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[社説]温室ガス削減は先送りできないが、原発は代案になれない

登録:2021-08-05 20:50 修正:2021-08-06 08:22
福島第一原発の敷地に設置されている汚染水貯蔵タンク。日本はこの中に保存されている汚染水を海に放出する計画だ/聯合ニュース

 1986年、旧ソ連に属したウクライナのチェルノブイリで、史上最悪の原発事故が起きた。核爆弾投下に次ぐほどの致命的事故の後遺症は、原発に対する人類の期待を一挙に砕いた。1973年の「第1次オイルショック」を前後して原発建設ブームが起きた1970年代には10年間で315基に達した世界の原発着工件数は、1980年代には166件に減り、1990年代には29件に急減した。

 2011年、日本の福島原発事故は改めて大きな衝撃を与えた。一度事故が起きればどれほど致命的なのかを改めて呼び覚ました。東京新聞は、事故後の10年間で賠償と廃炉にかかった費用は13兆3千億円であり、総費用は日本政府が2016年に見込んだ21兆5千億円を大きく上回るだろうと3月に報道した。

 今年1月現在、全世界で433基の原発が稼動中だ。福島原発事故後の10年間で増えたのは2基だけだ。福島第一原発の廃炉などにより日本で11基が減り、米国では10基が減った。急速な脱原発を開始したドイツでも9基が減った。英国とスウェーデンでは4基ずつ減り、フランスでも2基減った。

福島原発事故前後の原発数変化 資料:IAEA//ハンギョレ新聞社

 それでも世界の稼動原発が2基増えたのは、石炭火力発電などにより深刻な大気汚染に苦しむ中国が37基も増やした影響が最も大きい。低開発国に対し原発建設を支援して外交的影響力の拡大を狙うロシアも、自国内で6基増やした。その他、インドが4基、パキスタンと韓国が3基ずつ増やした。原発の危険性は、気候危機より先に人類に警告信号を送った。1956年に英国で最初の商業用原発が発電を始めて以来、60年が過ぎても「使用済核燃料」処理問題を解決できないことも原発産業の成長にブレーキをかけた。

 ところが、気候危機の深刻さを人類が体感し、温室ガスの削減義務が各国に賦課され始め、原発事業者らは原発の経済性を再び強調している。だが、経済性の面でも原発が温室ガス削減の代案になるのかについては、疑問が高まっている。福島原発事故は、危険費用を計算すれば原発の経済性も信頼できないことを示す。日本の経済産業省は7月12日、発電源ごとの発電単価推算値を6年ぶりに新しく発表した。2004年には1Kw/h当たり5.9円だった原発の発電単価が、安全対策費用の増加に廃炉費用を算入すれば2030年には10.3円に上昇する反面、太陽光発電の単価は事業用が8円台後半~11円、住宅用が9円台後半~14円で、最も安い発電源になるということだ。陸上風力や天然ガス火力発電の単価も原発より安くなりうると見通した。

 韓国では原発の発電費用を計算する時、建設費、運営費、原料費などの直接費用と事故時の発電事業者の責任範囲である5千億ウォン(約480億円)に対する保険料だけを計算に入れる。国会予算政策処は2014年の「原子力発電費用の争点と課題」報告書で、事故危険の費用、安全規制の費用、立地葛藤の費用など発電会社が負担しない部分が計算から除外されており、発電費用が過小推計される問題があると指摘した。

 一部では世界の原子力業界が大型原発に対する代案として開発競争を行っている「小型モジュール型原子炉」(SMR)が代案になりうると主張している。しかし、商業炉の稼動前実験炉と実証炉を経て安定性・経済性を検証するだけで最短10年はかかる。まだ何も大言壮語できる段階ではない。小型原子炉も使用済核燃料の問題は解決できない。

 中国とロシアを除く原発先進国は、すでに建設し稼動中の原発を活用するのにとどめており、拡大は躊躇している。原発事故の危険性、核廃棄物処理の困難さ、経済性の悪化のために、新再生可能エネルギーを中心に未来の計画を立てている。米国、フランス、中国、日本、ロシアに次ぎ世界6位の原発設備保有国である韓国が、原発をさらに増やす中国の道について行くのは決して賢明な選択ではない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1006626.html韓国語原文入力:2021-08-05 19:36
訳J.S

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