「不安です。でも必ず開催されるでしょう」
2020東京五輪に備えて、忠清北道鎮川(ジンチョン)の国家代表トレーニングセンターで大詰めの訓練に励んでいるある球技種目の代表選手は、最近の心境をこのように話した。「部屋にはテレビがありませんが、食堂で次々に流れるニュースを見ると胸が苦しい」と話した。
大韓体育会によれば、27日現在で各種予選を通過して東京五輪出場権を獲得した選手は、23種目で186人。6月末までに予定されている五輪予選を経れば、韓国の代表選手団は200~210人程度に増えるとみられる。
彼らのほとんどは、鎮川トレーニングセンターでの最終練習で大粒の汗を流している。だが、心中安らかでない。日本国内の世論調査で80%近くが大会の中止や延期に賛成するという意見が出てきて、米国が日本を渡航中止国家に指定するなど状況がきわめて流動的であるためだ。格闘技種目のある監督は「大会は無条件に開催されなければならない。選手は3回目の挑戦にこれまで懸命に頑張ってきた。落ち込んではいけないので、五輪関連ニュースはお互いに一切話さない」と言った。
鎮川選手村内のこうした雰囲気は、五輪での成績が“オール・オア・ナッシング”に連結される韓国スポーツ文化の特徴に起因する。五輪で成功すれば、年金や兵役の面で恩恵が得られ、引退後の人生でも有利になる。失敗すれば、運動以外に生きる術が準備されていないために気落ちも大きくなる。
韓国では、当初から需要(代表チーム)と供給(選手プール)が適用される市場によって代表選手が決まるわけではない。学校をはじめとするエリート選手育成システムにより国家代表に成長する。学校や教育庁、地方自治体は少年体育大会と全国体育大会という制度を通じて選手資源を供給する基地の役割をする。その結果、選手たちは国家支援に依存する精神的態度を持つようになる。
外国の場合、安全を理由に東京五輪に出場しないと言ったり、開催に否定的な考えを選手自ら表現するケースがある。個人が決めて、個人が責任を負うということだ。しかし、韓国ではそういうことは想像しがたい。
もちろん代表チームの中では五輪に挑戦すること自体に意味があり、たとえメダルを取れなくとも満足する選手はいるだろう。だが、大慨の選手と指導者にとって、五輪の中止は悪夢だ。五輪を結実の舞台として見ているためだ。
大韓体育会は6月初めの日本の首相と野党代表の討論などでどのような話が出るのかに注目している。ひとまず国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪の開催意志を持続し強調している。IOCのディック・パウンド委員は「アルマゲドンでもない限り五輪は開かれる」と言うほどだ。
万が一にでも五輪が不発になるならば、対策も立てなければならない。5~10年間にわたり五輪のメダルという目標に向かってひた走ってきた選手たちの虚脱感をケアすることが最も重要だ。国民の暖かい激励は最も大きな慰労になるだろう。
国家代表選手たちには選択肢がない。最後まで最善を尽くして準備しなければならない。五輪を囲む外部での論議は別として、選手たちが全力を尽くして終盤のスパートをすることを期待したい。