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[寄稿]韓国の誇る「K-民主主義」は失敗した

登録:2021-12-03 10:12 修正:2021-12-03 11:56
チャン・ソクチュン|出版&研究集団「サンヒョンジェ」企画委員

 「K」を前につけて韓国を誇る言葉が流行っている。その中には「K-民主主義」もある。一見すると、“行き過ぎ”の自慢のようにはみえない。アジアで韓国のように何度も選挙で政権を変えた国は他にいくつもない。主に英国側から生まれた民主主義の通俗的な定義として「血を流さずに王の首をはねる体制」という言葉があるが、大韓民国の第6共和国ほどこの基準を満たす体制はないだろう。だから「K-民主主義」という言葉が出るのも当然だ。

 しかし、一皮むいてみると話が違ってくる。はたして見た目ほど自慢できるものがあるのだろうか。K-民主主義の実体を知るには、比較対象になる他国の政治を考えなければならない。11月24日、ドイツでは総選挙後2カ月たって新政府の発足が決まった。第一党になった社会民主党と緑の党、自由民主党がいわゆる「信号」連立政府を構成することで合意したのだ。

 注目すべきは、連立政府を結成することにしてから3党が出した政策協約だ。社会民主党の主導で最低賃金を1時間当たり12ユーロに引き上げることにし、緑の党の声が反映されて石炭火力発電を予定より8年前倒しにした2030年に廃止することにした。また、選挙年齢を16歳に下げ、移住民がより容易にドイツ市民権を認められるようにするという内容もある。今後、このような政策を社会民主党所属の首相、緑の党所属の気候危機対応長官、自由民主党所属の財務長官が推めていくという。

 このような話を持ち出すと、ありきたりの反論が起こる。国ごとに独特の事情があるため、政治や文化をめぐって優劣を論じることはできず、他の国の事例をまるで教科書のように見習うことはできない、というものだ。間違った話ではない。しかし、それでも私たちは「K-民主主義」を民主主義の他の応用事例と比較しながら省察しなければならない。比較のない省察は不可能であるからだ。最後までそのような比較を拒否して滅びた国が朝鮮王朝だ。

 ひとまずドイツの事例を鏡として、「K-民主主義」の素顔を見てみよう。ドイツでは、社会民主党に票を投じた25.7%、緑の党と自由民主党にそれぞれ投票した14.8%、11.5%が、選挙を通じて権力の主の役割を果たすことに成功したといえる。計52%が何らかの形で自分の支持する公約を次期政府の政策に反映させた。

 一方、韓国では一体誰が勝者なのか分からない。大統領当選者を出した政党ではない別の政党に票を投じた人々は、すべて敗者になる。だからといって、選挙で勝った政党に投票した人が実際に勝者かというとそうでもない。第19代大統領選挙では41.1%が文在寅(ムン・ジェイン)候補を支持したが、文在寅候補の公約の大半は、彼が属する党が国会で3分の2の議席を獲得しても実現しなかった。野党が必死で反対したからではなかった。あらゆる政治論理を掲げて与党が自ら取り下げてしまったのだ。「K-民主主義」では2大政党の政治エリートを除けば、実はほぼ全員が敗北者だ。

 なぜこのような激しい差が現れるのか。単に大統領制か議院内閣制かの問題だけではない。これとともに、市民社会を制度政治に反映させる通路である政党政治の地形と選挙制度の問題があり、現代社会で代議政治が担うべき核心的な役割とは何なのかに関する理解と合意が異なるという問題がある。いずれにせよ、このような点で「K-民主主義」と大きく異なるドイツの民主主義は、気候危機などの対応で大きくリードしている反面、韓国の政治は社会の危機をさらに煽ってばかりいる。

 今ひとまず必要なことは、「K-民主主義」、すなわち第6共和国の民主主義が現代社会の変動と危機の中で徹底的に失敗していることを認めることだ。これを何がなんでも否定し、「王の首をはねた」(実はそれを装った)かすかな記憶の中にとどまっているから、失敗はさらに取り返しのつかない状況に向かっている。座して滅亡を待たないためにも、韓国にはK-民主主義とは「違う」民主主義が切実に必要だ。

//ハンギョレ新聞社

チャン・ソクチュン|出版&研究集団「サンヒョンジェ」企画委員

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1021786.html韓国語原文入力:2021-12-03 02:31
訳C.M