は「料理」だった。一方、グルメ探訪はあまり好まれなかった。言い換えれば、男性は誰のお金であれ、女性が食べることにお金を使うことを一番もったいないと感じるものの、料理が趣味の女性を好む。いったいなぜだろうか。

 食卓は日常の身分制度が発現する最も小さな領土だ。この領土で、女性は仕える存在だ。先日、ジョー・バイデン米大統領が来日した際、岸田文雄首相の妻の岸田裕子夫人は着物を着てお茶をふるまった。これは手厚い歓待とされた。日本と米国の2人の男性首脳がテーブルに座り、伝統衣装を着た女性が隣に立ってお茶をふるまうこの問題の歓待の場面は、韓国メディアにも伝えられた。「日本の美」を伝えるという美しい修飾をすべて取り除いてみると、本質は明らかだ。接待は女性の役割だ。これが男性中心の政治の普遍的な外交だ。

女性の商品化で男性権力を誇示

 大統領夫人が「手作りの」干し柿を国賓にもてなしたとか、大統領室の職員のために手作りサンドイッチをふるまったというニュースがいまだに出回る理由は、それが最高権力者のそばにいる女性の役割であることを知らせるためだ。食卓という場所で、女性はいかなる形であれ仕える役割を果たさなければならない。大統領夫人は接客の瞬間を最も優雅に体現するよう要求される。

 事実上、この社会は潜在的にすべての接客員が女性だと思っている。食品衛生法で風俗店従事者を「客と一緒に酒を飲んだり、歌またはダンスで客の遊興を盛り上げる婦女子」と定義しているように、風俗店の接客員イコール女性だ。言い換えれば、女性は遊興の一要素だ。公式の晩餐会で見られる優雅な茶のもてなしから、薄暗い路地裏の店での遊興に至るまで、女性の付き添いを必要とする。

 反性売買活動家のファン・ユナは著書『男たちの部屋』で、風俗店での性政治を分析する。バーニング・サンやアリーナのように有名なクラブの運営が回っていく構造を分析し、その中で男性たちが本当に陶酔するのは何かを指摘する。クラブ内のテーブルとフロアは暗黙的に性別が区分されている。男性はお金を払ってテーブルにつき、女性は無料入場という「特典」を受けてフロアに位置する。男性はフロアにいる女性を選び、女性は選ばれてテーブルにつけるようになる構造だ。さらに、男性もお金を多く使うほど、クラブ内での男性の間で注目を集めることができる。ファン・ユナは「注目経済社会において、クラブ内で視線を結集させる購買力は、すなわち男性性の実践であり『男になる』こと」だとし、「女性を暴力的に扱っても構わない『力のある男性になる楽しさ』のために」お金を使うと明かす。

 この性政治が、風俗店のみでのことと考えるのは誤算だ。風俗店の中での性政治は、異性愛の権力関係の極端な縮小版にすぎない。女性は「人」として来るのではなく、テーブルに載せる「商品」として来るからこそクラブに無料入場できる。『レディークレジット』の著者である女性学者のキム・ジュヒは、これを「テーブルの性経済」と命名した。男性たちは性差別社会で女性に商品として接し、この商品で自分の男性性という権力を誇示する方法を身につける。

 『男たちの部屋』のインタビューに参加した女性たちは、風俗店で働く時、自分が男性客の「奴隷」になる気分だという。男性が遊興のためにお金を払って購入するのは、その間女性を支配する権力だ。お金を払って購入した商品なので、当然女性の同意の有無などは彼らには存在しない概念だ。女性に対する性的侵犯は、男性にとって遊興の一要素だ。このように、お金を使えば女性を奴隷にできる構造に慣れている社会で、女性と同等の関係でご飯を食べるためにお金を使ったり、または女性自ら(奴隷のくせに)主人のように自分のお金で何かを食べるのを浪費だと考えるのだ。

 グループチャットのセクハラから、少なくとも27万人の男性たちが共謀したテレグラムのn番部屋のおぞましい性搾取まで、このすべてのサイバー地獄はこのような現実の地獄の延長であり、副産物だ。n番部屋事件を扱ったドキュメンタリー「サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く」では、「博士」ことチョ・ジュビンと「カッカッ」ことムン・ヒョンウクを追跡する過程が描かれる。彼らはみな自分の存在感を誇示し、注目を集めることに陶酔する態度が目立った。n番部屋で、搾取する女性たちを「奴隷」と呼び拘束する行為は、これまで男性たちの日常で「遊興」という名前で蔓延していた女性搾取のもうひとつの姿に過ぎない。この社会にはあらゆる種類の「男たちの部屋」がある。いわゆる「座布団部屋での論文審査」(遊興業種の店で学生の論文審査をした疑惑で教育部長官候補が辞退した問題)も、このような構造の中で可能だった。

「男たちの部屋」、どうすべきか

 n番部屋は一朝一夕に作られたのではない。「鶏小屋」と呼ばれていた部屋があった。基地村の女性たちが集団で収容された部屋である鶏小屋には、女性たちが住んでいた。女性たちはここで「何番部屋の女」と呼ばれた。現在は国際文化村に名前が変わった群山市山北洞(クンサンシ・サンブクトン)のアメリカタウンだ。1969年、朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代に作られた基地村だ。ここは外貨を稼ぐ「国威宣揚」の場所と考えられていた。国家が女性を積極的に金儲けに利用した。米軍基地が縮小され、タウンも過去とは変わった。

 今年は、14人の女性が死亡した群山開福洞(ケボクトン)の火災惨事から20年となる年だ。そこはもうひとつの性売買の集結地だった。米軍ではなく平凡な韓国男性が利用していた「部屋」だ。その部屋で、女性はどのように扱われていたか。テーブルに乗せて搾取する金儲け用商品、あるいはご飯を用意して自己犠牲する母親としか女性を見ない男性たちが作った部屋だ。男性がこの暴力的な世界でできる最善の選択は、「男性の部屋」を爆破し、自ら出てくることだ。

イ・ラヨン|芸術社会学者。著書に『女性のために代わりに考える必要はない』(2020)、『堕落した抵抗』(2019)など。社会の隅々を批評する。美しくも正確な批評の可能性を考える。(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1045692.html韓国語原文入力:2022-06-04 08:47
訳C.M

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