本文に移動

[寄稿]まだ内燃機関自動車を捨てる時ではない

登録:2022-04-06 19:51 修正:2022-04-07 08:26
キム・ヨンヒョン|韓国ポリテック大学釜山キャンパス自動車科教授
//ハンギョレ新聞社

 韓国新政府の環境分野の公約のうち、内燃機関自動車をなくすことに向けた「ユーロ7」導入がある。欧州で作られた制度で、車両の排出ガス規制を表す。ユーロの後の数字が大きくなるほど基準が厳格になる。「7」は最近議論されたもので、「6」に比べて窒素酸化物を4倍以上減らさなければならない。業界では最後の規制と呼ばれるほどに厳しくなる。排出ガスを画期的に減らせなければ自動車の販売が禁止されるからだ。欧州はこれをめぐって業界が強く反発し、具体的基準を用意できずにいる。

 政府は環境問題解決などのために電気自動車の導入を積極的に推進しているが、現実は容易でない。まず韓国の自動車産業を冷静に顧みる必要がある。先月基準で電気自動車の登録率は0.96%であった。短期間に高い成長率を見せたが、まだ100台のうち99台が内燃機関車だ。

 エコカーへの転換が難しいのには様々な原因がある。自動車部品メーカーのうち、電気自動車の関連部品を一部でも作っている所は4%未満であるほど、まだ産業転換の準備が足りない。また、充電施設の不備と政府の補助金なしには購入しにくい高い車両価格は、消費者の選択を難しくする。さらに、エコカーを製造して販売した場合の収益の方が内燃機関車より少ないため、大企業は移行が困難だ。産業を転換すれば仕事の量の3分の1が減少することも問題だ。最近、自動車大企業が電気自動車専用の生産ラインを設置しようとしたが失敗した。また、新型電気自動車を生産しようとしたが「マンアワー」(ひとりが1時間に行う作業量)の交渉が成り立たず、生産できずにいる。労使間の意見の食い違いがかなり大きかったためだ。結局、自動車産業全般がまだエコカーを受け入れるのは困難な構造だ。こうした状況でユーロ7を無理やり導入するのは、産業全般に萎縮をもたらしかねない。

 韓国はこれまでユーロ基準を少しずつ遅れて導入してきた。強化された基準を満たせる技術開発のためだ。もちろん、先制的に導入し市場を先行獲得することにもそれなりの長所はあるが、それは技術の後押しがあってこそ可能だ。徹底した準備なしでは、罠にはまることになりかねない。したがってユーロ7の早期導入よりは、関連産業の成長を考慮してペースを調節する必要がある。

 同時に、内燃機関をなくす政策をもう一度点検しなければならない。最近ドイツのBMWの理事のフランク・ウェーバー氏は、内燃機関を利用して炭素の排出を減らす方法を提案した。既存のハイブリッド技術を結合し、厳しくなった排出ガス基準をクリアするということだ。今まで追放すべき対象として見ていた内燃機関を最大限に活用しようということだ。

 これは韓国にも示唆する点が多い。電気自動車と排出ガス基準を満足させる内燃機関が共存すれば、消費者は選択の幅が広がる。さらにエコカーへの転換のための時間を稼げる。この期間に政府は充電施設を増やし、内燃機関に集中している雇用を転換させなければならない。労働組合もまた、雇用の減少に対する現実を冷静に認識し、職務の変化を積極的に受け入れなければならない。企業は電気自動車の品質確保と大量生産体制を構築し、車両価格を引き下げなければならない。いつまでも政府の支援金を当てにするわけにはいかない。

 中国の電気自動車「宏光 MINI EV」は、500万ウォン台(約50万円)の低価格でテスラを上回った。今後、中国製自動車の市場蚕食が憂慮されるが、韓国の自動車メーカーは車両価格の引き下げに死活をかけなければならない。結局、市場の多様性と電気自動車の普及拡大のためにも、今はまだ内燃機関を捨ててはならない。

キム・ヨンヒョン|韓国ポリテック大学釜山キャンパス自動車科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1037835.html韓国語原文入力:2022-04-06 18:46
訳J.S

関連記事